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長引かせたくても長引かせることが出来ない ~「異次元の金融緩和」10年のツケ

「日銀の金融緩和がさらに長引く」

もはやこうした考え方は危険なものだといえる。

3月になって日銀は金融政策を修正している。これは「副作用」を懸念しているからではない。異次元の金融緩和が壁にぶち当たったからだ。

3月の金融政策決定会合でETF購入額に関して「上限(12兆円)」を残し「めど(6兆円)」を外したことが注目を集めた。

しかし、4月の国債買入計画が「幅広い年限の買い入れ回数を3月から減らし、償還までの期間が10年を超える超長期国債では月2回から1回にする」というように修正されたことはほとんど注目されていない。

日本経済新聞は「国債の買い入れ額を減らし、金利を変動しやすくする意図がある」との見方が多いと報じているが、これは余りに相場的な見方であり、金融的見方からかけ離れたもの。

幾らでもお札を刷ることが出来る日銀は、ETFと国債を無限に購入できると信じられている。しかし、それは必ずしも正しくない。

幾ら日銀の購入資金が無限でも、購入するETFが有限ならETF購入は有限ということになる。

これに対して財務省が発行する国債にはETF購入のような有限の壁はない。

しかし、国債発行に上限がなく日銀が国債を無限に購入出来ることと、マネタリーベースを増やし続けられることとは別問題。これは金融政策として効果のない異次元の金融緩和を漫然と10年も続けて来たことによる「時間の壁」だといえる。

日銀が3月から金融緩和の点検と金融政策の修正に転じたのは、副作用を懸念しているからではない。ETF購入は限界に近付き、国債購入によってマネタリーベースを計画通りに増やすことが難しくなり、市場が期待する異次元の金融緩和を続けられなくなって来たからだ。

長引かせたくても長引かせることが出来ない。

これが現在の日銀の置かれた状況である。「日銀の金融緩和が長引く」と信じ続ければ、この先後悔することになるはずだ。
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汚染水海洋放出決定~「濃度」と「量」の間にある レトリック

「具体的には2年後をめどに福島第一原発の敷地から放出する準備を進め、放出にあたってはトリチウムの濃度を国の基準の40分の1まで薄めるとしています」(9日付NHK NEWSWEB 「政府 福島第一原発のトリチウムなど含む水 海洋放出方針固める」

汚染水保管量が既に約125万tにまで達しているという現実を考えると、海洋放出は致し方ない決定だとは思う。

しかし、「放出にあたってはトリチウムの濃度を国の基準の40分の1まで薄める」といった表現は適切なのだろうか。

トリチウムの濃度を国の基準の40分の1まで薄めて放出したとしても、125tの汚染水に含まれているトリチウムの量が減るわけではないので、放出されるトリチウムの量は変わらない。

どうして「濃度」を強調して「量」には触れないのだろうか。国民の目をごまかすためのレトリックに思えてならない。

「科学的な根拠に基づく丁寧な説明や客観性と透明性の高い情報発信が重要だ」(同NHK NEWSWEB

こうした梶山経済産業大臣の発言が空しく響く。もう政府の詭弁やレトリックにはいいかげんうんざりだ。「国民のために働く内閣」以前に、「正直な内閣」であって欲しい。

何故SLR緩和措置打切り直後にアルケゴス問題が起きたのか

昨晩の「WORLD MARKETZ」

話題は何と言ってもアルケゴス・キャピタル・マネジメント。小生の最初のコメントは「リーマン・ショック以降初めて不穏な気配を感じている」。

多くの専門家が野村證券やクレディスイスといった個別企業の話しで市場全体に影響を及ぼす問題ではないと指摘しているが、そのように決めつけてしまうことは危険というお話。

確かに、リーマン・ショックのような金融危機を招く話ではないとは思っているが、先週末19日に公表されたSLR(補完的レバレッジ比率)緩和措置打切りという金融機関に対する制度変更直後にこの問題が起こったこと、アルケゴスと取引をするプライムブローカー(大手投資銀行)が会合を持ったことなどが気に掛かるところ。

きっかけはバイアコムCBSが22日に発表した増資による株価の下落だと言われているが、個人的にはこれがプライムブローカーたちの「口実」として使われた可能性があると考えている。

「心が変われば態度が変わる、態度が変われば行動が変わる、行動が変われば習慣が変わる、習慣が変われば人格が変わる」

という故野村克也監督の格言に準えれば、SLR緩和措置打切りはさしずめ

「ルールが変われば金融機関の融資姿勢が変わる、融資姿勢が変われば金融が変わる、金融が変われば金融市場の価格形成メカニズムが変わる」

というもの。

拙著「1989年12月29日 日経平均3万8915円」(河出書房新社)で詳しく記したが、1990年日本で起きたバブル崩壊の原因も、金融機関の会計制度の変更であったことを忘れてはならない。

現時点で確からしいことは、今回アルケゴスというファミリーオフィスから融資を引き上げた金融機関は、今後ファミリーオフィスに対する融資を再開するよりも回収に動く可能性が高いことだ。こうした動きは金融市場動向にボディーブローのように時間の経過とともに効いてくると考えておいた方が賢明だ。ルールの変更は「風にそよぐ葦」の如き投資家の相場観などよりもずっとずっと重要なのだ。


銀行規制強化がヘッジファンドからの融資引揚げを招く?

「ブルームバーグは29日、巨額ブロック取引の背後には、タイガー・マネジメントの元トレーダー、ビル・フアン氏の財産を管理・運営するファミリーオフィスのアルケゴス・キャピタル・マネジメントが取引銀行から200億ドル相当の株式の売却を強いられたことがあると、匿名を条件とした複数の関係者からの情報を基に報じた」(29日付Bloomberg 「野村HDが米で2200億円規模の損害も、巨額ブロック取引と関連か」

補完的レバレッジ比率の分母であるリスク資産量を緩和措置打ち切りによって拡大させ、分子である自己資本には増配を認めることで減少圧力をかけるという、銀行規制に関するチグハグな政策と、ヘッジファンドに対する融資引き上げが無関係とは言い切れない。

国債と準備預金をリスク資産にカウントする必要が生じる中で補完的レバレッジ比率を5%以内に保つことを迫られたら、リスク資産量を保つために融資等他のリスク資産を縮小させるというのは金融機関にとって合理的な判断といえるからだ。

懸念されることは、こうしたヘッジファンドに対する融資引揚げの連鎖が起き、デレバレッジに動き出すこと。

補完的レバレッジ比率の緩和措置打ち切りと金融機関の増配を認めたという今回のFRBのチグハグな決定は、リーマン・ショック以降金融市場崩壊を起こさないように細心の注意を払って来たFRBが犯した初めてのミスだといえる。

このFRBが犯したリーマン・ショック以降最初のミスが、民主党左派の影響によるものだとしたら問題は深刻。ヘッジファンドが原因で金融市場が混乱したら、民主党左派に金融機関に対する規制をさらに強化するべきだという口実を与えかねないからだ。

それによってデレバレッジの動きがさらに強まれば、低金利と量的緩和によって様々なところでレバレッジが掛けられている金融市場のどこで爆発が起きてもおかしくない。そうなったらもう誰も止められない。

金融機関が過剰なリスクを取らないようにするというのは正しい考え方ではあるが、金融機関を通して世の中が過剰なリスクを取ってしまったあとに規制を強化するというのは現実問題として正しい考え方とは言えない。ここが理想と現実の違い。平時と非常時とでは正しい政策が異なってくるという認識が必要だ。

パウエルFRB議長がFOMC後に補完的レバレッジ比率の緩和措置に関して何も発言しなかったのは、おそらく16年間投資銀行での経験からこのことを十分認識していたからだ。

請求額104円 ~ 小さな請求額が鳴らす「パフォーマンス政治」への警鐘

請求額は104円。

請求額は小さなものだが、パフォーマンス政治に警鐘を鳴らすという意味では大きな動きともいえる。

悪いのは飲食店ではなく、飲酒をして感染予防策を無視する客のはずである。感染防止を目的に私権を制限するならば、飲食店に9時までの時短命令を出すのと同時に、客に対しても午後10時以降の集団飲酒行動禁止命令を出した方がいい。

飲食店閉店後に路上や公園等で酒を飲んで騒ぐ輩を放置するのでは感染対策としてはザル。経済損失が最大4200億円膨らむというのであれば網をかけて塞ぐ必要がある。

飲食店が訴えた相手は東京都だが、気になるのは「休業などの要請や指示は営業の自由を保障した憲法に反するものではないと整理されている」という政府の説明。「整理されている」かどうかの判断は司法がするもののはず。

関係業者との会食を「大臣規範に抵触しない」と勝手に決めつけたり、本当に三権分立が保たれているのか不安になってしまう。

「ホテルに宿泊したのは事実ですが、部屋は2つ取っていて、一緒には過ごしていません」という苦しい言い訳ながら疑惑を否定している福原愛ちゃんが社会的、経済的制裁を受けているのに対して、政治家がどんなに見苦しい言い訳と虚偽答弁を繰り返しても何の制裁も受けないという現実を見ると「法の下の平等」とは何なのかと考えてしまう。

104円訴訟のニュースを見ていたら、福原愛ちゃんの騒動を連想してしまった。

近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

著書

202X 金融資産消滅

著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

著書

中学一年生の数学で分かるオプション取引講座(Kindle版)

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