ニワトリと卵

久しぶりに円が対ドルで84円台に乗せて来た。84円台回復は約2か月ぶり。ドルは円だけでなく、主要通貨に対して全面高。主要6通貨に対するドル指数は、5月以来の最長となる3週連続の上昇。同指数は注目を集めたFOMC直後の11月4日に安値75.882を付けた後に反転、80.38まで上昇して来た。

為替市場に併せるように、債券市場で長期金利も上昇に転じて来ている。米国の10年債利回りが3%に近づいて来る一方、日本でも10年債利回りは1.2%近くまで上昇して来ている。27日付日本経済新聞は「日米長期金利に上昇圧力」という記事を掲載、「米金融緩和観測が後退したこと」で長期金利に上昇圧力が掛かって来ていることを報じている。

確かに「米金融緩和観測が後退したこと」は金融市場の風向きを変える大きな要因となった。しかし、記事にある「日米金利差は拡大基調で、当面はドルが買われやすく、円が売られやすい地合いが続くとみられる」というのは必ずしも正しい見立てではない。正しくは、米国長期金利の上昇による「日米金利差拡大」によって「ドルの反転」が起きたのではなく、「ドルの反転」によって「日米の長期金利が上昇した」というものだ。

事実米国で量的緩和が実施された直後の11月初旬の日米金利差は約1.6%、現在でも1.7%弱であり、「日米金利差は拡大基調」と断定するには少し無理がある。ドル円レートが2円弱動いただけですっ飛んでしまう2%にも満たない僅かな長期金利差を求めて、為替市場を動かすほどの大きな資本移動が起きると考えるのは現実的ではない。そんな小さな収益の為に、そんな大きなリスクをとる投資家は、そんなには存在しないというのが現実である。

エコノミストなど自ら投資を行わない識者達は、金融市場の動きを説明する経済学的な要因があると思い込んでおり、マスコミはそうした人達の「権威あるコメント」を記事にするものだ。こうした構図は、往々にして「ニワトリ」と「卵」を逆にするものである。

金融市場の焦点は、春には「欧州の信用リスク(に伴うユーロ安)」、夏以降は「米国景気減速リスク(に伴うドル安)」、そして晩秋を迎えからは再び「欧州の信用リスク」へと、季節の変動に合わせるかのように変化して来た。直近はそこに北朝鮮による「地政学的リスク」が加わった格好になっている。
エコノミストを始めとした識者達は「ファンダメンタルズ(の変化)」を過剰に重要視するが、金融市場は「ファンダメンタルズに変化」がなくても同じテーマでずっと動き続けることは出来ないもので、どんなテーマでも「賞味期限」は存在するのである。投資家にとって「ファンダメンタルズ(の変化)」を過剰に重要視するエコノミスト達の話しに基づいて投資をすることは、バックミラーを見て運転する様なものなのである。真直ぐ平坦な道が続くうちはさしたる危険はないが、山道に入ってしまえばたちまち大惨事になってしまう。

金融市場の焦点は再び「欧州の信用リスク」に戻って来た。5月頃金融市場を揺るがす大きな要因であった「欧州の信用リスク」は、夏以降解消されていたわけではなく、単に金融市場のテーマとしての主役ではなくなっていただけである。それと同様に、「米国の長期金利の上昇」と「ドルの反発」は、「米国景気減速リスク」というテーマの「賞味期限」を過ぎたことを示したもの。

「米国景気減速リスク」から「欧州の信用リスク」に市場の焦点が移って来たことを考えると、ドル・キャリートレードに伴う「ドル安」圧力は時期的に一旦弱まる方向にあると言える。5月頃の金融市場の動きを思い出すと、「欧州の信用リスク」に対する市場の反応は、まずは「ユーロ売り」「ドイツへのリスク回避」というものになりそうだ。




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近藤駿介

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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