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「国難」とは何か?~「政権の維持が第一」と考える「国難からの逃亡者」がでっちあげる「国難」

「『国民の生活が第一』という考え方は、国難から逃げて先送りすることではない。次世代の生活のために結論を出すことが『国民の生活が第一』だ」

野田総理は、13日に開催された民主党の全国幹事長会議に出席し、小沢元代表の政治姿勢を「国難からの逃避者」の如く批判したことが報じられている。

「国難」。「デジタル大辞泉」によれば、「国難」とは「国の災難。国の危難(生命にかかわるような災難)」という意味である。

では、今の日本の「国難」は何であろうか。

「国民生活のために、われわれは、それ(消費増税)を約束として、マニフェストに明記したいというふうに考えております」

この発言からも明らかなように、野田総理は、公的債務残高がGDPの2倍以上にまで膨れ上がっていることを「国難」だと捉えている。しかし、10年国債の利回りが0.8%を下回り、為替市場で円が史上最高値水準にあるという「現実」からすると、日本の公的債務残高の高さは問題かもしれないが、「国の危難(生命にかかわるような災難)」にはなっていない。少なくとも、市場からは「国難」だと見做されてはいないことは明らかである。

これに対して日本経済。G7各国の名目GDP(自国通貨ベース)の推移を比較してみると、日本の「国難」が何なのか一目瞭然である。IMFの統計に基づくと、1996年を100とした場合、日本を除くG7各国の2012年の名目GDP(推計)は、カナダの215.3を筆頭に、米国199.1、ドイツ141.1と、軒並み1.4倍~2.15倍になっている。ソブリン危機に見舞われているイタリアでさえ、1996年と比較すると名目GDPは1.5倍以上になっている。

国難(名目GDP)


その中で我が日本はどうかというと、G7諸国の中で唯一93.1と、1996年の名目GDPを7%近く下回っている。また、同期間の一人当たりの名目GDPでみると、英国の183.7を筆頭に、カナダ182.4、米国170.6、フランス153.9、ドイツ141.5、イタリアでも145.3と、軒並み4割以上伸びている。これに対して日本は92.0と、G7各国の中で唯一8%下落し、蚊帳の外となっている。「G7各国の中で唯一貧乏になっている国」というのが日本の偽るざる実態である。

こうした日本経済の動きを反映して、東京証券取引所第一部の時価総額は、1996年末の538兆6295億円から、先週末には262兆551億円まで、金額にして276兆5744億円、率にして51.3%も下落している。この間にニューヨーク証券取引所の時価総額は、1996年末の6兆8420億US$から13兆279億US$まで、約90%増加しており、その差は歴然である。

これらの「事実」に照らして考えてみると、「国の災難。国の危難(生命にかかわるような災難)」という観点からは、日本にとって、公的債務残高の高さよりも、「日本経済の低迷」とそれに伴う「株式市場の低迷」の方が現時点で「国難」であることは明白である。

野田総理は公的債務残高の高さを「国難」だとして、「国難から逃げない」と力みまくり、消費増税慎重派や、経済成長による財政再建を目指す勢力を「国難からの逃避者」として非難し、その考え方を切り捨て、消費増税に猪突猛進している。

しかし、日本の「国難」を「経済の低迷」であるとすると、「国難からの逃亡者」は、「経済の低迷」という「国難」を放置し続けている野田総理自身ということになる。

最優先で取り組むべき「経済の低迷」という「国難」を放置し、「国難」でも何でもない公的債務残高を「国難に」に仕立てあげ、誰でもが考え付く消費増税という安易な手法による財政再建を図る野田総理。

「政権維持が第一」と考える「現実としての『国難』からの逃亡者」が、自らを「でっちあげられた『国難』」に立ち向かうヒーローの如く演出し、「現実としての『国難』」をさらに深刻なものにする消費増税実施を「やるべきこと」と勘違いし、「責任ある態度だ」と舞い上がっていることこそが、今の日本の「国難」である。

(補足)
1996年比で名目GDPが1.5倍以上になっているイタリアがソブリン危機に見舞われたことを理由に、「経済成長によってソブリン危機を防ぐことは出来ない」という主張も出てくるはずである。

しかし、経済成長をしていたイタリアがソブリン危機に見舞われたのは、経済成長を達成するために必要な資金の多くを海外に依存していたことと、経済成長によって得られるはずの税収が正しく徴収されていなかったからであり、経済成長では財政再建が出来ないということではない。

世界で最も安全な通貨、国債を発行している日本は、必要な資金を国内で調達出来る状況にあり、海外資金に頼らざるを得ないイタリアを始めとした南欧諸国とは状況が全く異なっている。

一方、得られるはずの税収が正しく徴収されていない、という点ではソブリン危機に見舞われた南欧諸国と日本には共通点がある。詳細は別の機会に譲るが、1996年度の一般会計税収は約42兆円(所得税19兆円、法人税14.5兆円、消費税6.1兆円、他)に対して、2011年度は約32.9兆円(所得税13.5兆円、法人税7.8兆円、諸費税10.2兆円、他)と、約9兆円、率にして21%強と、経済低迷以上に減少している。
日本のギリシャ化を防ぐためには、消費増税による財政再建よりも、まず「得られるはずの税収を正しく徴収する」ことを優先的に検討するべきである。

近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

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著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

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