外国人採用加速 ~ 誰がための法人税減税なのか

「イオンは2013年度に外国人採用を拡大する。アジアを中心に過去最多となる約1500人を採る。従来は主に海外店舗の運営で外国人を活用してきたが、海外事業を本格化させる中、幹部候補として採用・育成する。日本本社の人材の多様化を進める狙いもある。良品計画が13年度に日本本社での新卒の約半数をアジア各国で採るなど小売りやサービス業で外国人採用が加速してきた」

29日付日本経済新聞の一面では、イオンをはじめ、良品計画やファーストリテイリング、ソフトバンクなど大手の小売りやサービス業が゙、「アジアの成長」を取り込むために、外国人採用を加速して来ていることが大きく報じられている。その特徴は、「従来は主に海外店舗の運営で外国人を活用してきたが、海外事業を本格化させる中、幹部候補として採用・育成する」ところ。

アジアを中心に海外事業拡大を図る企業の人材採用がグローバル化してくのは、ある意味当然の流れである。しかし、企業にとって当然の選択であっても、国家としてそれが望ましい選択である保証はない。

「経団連は28日、東京都内で春季労使交渉に向けた『労使フォーラム』を開いた。米倉弘昌会長は基調講演で…(中略)…『企業の持続的な成長と発展が、労使共通の重要課題と位置付けられることを祈念する』とも述べ、賃金よりも雇用や企業の存続を優先する姿勢を強調した」

本格化する春闘を前に、経団連は「賃金よりも雇用や企業の存続を優先する姿勢」を見せている。「雇用拡大」ではなく「雇用維持」が優先的目標となるなか、日本本社での外国人採用枠が増加するということは、日本人の雇用機会が奪われることであり、「縮小均衡の再配分から成長による富の創出」が、日本国民には及び難いという現実を想像させるもの。

それ以上に気に掛かるのは、前日決定した税制改正との関係である。

先日決定した2013年度税制改正大綱では、給与増加と雇用促進を計るため、「13年4月1日~16年3月31日に始まる事業年度で、国内の雇用者への給与を5%以上増やして支給した場合、その給与支給増加額の10%を税額控除できる。ただし控除税額は当期の法人税額の10%(中小企業は20%)を限度とする」という「企業による雇用・労働分配を拡大するための税制措置の創設」と、「雇用者数が増加した場合の法人税額の特別控除制度(雇用促進制度)で、税額控除限度額を増やした雇用者一人あたり40万円(現行20万円)に引き上げる」といった法人税減税策が盛り込まれた。

新聞報道を読む限り、給与増加や雇用拡大の対象は日本人には限定されていない。従って、企業が「アジアの成長」を取り込む目的で、日本本社で外国人の採用を増やしても、法人税減税のメリットは享受できると思われる。

報道通り、従来現地採用をして来た外国人を日本本社採用にシフトしていくということは、現地法人の人件費負担を減らし、日本本社の人件費負担を増やすことになる。その結果、現地法人に利益が多く残り、日本国内での利益は圧縮されることになる。

法人税の実効税率が日本の方が海外よりも高いとしたら、日本国内の利益を圧縮することは企業にとって節税となる。さらに、増やした人件費の一部を実効税率の高い国の法人税から控除出来るとしたら、企業にとってこんな美味しいことはない。

記事の中に「日本で数年勤務した後に、能力に応じてアジア各国に幹部候補で派遣する」という会社の方針が示されているが、これは「13年4月1日~16年3月31日に始まる事業年度で、国内の雇用者への給与を5%以上増やして支給した場合」という、今回設けられた税額控除の条件を最大限利用するためのものだと考えられことはない。

「アジアの成長を取り込む」「縮小均衡から富の創出へ」…。その基本理念には全く異存はないが、それを実現するための政策に穴があり過ぎるのではないだろうか。

過度な大企業優遇は、企業を潤すかもしれないが、国全体が「強い経済を取り戻す」ための得策であるとは言い切れない。「断固たる決意で強い経済を取り戻す」のであれば、給与増、雇用拡大による税制措置の対象を日本人に限定するぐらいの「大胆な政策」が検討されて然るべきである。

日本経済新聞が大々的に報じている「イオンが外国人1500人採用 13年度、幹部候補に育成」という記事は、このままでは日本人の雇用機会と国が得られる法人税は減少し、その結果日本国民は財政赤字を補てんするために社会保障の削減と消費増税という「縮小均衡化の負担増」を強いられることを想像させるものである。これは「強い日本」からも、「美しい国日本」からかけ離れたものである。安倍政権には「大胆な、次元の違う経済政策」が求められている。
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近藤駿介

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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