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君子豹変、小人革面~「小人革面」政治を続ける野田総理に期待する「君子豹変」

「立派な人物は、自分が誤っていると分かれば、豹の皮の斑点が、黒と黄ではっきりしているように、心を入れ変え、行動の上でも変化がみられるようになる。反対に、つまらぬ人間の場合は、表面上は変えたように見えても、内容は全然変わっていない」

「君子豹変す」の語源である「君子豹変、小人革面」のこうした意味を踏まえた上での発言だったのだろうか。

29日の民主党の税制調査会・一体改革調査会の合同総会に出席した野田総理は、「丁寧な国会運営を心掛けてきたが、来年は正念場だ。我々の政策を思い切って打出し、全力を尽くして成立を期す。『君子豹変す』だ」と発言した。

臨時国会での政府提出法案の成立率が34.2%(提出・審議された政府法案は38本のうち13本)にとどまり、会期が1カ月以下だった国会を除くと平成に入って最低だったことを念頭に置いた発言だったのかもしれない。しかし、話の流れからすると、野田総理の「君子豹変す」発言は、野田総理が「丁寧な国会運営を心掛けてきた」ことを「自分が誤っていたところ」と考えていることを示唆ものだったと推察される。

また、今回の野田総理の「君子豹変す」発言は、総理自身が自らを「君子=立派な人」と信じ切っていることを示したものでもある。しかし、マニフェストに書かれていない「消費増税」実施の交換条件に、マニフェストに書かれている「衆院議員定数80削減」を「献上品」として差し出し、「消費増税実施時期の半年先送り」することでマニフェスト違反を回避するという決着方法は、どう見ても「君子」ではなく「小人」が用いる「姑息な」ものである。

「政治家としての集大成」が「消費増税」という、「志が低い」政治家が、自分自身を「君子=立派な人物」と思い込んでしまうその厚顔無恥さには呆れるばかり。

「国会や国民軽視の姿勢」に対する強い批判を受けて来た野田総理が、「丁寧な国会運営を心掛けてきた」と開き直り、「君子豹変す」と発言したことから想像すると、来年の野田政権は、「リーダーシップを発揮」することで、より一層「国会や国民軽視の姿勢」を強めるつもりの様だ。

「丁寧な国会運営を心掛けてきたが、来年は正念場だ。我々の政策を思い切って打出し、全力を尽くして成立を期す。『君子豹変す』だ」と威勢よく啖呵を切った翌日、消費税率を引き上げるための政府・与党案が固まったことについて野田総理は、「大きな前進だ」としたうえで、「真に国家国民のための議論をしよう」と述べ、来年の通常国会で必要な法案を成立させるため、野党側に真摯に協力を呼びかけていく考えを強調。前日の総会で示した「対決姿勢」から、早速「丁寧な国会運営」を心掛ける姿勢へと「豹変」し、その「小人」ぶりを大いに発揮した。

今回の「消費増税」の議論は、野田総理の言う「真に国家国民のための議論」だったのだろうか。「消費増税」実施時期の半年先送りによって、結局は「消費増税」法案の閣議決定は2013年8月の任期満了による衆院選挙後になることが決定的になった。野田政権が2013年8月以降も政権を担えるのであればともかくも、野田政権どころか、民主党が現状のまま存続しているかどうかも怪しい現時点での「消費増税」議論が「真に国家国民のための議論」だったかは怪しい限りである。

今回の「消費増税」の議論が、「真に国家国民のための議論」になったとすれば、それは「野田総理は日本のリーダーには相応しくない『小人』である」ということが白日のもとに晒されたことぐらいである。

政権発足から僅か3ヵ月強で、支持率が「危険水域」と言われる水準近くまで下落した野田内閣。常識的に考えると、とても「消費増税」法案の閣議決定がなされる2013年秋まで政権を維持するのは不可能である。にも拘わらず野田総理が素案の「年内決定」に拘ったのは、「真に国家国民のための議論」をしたかったからではなく、たとえ「消費増税」実施を他の政権に譲ったとしても、「消費増税」への道筋を付けた功労者として「歴史に名を残したい」という個人的欲望に基づいたものだったのだろう。もしかすると、自政権の短命を自覚したことで、功を急いだのかもしれない。

野田総理の個人的欲望に基づいた議論に日本社会が振り回され、無用なエネルギーを費やされたこともあり、株式市場は日経平均が昭和57年の年末終値以来「29年ぶりの安値」となる8455円35銭、為替市場では年初から3円以上円高の1ドル=77円台半ばという「歴史的円高水準」で2011年の取引を終えた。「29年ぶりの安値」「歴史的円高水準」ともに、日本の「景気低迷」と「デフレ経済の深刻さ」を示すものである。

しかし、「素人財務相」の今年を振り返っての感想は、「欧州の経済状況に振り回されたというか、非常に影響を受けた」と、自らの政策対応が全て失敗に終わったことを棚に上げた、「日本は被害者」という立場を強調したものに留まった。

さらに、消費増税の前提となる「経済状況の好転」については「(欧州債務問題などの解決に向け)努力することによって経済的な指標がプラスになっていく余地は十分にある。消費税をお願いする環境は十分に整うのではないか」との「他国任せの超楽観的見通し」。また、来年の景気に関しては「復興がこれから本格化する。内需を興していくことは十分に可能だ」との「自然治癒」に期待するかのような情けないもの。

「長期金利が上がったら、政治ではコントロール出来ない」との理由で「消費増税」に突き進んだ野田政権。「安定した経済成長」もコントロール出来ない政権が、「長期金利」だけを取り上げて「消費増税」に突き進む姿は、常軌を逸したバランスを欠くもの。

30日のロンドン為替市場では、欧州の信用不安を背景にユーロが10年6ヶ月ぶりに(ユーロ流通後始めて)100円割れとなった。つれてドルも77円台前半と、東京市場の終値からさらに円高が進んでいる。これは「素人財務相」の「他人任せの超楽観的見通し」の出鼻をくじくもの。

2012年に向けて明らかなことは、ユーロも民主党も「現在の状況のままでは存続し得ない」可能性が高いということ。そして、願わくば「野田政権崩壊」が、「ユーロ崩壊」よりも先に訪れることである。それは、金融市場は財務相時代から「君子」の政策対応能力を熟知し、「君子」では「ユーロ崩壊」という緊急事態の中で日本経済を御して行くことは出来ないと見限っているからだ。

政権維持に強い意思を示している野田総理。2012年を迎えるにあたり国民が期待していることは、このまま「小人革面」政治を繰り返して行くことではなく、「君子豹変」し、早めに自ら身を引くことである。
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近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

著書

202X 金融資産消滅

著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

著書

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