新指数「JPX日経400」がもたらす効果 ~ 付加価値を奪うか、リスクを高めるか

2013年の株式市場は、日経平均が9日続伸し、2年連続での「高値引け」を記録した後、安倍総理の「来年もアベノミクスは買いだ!」という勇ましいスピーチで幕を閉じました。

米国の「財政の崖」に始まり、「金融緩和規模縮小」、「中国を中心とした新興国の景気鈍化」といった、誰の目にも明らかな逆風に晒され続けたにもかかわらず、2013年の株式市場は、終わってみれば日経平均で56.7%の上昇と、バブル期を上回り、「列島改造論」を唱えた田中角栄内閣誕生に沸いた1972年の92%以来、41年ぶりの上昇を記録しました。米国、ドイツが株式市場が史上最高値を更新するなかで、為替も105円台と5年2か月ぶりの円安水準を記録し、国内では年明けからNISAがスタートするという、まさに死角なしといった環境の中での年越しとなりました。

さて、NISAのスタート、さらには公的年金の運用の見直しで注目を浴びているのが、年明けから正式に算出される「JPX日経400」です。

「JPX日経400」という新指数については、自己資本利益率(ROE)の高さなどから銘柄を選定することで、「長期運用を基本とする年金基金や投資信託などにとって、新指数は資産運用の際の投資尺度として新たな選択肢になりうる」、「新指数で多様な運用が可能になる」といった好意的な受け止め方が主流になっているようです。

では、本当に、「JPX日経400」という新指数は市場に定着し、投資家に新たな選択肢を提供することで市場を活性化していくでしょうか。個人的には、日経や有識者達の期待ほどには市場で定着するのは簡単でないように感じています。

日経や東証、有識者達は、現実の社会で「良いものは売れる」という理想論が成り立っていることを前提にした議論を繰り返しています。しかし、「良いモノが売れる」とは限らないところが現実の社会の難しいところです。

2年連続『高値引け』?~僅かな変化を見せた株式市場」という記事でも指摘しましたが、「JPX日経400」という指数の特徴の一つは、Topixとの相関係数が99.82%と極めて高く(100%で完全に一致、-100%で完全に逆の動き)、Topixとほぼ同様の動きをしていることです。現在Topixをベンチマークに採用している多くの機関投資家が、ポートフォリオの組換えというコストを掛けてまで、ベンチマークをTopixとほとんど同じ動きをする「JPX日経400」に変更する必要性を感じるかは、疑わしい限りです。

また、Topixをベンチマークにしている運用担当者の多くは、ROEの高い銘柄を多く組み入れるなど、ポートフォリオの構成をTopixから乖離させることで、Topixを上回る収益を上げようとしています。

東証が公表している資料によると、新指数「JPX日経400」は、Topixとほぼ同じ動きでありながら、2006年8月~2013年8月までの7年間の累積で、Topixを6%強上回るパフォーマンスを上げているようです。こうした事実をもって、新指数「JPX日経400」は魅力的であると言いたいのだと思いますが、これは、多くの投資家が、ベンチマークを上回る収益を上げる為に、既にROEの高い銘柄に多く投資して来たことの証明でもあります。

一般の投資家の方は、「JPX日経400」という新たな魅力的な指数が登場するという印象を抱いているのかもしれません。しかし、実際は、Topixを上回る収益を上げる目的で、ROEの高い銘柄をTopixよりも多く組み入れている世の中に数多存在するアクティブ運用と称されるポートフォリオの全体像を、一つの指数にまとめたということに過ぎないのです。

こうした新指数の登場によって変わることは、Topixをベンチマークとしたアクティブ運用の多くが、実質的に「JPX日経400」に連動するパッシブ運用になってしまうということです。

「JPX日経400」の登場によって投資家に新たな選択肢を提供するという主張もありますが、実際にはTopixをベンチマークとしたアクティブ運用を「JPX日経400」に連動するパッシブ運用に変えてしまうことになりますから、世の中の運用を「Topix」と「JPX日経400」に連動するパッシブ運用の2つに集約させてしまう効果の方が大きいように思われます。

こうした「JPX日経400」という新指数の登場によって投資家が得られる利益は、Topixをベンチマークとしたアクティブ運用が実質的に「JPX日経400」に連動するパッシブ運用に変化することで、アクティブ運用という付加価値に対して運用会社に支払って来た高い運用報酬を、パッシブ運用並の低い運用報酬に引き下げられることくらいかもしれません。

日経や有識者達は、「JPX日経400」をベンチマークとした新たなアクティブ運用が増えることで、投資家に新たな選択肢を提供できると考えているのかもしれません。しかし、ROEや流動性などといった観点から選りすぐられた魅力的な銘柄で構成された指数をベンチマークにしたアクティブ運用を行うとしたら、ROEや流動性などの面で魅力的な銘柄に集中投資をして「分散効果」を落とすか、指数構成銘柄からもれた魅力の乏しい銘柄を組み入れる、つまり、ポートフォリオを劣化させることで「JPX日経400」を上回る収益を目指すか、どちらかが必要になります。

要するに、「資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸要件を満たした、『投資者にとって投資魅力の高い会社』で構成される新しい株価指数を創生」することによる効果は、世の中のポートフォリオから付加価値を取り去る(パッシブ運用化)か、リスクを高める方向に作用するということです。

1993年、日経平均株価にとって代わる指数になると期待されて登場し、1995年に日本初の上場投資信託の対象にもなった「日経300」。今でも指数は算出されているようですが、日経新聞のマーケット欄にも掲載されておらず、既に世の中から忘れられた存在になっています。「JPX日経400」という新しい指数が、日経300と同じ道を辿らないという保証はどこにもありません。
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近藤駿介

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Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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