世論対策の「英断」、国家危機管理の「大失態」

菅直人首相は28日、ブリュッセルで福島第1原子力発電所事故を巡り、海水の注入を独断で続けた吉田昌郎所長について「事業者の判断で対応することは法律上認められている。結果としても注入を続けたこと自体は決して間違いではなかった」と述べ、処分は必要ないとの認識を示した。

これは、自身の無知による「人災」を食い止めた吉田所長の処分に関して、政府としては「法律上認められている」という理由で処分を見送り、「事業者の判断」に委ねた格好。法律的裏付けのない「浜岡原発運低停止要請」や「金融機関に対する債権放棄要請」を連発して来た菅内閣が、吉田所長の処分に関して「法律上認められている」という言い訳をする姿は滑稽そのもの。簡単に言えば、市民活動家の発想で国政に当っている首相には、世論を敵に回しかねない吉田所長の処分に踏み切る勇気はなかったということ。

感情論としては吉田所長の処分見送りは尤もなこと。ただ、国家の危機管理という面では大きな問題である。「結果として間違っていなかった」ことを理由に政府の指示を無視出来るとなったら、この先政府の指示系統が維持出来なくなる事態が生じることは明白だ。本来ならば、世論を敵に回してでも、指示命令違反に対しては厳しく対処する姿勢を見せるべきであった。
吉田所長の処分見送りは、菅首相としては「英断」だが、国家の危機管理という点からは「大失態」である。

日本経済新聞社とテレビ東京が27~29日に共同で実施した世論調査が発表され、東京電力福島第1原子力発電所の事故への政府の対応について「評価しない」が74%と、4月の前回調査から4ポイント上昇したことが報じられた。菅内閣の支持率は28%と前回から1ポイント上昇したものの、依然として低空飛行。また、首相交代に関しては「できるだけ早く交代すべきだ」という回答は21%にとどまったが、「震災・原発対応が一段落したら交代すべきだ」(49%)を含めると7割がいずれかの段階での交代を望んでいる状況。

「評価しない」対応を繰り返す首相に、震災・原発問題を「一段落」させることに期待し、政権を任せなくてはならないところに日本の政治的悲劇が現れている。「評価しない」対応を繰り返す菅首相に、「一段落」つけることが出来るのだろうか。また、何をもって「一段落」とするのか、その定義が曖昧であるところも気になるところ。第一次補正予算が成立し、KYぶりを発揮しつつもG8で「日本との連携」が確認された現在の状況は、「一段落ついた」と言えないのだろうか。

「結果として間違いでなかった」という理由で吉田所長の処分を見送った菅首相は、「結果として間違った」自らの責任など全く意に介する気配を見せていない。「評価しない」対応を繰り返す菅首相に政権を委ねるのは、もはや「時間の浪費」である。「政局」であれ何であれ、「結果責任」を問われる立場にいる首相には退場して頂き、新しいリーダーのもとで一致団結することの方が復興への近道であるような気がしてならない。



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