「日本化」の解釈を誤った「経済音痴総理」が招く「日本化」

「政治が指導力を発揮せず、物事を先送りすること」を「日本化する」と表現して、揶揄する海外の論調があります。これまで積み上げてきた「国家の信用」が今、危機に瀕しています。

これは、9月に行われた野田総理の所信表明演説の一節である。

野田総理は「日本化」を「政治が指導力を発揮せず、物事を先送りすること」と定義し、さらに、「政治の指導力不足で先送りされて来た問題」を「増税による財政再建」と捉えている。

野田総理は29日の参院財政金融委員会で、政府が年末にまとめる社会保障と税の一体改革に関する大綱については「なるべく具体的なものを入れ込んでいきたい」と、消費税率の引き上げ幅と時期を明記する考えを改めて強調し、さらに30日に行われた党首討論でも「この(消費税)問題はどの政権であっても先送りのできないテーマだ」と主張し、自身の「日本化」の解釈に変化が無いことを示した。

欧州の債務危機問題の解決が各国の政治的な思惑も絡んで遅々として進まないこともあり、確かに欧米では「政治が指導力を発揮せず、物事を先送りする」ことを「日本化」と表現することが多くなっている。

ただし、見落としてならないことは、「政治が指導力を発揮せず、物事を先送りすること」の前に、「やるべきこと、やれることがあるにも拘らず」という文節が隠されていることである。こうした行間を読まずして「日本化」を語ることは、完全な「我田引水」である。

「経済音痴」でならす野田総理は、「日本化」を「政治が指導力を発揮せず、物事を先送りすること」だと決めつけてかかり、「政治力を発揮する」ターゲットに「増税」を挙げている。

しかし、こうした解釈が用いられるのは「政治」に関する部分。「経済」に関して「日本化」といった場合には、「(誤った政策で)10年、20年と低成長が続く」ことを意味している。

THE WALL STREET JOURNALは、2011年8月14日「格下げ、ゼロ金利―米国に忍び寄る『日本化』の影」と題する記事を掲載している。この記事の中では「日本の不況は1990年代初めに始まった。90年代半ばまでには景気回復に転じたため、政策当局は97年に歳出削減と増税を実施、その結果、日本は不況に逆戻りした」という分析がなされていることを紹介し、日本政府の誤った財政政策が「日本化」をもたらした原因であると伝えている。その上で「米国経済が日本と同じ方向、つまり財政赤字への懸念から財政引き締めが行なわれる方向に向かっているのではないかと懸念する声も上がっている」と、緊縮財政で米国経済が「日本化」することへの警鐘を鳴らしている。

野田総理が「政治の指導力」で実現しようとしている「増税」は、「需要不足経済」に苦しむ世界では経済の「日本化」を招く誤った政策であると認識されているである。

実際に、ギリシャは25日に発表した最新の中期財政計画(2012~2015年)で、2014年までに財政赤字の対GDP比率を欧州連合(EU)が上限とする3%を下回る水準に削減することを目指しているが、リセッションが予想以上に深刻化していることもあり、新たな緊縮策を実施しない限り目標は達成できないことを明らかにしている。こうしたギリシャの現実は、「需要不足経済」下での「増税を伴う緊縮財政」は「逃げ水政策」であり、「財政再建」というゴールに辿りつく可能性が低いことを証明したものである。

同じ「日本化」という言葉でも、「政治」と「経済」で意味が異なっていることに気付きもせず、「政治が指導力を発揮せず、物事を先送りすること」と盲目的に信じ込み、「増税」に向かうところが、「経済音痴総理」の「経済音痴」たる所以である。

そもそも、日本の財政問題は、国先発行残高の規模の問題というよりも、経済成長をさせられない、デフレを放置し続ける無能な政治によってもたらされた問題である。

財務省が発表している「国債及び借入金現在高」は、2011年9月末時点で954兆4180億円(内普通国債656兆5393億円)と、2011年名目GDP推計値の約2.03倍である。

日本の名目GDPは、2007年の515兆5204億円をピークに、2010年の479兆1972億円まで金額で36兆3232億円、率にして約7.05%減少して来ている。「たられば」を言っても始まらないが、もし仮に、名目GDPが2007年の規模を維持出来ていたとすると、直近の「国債及び借入金現在残高」の対名目GDP比率は1.85倍だったことになる。

また、もし仮に2000年から日本の名目GDPが年平均2%成長をして来たとしたら、現在の「国債及び借入金現在残高」は、名目GDPの1.53倍である。ちなみに2000年からの毎年名目GDPが5%成長を遂げて来たとしたら、その比率はほぼ1倍になる。

しかし、現実の日本の名目GDP成長率は、2007年から2010年まで平均で年▲2.4%である。もしこのペースで経済低迷、「日本化」が続くとしたら、現在の「国債及び借入金現在残高」954兆4180億円を維持したとしても、名目GDPに対する「国債及び借入金現在残高」比率は2016年に2.31倍まで膨れ上がることになる。

「経済音痴内閣」は、こうした状況を「増税を伴う緊縮財政」によって「国債及び借入金現在残高」を減らすことで脱却しようとしているが、これはギリシャの例を見るまでもなく「教科書にしか棲息しない理屈」である。「増税を伴う緊縮財政」によって名目GDPが減少してしまえば、「緊縮財政」と「財政再建」はいたちごっこを繰り返し、国民生活、日本の経済に壊滅的な打撃を与えることになる。

「増税を伴う緊縮財政」という「逃げ水政策」に固執するのではなく、「名目GDPの拡大」を目指すのが「国益」を守るための正しい選択であるはずだ。

政治面での「日本化」の意味は「やるべきこと、やれることがあるにも拘らず、政治の指導力不足で問題の先送りをすること」である。今「やるべきこと、やれること(優先順位の高い政策)」は、「名目GDPの拡大」「デフレからの脱却」であり、「名目GDPの縮小」「デフレ圧力を高める」「増税」ではない。

「経済音痴総理」の目指す政治面での「脱日本化」が、世界が何としても避けたいと考えている「長期に及ぶ景気低迷」という経済面での「日本化」を、日本で一層進めてしまうというのは、何とも皮肉な構図である。
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近藤駿介

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Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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