2匹の「ドジョウ」が遠ざける「デフレの出口」~消費増税に突き進む「ドジョウ内閣」と「やるやる詐欺」を繰り返す日銀

「事前の緩和観測が強かっただけに、事前予想に沿った内容を受けて材料出尽くし感から円を買い戻す動きが広がった」

日銀が27日の金融政策決定会合で追加金融緩和策を決めた翌日のNY市場で円は一時80円22銭と、2月28日以来約2カ月ぶりの高値を付けた。前回バレンタインデーに日銀が実施した「義理チョコ緩和」は予想以上に円安、株高を演出したが、今回の「見え見えの金融緩和」に対する市場の反応は株安、円高と冷たいものであった。結局「義理チョコ」は「義理チョコ」で、その効果は2ヶ月しか続かなかった。

市場が今回の日銀の金融緩和に冷たい反応を示した理由は、「見え見え」だったことだけではない。日銀の金融緩和に対する本気度に市場が疑いを抱いてきていたことも大きな要因である。

白川総裁が今月18日のNY講演で、デフレ脱却には「成長力強化の努力と金融面からの後押しの両方が不可欠」と強調し、日銀として「消費者物価の前年比上昇率1%を目指し、強力に金融緩和を推進していくことに完全にコミットしている」と語っていたように、この1か月ほど日銀正副総裁達は揃って「強力に金融緩和を推し進める」という発言を繰り返して来た。

しかし、こうした発言とは裏腹に、日銀は実は全く金融緩和など行っていなかったことが、日銀が発表する統計で明らかになっていた。

「義理チョコ緩和」を実施した2月末時点での日銀のベースマネーは、1月末の118兆9656億円から6兆5247億円の減少の112兆4409億円と、日銀は「金融緩和を強力に推し進める」どころか「金融を引き締めていた」。

さらに、3月末時点でのベースマネーは112兆4618億円と、2月末比で209億円の微増とはなったものの、前年同月比でみると2814億円の減少。「強力に金融緩和を推し進める」という言葉とは正反対の結果となっている。

2011年度のベースマネーのピークは、東日本大震災後の2011年4月末の121兆8934億円である。つまり、2012年3月末時点のベースマネーの規模は、ピークであった2011年4月と比較して規模で▲9兆4316億円、率にして▲7.7%も減少している。要するに、この1年間の日銀が採ってきた政策は、「強力に金融緩和を推し進める」のではなく、「少しずつ金融を引き締めてきた」というもの。

日銀は、資産買入れ基金の枠を、創設時(2010年10月)の35兆円から今回の70兆円まで、これまで5回拡大して来ている。資産買入れ完了期限という時間のずれの問題もあり、単純に資産買入れ基金の枠と、ベースマネーの規模とを比較することは出来ない。しかし、資産買い取り基金の枠は、設定時(の0)から65兆円(2012年3月末時点)まで増加しているのに対して、同期間中に日銀が実際に市場に供給したベースマネーは、設定時(2010年10月末)の98兆8248億円から2012年3月末までで13兆6370億円の増加にとどまり、資産買入れ基金枠65兆円の2割強しか増えていない。

日銀はこの1年間、資産買入れ基金の枠を少しずつ拡大し、金融緩和を進めているかのようなポーズをとってきた。そして、日本を代表する経済紙も、ベースマネーが対前年比で10%強増えてきたことを取りあげ、「日銀は積極的な金融緩和を続けている」と報じてきた。しかし、結果を見る限り、日銀の金融緩和は「やるやる詐欺」でしかないと批判されても仕方のないものである。

日銀が「やるやる詐欺」を繰り返している間、ECBは2011年12月と2012年2月に実施した、2回の3年物資金供給オペ(Longer Term Refinancing Operations, LTRO)で、1兆ユーロという大規模な資金を供給。これによって、日米欧の中央銀行の円換算後のベースマネーの合計額は、3月末時点で505兆2700億円程度と、日本の実質GDPに匹敵する規模にまで拡大している。

これに伴って、日米欧ベースマネー合計に対する日本のベースマネーのシェアは約22.3%と、2010年3月末時点での22.0%以来2年ぶりの低水準まで低下してきている。 ≪添付チャート参照≫

BaseMoney(201203)

【参考】円高は無策な日銀が演出する「人災」である

日本のベースマネーの規模が、米国や欧州と比較して相対的な小さい(シェアが低い)ことが、直接円高を引き起こすわけではない。しかし、相対的に規模が小さいということは、ドルやユーロに売り材料が出て逃避資金が円に向かった場合、必要以上の円高を招く要因となる。これは、トヨタやソニーといった大型株から小型株に資金が向かった場合、小型株の株価が必要以上に上昇してしまう可能性があるのと同様の理屈である。

「義理チョコ金融緩和」が、円安、株高を演出できたのは、「義理チョコ金融緩和」が実施された時期が、ECBによるLTRO等もあり、欧州で最悪の事態が回避される可能性が高まり、ユーロの売り圧力が一時的に弱まっていたからである。しかし、今回は、スペイン国債の格下げや、米国第1四半期のGDPが市場予想を下回るなど、ユーロとドル両方に売り材料が出て来たなかでの「見え見え金融緩和」であり、「2匹目のドジョウ」を期待する方が厚かましいと言わざるを得ない。

野田内閣は、「政府・日銀一体となって、デフレ脱却を目指す」と主張している。しかし、経済にデフレ圧力を加える消費増税に突き進む「ドジョウ内閣」と、「やるやる詐欺」を繰り返した挙句「2匹目のドジョウを狙う日銀」との組み合わせでは、デフレ脱却など望むべくもない。

中央銀行が市場から大量の資産を購入し、多額の資金を市場に供給することが、理論的に望ましい政策であるかは疑わしい限りである。しかし、市場での為替レートは、相対比較で決定されるというのが現実である。

理論的に正しい政策か否かの神学論争よりも、日銀は円のベースマネーのシェアが低いことが必要以上の円高を招きかねない状況にあることを認識し、短期間のうちに円のベースマネーのシェアの拡大させる「強力な金融緩和」を推し進めなくてはならない。日本経済には、これ以上日銀が「やるやる詐欺」を続ける時間的な余裕はない。
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近藤駿介

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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