2014/05/31
日本維新の会「分党」で見えてきた「違い」 ~ 「野党再編」に求められる「政治理念の一致」と、議員に求められる「ドブ板選挙」
(2014年5月30日)「新たな党では 『政治生命を賭して自分の意思を遂げたい』 と、自主憲法制定を掲げる考えを示した」(30日付日本経済新聞)と、自主憲法制定に政治生命を賭けることを強調した石原代表。
「必要なことはもう、すぐ国会議員の方に連絡してこう質問やってということを言ったらですね、すぐそれで国会質問をしてこちらの意図するような答弁もらったりとかね、そうしたことが直ぐ出来るわけですから、こんなありがたいことはないですよ」(29日記者会見より)と、「本気の地方分権のやり方」について「地方サイドが国政政党をしっかり持つ」ことの意義と重要性を強調した橋下市長。
今回日本維新の会が分党に至った理由については、「憲法観の違いを埋められずに、日本維新の会は分裂する」(29日付日本経済新聞) と、「憲法観の違い」だと報じられています。しかし、東京と大阪でほぼ同時刻に行われた共同代表それぞれの記者会見を聞いていると、「憲法観」以前に、そもそも「国政政党」を持つことに対する価値観、意義、その位置付けが全く異なっていたように思います。
29日に行われた記者会見を聞いていて印象的であったのは、橋下市長が披露した「本気の地方分権のやり方」に関する発言でした。
「国会議員の方に連絡して、こう質問やってということを言ったらですね、すぐそれで国会質問をしてこちらの意図するような回答を貰もらう」ということが「国政政党」を持ったことによる「結果論」なのか、始めからそれを目指した「計画的」なものであったのかは定かではありませんが、「こちらの意図するような答弁」を引出すために「国政政党」を持つことを明言するというのは、かなり勇気が要ることだったように思います。是非はともかく、こうした橋下氏の示した「本気の地方分権のやり方」を、どの位の有権者や所属国会議員が共有していたのでしょうか。
日本維新の会の分裂騒動では、共同代表間に「憲法観」や「国政政党の位置付け」などの点において違いがあったことが明らかになりましたが、今後の焦点は「野党再編」に移って来ています。
「肝心なのは、野党再編を進める際に、政治理念や政策を共有することだ」(30日付読売新聞社説)
「理念なき野党再編に走るような愚を繰り返してはならない」(30日付毎日新聞社説)
今後の「野党再編」に関して、主要なマスコミは「政治理念の一致」を求め、数合わせの「野合」にならないように釘を刺しています。
「『歩いた家の数、握った手の数しか票は出ない』。自民党の石破幹事長は29日の 『選挙必勝塾』 開講式で、衆参両院の1回生議員約100人を前に選挙運動の厳しさを訴えた」(30日付日本経済新聞「極意はドブ板選挙」)
主要マスコミが相次いで「野党再編」に関して「政治理念の一致」を求める論評を加えるのを尻目に、1人勝ち自民党は、1回生議員達に「選挙の極意」は、忌み嫌う小沢流の「ドブ板選挙」だという教育をしていることが報じられています。
現実はそうなのかもしれませんが、「野党再編」には「政治理念の一致」を求める一方、議員には「歩いた家の数、握った手の数」が求められる。このアンバランスさにこそ、日本の政治の問題点が現れているように思えてなりません。
もし、「政治理念」とは関係なく、「歩いた家の数、握った手の数」によって選挙での当落が決まるのであれば、「野党再編」に「政治理念の一致」を求めるのは奇麗ごとでしかありません。
また、一軒一軒訪問し、一人一人握手する度に丁寧に「政治理念」を伝えているのであればそれはそれで意義深いことかもしれません。しかし、このネットが発達した社会で、こうした方法で「政治理念」を伝えるというやり方は、極めて非効率なことであるともいえます。
安倍総理は、成長戦略として「産業の新陳代謝」や「生産性の向上」を主張しています。さらには、「ビッグ・データ」について「付加価値の高い新たなサービスやビジネスを生み出しうる『宝の山』です」(2013年5月17日「成長戦略第2弾スピーチ」)と訴えています。
経済成長においては「新陳代謝」や「生産性向上」による「高い付加価値」の創造が必要だと主張する一方、政治においては「超アナログ」が求められるというところが実社会の難しいところだと思います。
それは一方では、議員側のネット等を利用した情報提供が、有権者の求めるものと必ずしも一致していないことにも原因があるのだと思います。ですから、有権者が求める情報を提供し、政治活動の「生産性」を上げるためには、有権者が議員のSNS等で発する情報をどのように思っているのか、どのような情報を欲しているのかを知るところから始めなくてはなりません。そのためにアンケート調査も行っておりますので、是非多くの方にご回答頂けたらと思います。
政党に「政治理念の一致」という高邁な理想を求めても、「歩いた家の数、握った手の数しか票は出ない」ような社会のシステムが続くのでは、「政治理念の一致」など「絵に描いた餅」にしかなりません。
「金融経済」でも「政治」でも、読者のリテラシーが高くない方がマスコミには都合がいいことは理解出来ます。しかし、日本を代表するマスコミには、政党に「政治理念の一致」という高邁な理想を求めるだけでなく、読者に対しても「家を訪ねてきた候補者や握手をした候補者」に単純に投票するのではなく、「政治理念」まで確認するよう訴えかけて欲しいものです。「政治理念」よりも「訪問」「握手」の方が票になるのだとしたら、「政治理念の一致」を優先する政党が増えて行くことなど夢物語になってしまうのですから。
一方、議員と候補者には、これだけネットが発達した社会ですから、「政治理念」や「有権者が欲する情報」を伝えるという点での「生産性の向上」と、「訪問や握手」に負けないくらいの親近感を生み出す工夫を是非して頂きたいと思います。
これだけネット等が発達した社会で、「選挙の極意」がいつまでも「ドブ板選挙」であるというのは、余りに寂し過ぎるような気がします。
政治家SNSに関するアンケート調査を行っております。2、3分で答えられる簡単なものですので、是非ご協力をお願い致します。また、お知り合いの方にもお声掛け、拡散して頂けたら幸いです。アンケート調査はこちらから。