経済主役の一日

久しぶりに政治イベントではなく、経済が注目を集めた一日だった。国民新党が「連立離脱」をちらつかせて「1丁目1番地」である郵政改革法案成立を迫っても、菅新内閣の支持率が60%台となった今となっては、金融市場にとっては何の材料にもならなかった。

まず注目されたのは、今日発表された日本の1-3月期実質GDPが年率5.0%増と予想外に上方修正されたこと。名目GDPも年率で5.4%増。国民の感じている景況感との違和感はともかく、統計上日本は完全に景気回復を果たすとともにデフレを克服した格好。「政治とカネ」と「普天間問題」で短命政権となった鳩山首相は、景気と民主党支持率を回復させて去って行った。

この他注目されたのは中国の5月の貿易統計。昨日一部統計数値がリークされていたが、欧州の財政危機にもかかわらず5月の中国の貿易黒字は前年同月比で48%増と、ここ6年余りで最大の伸び率を記録した。「5月の輸出の強い伸びは、前年同月が26.4%減と過去最大の落ち込みだったことも影響した」という指摘もあるが、こうした事実を織り込んでいたエコノミスト全員の予想を上回ったことからして、予想以上に輸出が伸びたことは事実。
先日のG20で自国通貨安による輸出主導型回復ではなく内需拡大型回復を目指すことで合意したこと、不動産バブルが懸念される内需の状況を合せて考えると、今後金融市場で元切り上げ圧力が掛かって来るのは自然の流れ。今日の中国人民元先物は大幅上昇となった。

昨日今日と市場で注目される動きは、欧州財政危機がユーロ圏からハンガリー、さらにはブルガリアへと広がりを見せる中、円高が一服していること。「資金調達通貨」である円の上昇が止まっていることは、キャリートレードに伴う円の返済が一旦終了したことを示唆するもの。
資金調達通貨」である円の返済圧力が弱まる中、ブラジルとニュージーランドが政策金利を引き上げ、さらにオーストラリアでも利上げの可能性が高まるなど、周辺各国の政策金利が上昇し始めている。欧州財政危機が拡大傾向を見せている状況を考え合わせると、今後は「資金調達通貨」としてユーロと円が注目を集めることが想像される。欧州財政危機という材料だけで一方的な円高が進むと決めつけないことが賢明だ。評論家やエコノミストの見解は「固定相場」で日々変わることはないが、「変動相場」である金融市場の状況は日々変化するものだからだ。


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旬を過ぎた「どんぐり二大政党」制

5月最後の東京株式市場は、前週末の海外市場でスペインの格下げや米経済統計の低調といった悪材料があったにも関わらず、約3ヶ月ぶりの日経平均株価4日続伸で取引を終えた。ただ、31日は米、英市場が祝日で休場になることもあり、東証1部の売買高は約2カ月ぶりの低水準に留まった。為替市場も小動きとなり、今日の東京市場の動きは「ユーロ圏の信用不安」が金融市場の材料として「旬」を過ぎたことを証明するものとなった。

「旬」を過ぎて低迷しているのは、鳩山内閣も同様。福島瑞穂費者・少子化担当大臣罷免を受け注目された報道各社の世論調査の多くで、鳩山内閣の支持率は20%を割り込んだ。こちらは「旬」を過ぎた、というより「瀕死」の状況。
民主党にとっての救いは、自民党の支持率も低迷を続けてどんぐりの背比べ状態が続いていること。各社の政党支持率を見ると、「どんぐり二大政党」の支持率を足しても40%前半にしかならず、合せてようやく「支持政党なし」と肩を並べられるかどうかという体たらく。「政権交代可能な2大政党制」というお題目も完全に「旬」を過ぎてもはや「夢物語」。

社民党の連立政権離脱、鳩山内閣の支持率低迷を受け、国会では自民党を中心に野党側が攻勢を強める方針だ。だが、国会自体が今の様な「民意」から離れた存在では、委員会審議にテレビ向けの赤字のプラカードを持って参加する自民党議員や、テレビカメラの前でのみ執行部批判を繰り返す民主党議員の行動は、選挙向けパフォーマンスにしか映らない。

ここ数年、「どんぐり二大政党」の国会議員達は、順番に「今の執行部では選挙は戦えない」と自党執行部の責任を問う発言を繰り返して来た。こうした発言を聞かされ続けて来ている国民は、現在の枠組みの中で国のリーダーを選ばなくてはならない状況に辟易している。多くの国民が今期待しているのは、鳩山首相が責任をとって民主党が参院選を戦えるようになることではなく、「民意」を反映した国会を一日も早く取り戻すことだ。それに向けてのささやかな第一歩は、「どんぐり二大政党」が共にマニュフェストに掲げる「国会議員の定数削減」の早急な実現である。


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こっそり始まった外債投資

週明けの東京株式市場は、TOPIXが7営業日ぶりに小幅反発したものの、日経平均株価は根強い円高警戒感もあり、26円安の9,758円と、小幅ながら連日で年初来安値を更新した。週末の米国株式市場の反発や、金融引き締め観測の後退による中国株高という追い風が吹く中「期待外れ」の展開だった。

国内の株式市場が低迷を続ける中、ゆうちょ銀行が2009年度に外国の国債を大量に買い入れていたことが明らかになった。今年3月末時点の残高は3兆7100億円と昨年3月末時点の残高1兆2800億円から大幅増、1年間で約3倍に膨らんだ。郵政改革の一環として、貯金として預かったお金の運用を日本国債偏重から脱し多様化を目指す鳩山政権の方針に沿った動き。

 保有する外国債のうち、各国政府などが円建てで発行する「サムライ債」が約7割を占めている様だが、昨年10月以降に増えたのが、米国債などの米ドル建て債券。昨年9月末の残高は310億円だったが、半年後の今年3月末には8700億円と28倍になった。昨年秋は14年ぶりに一時、1ドル=84円台になるなど円高が進んだ時期で、幹部は「為替差益も狙って、1ドル=80円台で大量の米国債を買った」と語ったと報道されている。

ゆうちょの預け入れ限度額の引き上げが確実視される中、亀井大臣は今年の2月に「運用先も広げるべきだ」として外債投資を増やすとの見解を示しており、こうした意向を反映した格好。これまで国債偏重運用の「非効率性」を散々非難されて来たから、外債投資に向かおうとするのは自然のこと。しかし、これまで国債でしか運用して来なかったゆうちょ銀行に、為替やクレジットリスク管理能力及び体制が整っているのか。この点に関しては甚だ疑問である。「資産の健全性」という観点からは、ゆうちょ銀行はリスク管理体制が整うまで、「非効率的な」国債偏重運用を続けるべきではなかったか。

「資産の健全性」と共に気に掛かるのが、外債投資のタイミングである。09年度は80円台まで円高が進んだにも関わらず、為替市場で日銀の介入は実施されなかった。しかし、今回の発表で、ゆうちょ銀行がこっそりと外債投資という名目で実質的に介入の役目を果たしていたことが明らかになった。
日銀為替介入は、財務大臣の権限において、日銀が財務大臣の代理人として、財務大臣の指示に基づいて行われるものだ。ではゆうちょ銀行の外債投資のタイミングは、誰がどの様な権限で判断するのだろうか。実質政府(財務大臣)が100%保有し金融・郵政改革担当大臣が管掌するゆうちょ銀行の外債投資を通した介入と、財務大臣の権限で実施される日銀介入との間に、どの様にして整合性を保たせるのだろうか。こうしたガバナンス上の問題を無視したゆうちょ銀行の外債投資本格化には、若干の危うさを感じずにはいられない。


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KY政党が目指す「政権交代可能な議会制民主主義」

日本が見本としていた英国で二大政党制が崩れかけている。先日行われた英国総選挙で与党労働党と保守党という二大政党勢力の間に自由民主党が割って入って来た。こうした事態に対して問われた民主党の小沢幹事長は、「日本では英国のような議会制民主主義が定着していない。二大政党を中心とした政権交代可能な議会制民主主義を日本に定着させたい」と訴えたことが新聞で報じられている。

「政権交代可能な議会制民主主義の定着」は仰る通りだ。ただ、この議論の前提は、議会制民主主義の根幹をなす「議会」が正しく民意を反映したものであることだ。幾ら「政権交代可能」であっても、そもそも「議会」が民意を反映して「議員選択可能」な制度になっていなければ何の意味もない。有名人と二世・三世議員が大半を占める現在の「議会」が「政権交代可能な議会制民主主義の定着」の為に相応しい姿なのだろうか。高邁な理念は結構だが、有名人の擁立合戦で目先の浮動票獲得を図ろうとするKY政党が乱立する「議会」で「政権交代可能な議会制民主主義」が定着して行くことを望んでいる有権者はいるのだろうか。その前にやらなくてはならないことがある。



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最大多数の最大幸福

先日の1万5千人規模の徳之島の米軍基地移設受け入れ反対集会に続き、昨日沖縄で9万人規模の普天間基地の国外・県外移設を求める県民大会が開かれた。鳩山首相は、こうした集会の開催を受け「民意に配慮する」という旨のコメントを発していた。徳之島や沖縄など基地負担を強いられる地域の民意が「基地移設・受入れ反対」となるのは当然のことである。それに対してイチイチ「民意に配慮」していたら政治など立ち行かなくなってしまうこともまた当然である。

以前米国出身の方から印象的なエピソードを聞いたことがある。ある都市で拘置所を建設するにあたり、市長がある場所が候補地に挙げようとした際、市長の側近が「そんな所に刑務所を作ったら反対運動で大変なことになる」と忠告した。それに対する市長の返答は「反対運動が出ない場所なんてないさ。だから政治決断する市長が必要なんだ。」というものだった。このエピソードが実際のものなのか筆者は確認していないが、決断を先延ばし問題解決を困難なものにしてしまった鳩山首相が少しでもこうした考えを持ち合わせて解決にあたっていたら、普天間基地移設問題も此処までこじれることは無かったのかもしれないと思うと非常に残念である。

「民意の反映」は重要であるが、政府が目指すべき目標が「最大多数の最大幸福」であることも事実である。将来はともかくも、現時点で日本の「最大多数の最大幸福」は米国との外交関係を中心とした安全保障体制の維持だというのが現実である。普天間基地を移設するにしても、東京や大阪といった大都市周辺に移設する訳にはいかないし、もしこうした大都市圏への移設案が表面化しようものなら大都市圏特有の無関心主義を割引いたとしても沖縄の比にはならない規模の反対運動が起きるはずである。当り前であるが、移設候補地は限られている。国民の財産でもある沖縄や徳之島の美しい海を埋め立てる計画には個人的に反対であるが、鳩山首相に「最大多数の最大幸福」を念頭に早期に政治的決断を願うばかりである。

最後に素朴な疑問。普天間基地は本当に沖縄県民の安全を脅かしているのだろうか。普天間基地のある宜野湾市の人口推移を見てみると、平成15年の87,886人から平成20年には91,244人へと3,358人増加している。さらに本籍人口は平成15年の63,059人から69,832人へと6,773人も増加している。もし多くの県民が普天間基地の存在に否定的であり、基地により安全な生活を脅かされていると考えているのだとしたら、こうした人口増加をどの様に解釈したらよいのだろうか。米国基地の国外・県外移設を望む県民が多数存在することは反対集会等で明らかであるが、こうした統計データは、その一方で基地を受け入れ、共存を図っているサイレントマジョリティーが存在することを物語っているのではないか。サイレントマジョリティーの民意を鳩山首相はどの様にして汲み取ろうとしているのだろうか。


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近藤駿介

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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