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TPP交渉停滞 ~ 経済合理性において当然の帰結、政治的に大失態

「大山鳴動し鼠一匹出ず」といったところでしょうか。

「貿易と投資の自由化をめざす環太平洋経済連携協定(TPP)の閣僚会合は25日、大枠合意を実現できないまま閉幕した。昨年末に続く2度目の交渉物別れ。要の日米が関税分野で対立し、新興国を含む全体交渉も停滞した」(26日付日本経済新聞 「要の日米 対立解けず TPP交渉 停滞」)

民主党政権時代から論争が繰り返されてきたTPP。 交渉をリードするはずだった日米間での対立が解消せず、交渉全体が暗礁に乗り上げる形になりました。TPPを推進する立場の人達は、「ここで交渉の勢いが衰えれば、グローバル経済の進化にあった通商ルールを築く機運が縮みかねない」(26日付日本経済新聞社説「自由貿易の原点に戻りTPPを立て直せ」)という警鐘をならしています。

しかし、日本経済のみならず、「グローバル経済の進化」に影響を及ぼす重要な交渉であったTPP交渉が暗礁に乗り上げたというニュースに対する金融市場の反応は、日経平均株価が1ヵ月ぶりに15,000円台を回復するなど、極めて冷静なものだったことにも目を向ける必要があるように思います。

「TPP交渉停滞」という「グローバル経済の進化」にネガティブな影響を与えかねないニュースに対して金融市場がほとんど反応を示さなかったのは、政治家や学者、有識者が主張するほどTPPが日本経済や「グローバル経済の進化」に貢献する交渉だと見做していなかった、あるいは、交渉がまとまる可能性を低く見積もっていたことの証左です。もし、TPP参加が日本の成長戦略において極めて重要な役割を担っている政策だと考えられていたとしたら、日本経済の成長に対する懸念の声と共に、外国人投資家の日本株売りが出て来てもおかしくなかったと思います。

「グローバル経済の進化にあった通商ルール」といえば聞こえはいいですが、TPPは参加国が自国製品の輸出を増やす機会を得ようとしているわけですから、経済合理性から言えば交渉が暗礁に乗り上げたのは当然の帰結だと言えます。

経済規模の面ではTPP交渉参加12ヶ国は世界全体のGDPの約38%を占めています。しかし、米国がTPP参加国全体の60%強を占め、それに次ぐ日本が米国の3割に満たない約18%、3番目のカナダはさらに日本の3割強の6.5%程度と、TPP交渉参加国の構成は、どこかの国の国会と同じように一国が圧倒的なパワーを持つ状態になっています。

TPP交渉参加国GDPシェア

従って、TPPが交渉妥結に至るには、1強の米国が他の交渉参加国に慈悲深い態度を示すか、力で自国の主張を押付けるかの二つに一つしか道はなかったといえます。

オバマ大統領は、「米国の労働者や環境を守り、『メイド・イン・USA』 と書かれた新製品への新たな市場開放を実現するため、われわれは超党派の貿易促進権限といった手段で一致団結する必要がある」(1/28 Bloomberg News)と、米国の輸出機会増大を目指す方針を明確に表明していましたから、米国が他の交渉参加国に慈悲深い態度を示す可能性はほとんどないといっていい状況でした。

こうした状況を考えると、今回のTPP交渉が暗礁に乗り上げたことは、ある面で当然であると同時に、日本にとっては力ずくで米国の主張を呑まされずに済んだという点では成功であったといっていいかと思います。

カナダ、メキシコとNAFTA(北米自由貿易協定)を締結済みの米国にとって、「メイド・イン・USA」の販路拡大には、日本を除くTPP交渉参加国との交渉はメインにはなり難い市場です。日本とNAFTA締結国を除いた交渉参加国8カ国のGDPシェアは10.3%と、米国の6分の1に過ぎませんから、「メイド・イン・USA」の販売先を広げたと国内に成果をアピールするためには日本市場をこじ開ける以外にないからです。

「自由貿易はWine-Wine」だという主張を繰り返される学者や有識者もいらっしゃいますが、全ての参加国が自国製品の輸出拡大を目論む現実の社会では、それはお伽話でしかありません。アベノミクスの成長戦略における重要なピースであったTPPが交渉停滞に陥ったことに対して、金融市場が全くネガティブに反応しなかったことが、「自由貿易はWine-Wine」という主張がお伽話だと捉えられていたことの証左だと言えそうです。

TPP交渉が暗礁に乗り上げたというのは、経済的には国益を守ったという点で最低限の効果を上げたと言えるものかもしれません。しかし、これだけ国内で論争を巻き起こし、外交交渉を含めて多大なる労力と税金を投入した挙句、経済論理から当然の交渉停滞に至ったというのは、政治的には大失態です。

現実社会の経済合理性から言えば、TPP交渉は当然の帰結を迎えることになるのだと思います。願わくば、4月のオバマ大統領訪日のお土産として、政治的合理性のもとで経済合理性を覆すような動きが出て来ることがないようにして頂きたいものです。

近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

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著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

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