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見え始めた「股裂き政策」の限界

ドービルG8サミットは、首脳宣言で世界経済について「世界的な景気回復は力強さを得て、より自律的になって来ている」との見解を示した。これを好感し、週末の米株式相場は米中古住宅販売成約指数が予想を大幅に上回る落ち込みとなったものの、3日続伸となった。

「世界的な景気回復は力強さを得て、より自律的になって来ている」という首脳宣言とは裏腹に、回復傾向を見せていた世界経済は鈍化の兆しを見せ始めている。

米商務省が26日に発表した第1四半期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み、年率)改定値は、前期比1.8%増と速報値から変わらず、昨年第4四半期の3.1%増から減速した上、市場予想の2.2%増にも届かなかった。GDPの約7割を占める個人消費は2.2%増と、速報の2.7%増から下方修正された上、GDPから在庫を除いた実質最終需要は0.6%増と速報0.8%増から下方修正された。QE2で演出された株高による「資産効果」で回復基調にあった米国経済は、副産物でもあるガソリン価格の上昇などの影響もあり、頭打ち傾向になって来ている様子。

米国だけでなく、欧州でも景気鈍化傾向の兆候が表れている。欧州連合(EU)の欧州委員会が発表した5月のユーロ圏景況感指数(速報値)は105.5と、前月の106.1から低下、3カ月連続で悪化した。
問題は、ユーロ全体だけでなく、欧州経済の牽引役であるドイツでも景気鈍化の影が見え始めていること。20日ドイツ連銀が月報で国内経済成長について「2011年はかなりのペースで始まったが、見通される将来において成長ペースは鈍化する可能性が高い」と懸念を示したのをはじめ、GfKがまとめた6月のドイツ消費者信頼感指数は3カ月連続で低下した。
24日にドイツのIfo経済研究所がまとめた独企業景況感指数が予想外に過去最高付近を維持したことで、欧州中央銀行(ECB)が利上げを再開するとの見方が強まったが、ドイツ連邦統計庁が27日発表した5月のドイツの消費者物価指数は前年同月比プラス2.4%と、予想外に4月のプラス2.7%から低下し、利上げ期待も一旦萎む格好となっている。

日本は震災の影響もあり、言うに及ばずといった状況。経済協力開発機構(OECD)が2011年の日本の実質国内総生産(GDP)成長率がマイナス0.9%になるというエコノミック・アウトルック(経済見通し)を公表した通り、マイナス成長は不可避の情勢。さらに、サプライチェーンの修復による供給面の回復によって10‐12月期から急回復するというコンセンサスも、日銀総裁が「景気悪化は需要面からの追加的な下押し圧力も作用している」と指摘するなど、不安定要素が多い状況。

「世界的な景気回復は力強さを得て、より自律的になって来ている」とのG8の見解とは異なり、「自律的景気回復に陰りが見え始めている」というのが足下の国際経済の姿である。

世界経済が鈍化して来ているのは、先進国による「金融面でのインフレ政策&財政面でのデフレ政策」という「股裂き政策」が限界に達しつつあることである。こうした「股裂き政策」の限界は、「独立した財政政策と統一した金融政策」という矛盾を抱える欧州で顕在化して来ている。

ギリシャは2011年の財政健全化目標達成に向け、新たな財政赤字削減措置を打ち出すことを明らかにし、「債務再編」を行わずに資金を返済できることを強調した。ギリシャは公務員の一段の賃金引き下げや消費者関連の増税など一連の緊縮財政措置に加え、民営化を加速する方針も示し、これまで触れられなかった正規雇用公務員の解雇についても検討し始めている。
この1年間効果を生まなかったデフレ政策をより一層強化することに対して野党は反対の立場をとっており、一層のデフレ政策が実行できるかは不透明な情勢。涙ぐましいデフレ政策が強化されればIMFからの支援は受けられ一旦は「債務再編」を逃れられるが、ギリシャ経済は一層減速する可能性が高く、結局「債務再編」に追い込まれる可能性は否定出来ない。一方、デフレ政策が実施出来なければ、IMFからの融資は受けられず、「直ちに」「債務再編」に追い込まれる可能性が出て来る。

ドービルG8サミットの首脳宣言で示された「世界的な景気回復は力強さを得て、より自律的になって来ている」との見解は、残念ながら過去のものである。
今年度に入ってからの金融市場では、QE2の予定通りの終了やECBによる利上げ観測という金利上昇要因がある中、長期金利の低下が続いている。
その一方、株式市場では、先進国24カ国を対象としたMSCI The World Indexが約1.6%下落、新興国21カ国を対象としたEMERGING MARKETSが約4.9%下落となっている。そして先進国全体の株価が低迷する中でも、米国NYDJは0.3%上昇、ドイツDAXは1.55%上昇してる。
こうした動きは、金融市場は既にG8サミットが掲げる「自律回復」を前提とした投資から、「自律回復の終焉」を見越した「質への逃避」へと舵を切って来ていることを現したもの。

「自律的な景気回復」が止まることによって、今後「金融面でのインフレ政策&財政面でのデフレ政策」という「股裂き政策」の限界が顕在化して来る可能性は高い。そうした中、G8に関して気になるのは、イタリアのベルルスコーニ首相は記者団に対し「オバマ大統領は強いユーロを望んでいると語った」というロイターの報道。詳細は不明だが、米国は再び副作用の多い「ドル安政策」という「禁断の木の実」に手を出そうとしているのだろうか。
今回のG8が示したことは、先進各国が世界経済の自律的景気回復に陰りが見えたと判断した暁には、金融と財政両面で限界に達している先進各国が「劇薬」に手を出す可能性がある、ということなのかもしれない。



近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

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著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

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