2014/06/28
「じりじりと低下基調をたどる長期金利」が物語る「政治」と「金融・経済」の差 ~ 嘘を百回言っても、嘘は嘘
(2014年6月28日)「長期金利がじりじりと低下基調をたどっている。27日には新発10年物国債利回りが一時0.555%と、昨年5月2日以来1年2カ月ぶりの低水準をつけた。日銀の貸出増加支援策で銀行の資金需給が緩んだ影響も指摘され、金利低下余地を探る動きが出ている。27日は株価下落を受け安全資産とされる国債が買われやすかった。10年債以外の幅広い年限の国債にも買いが広がり、利回り低下が進んだ」(28日付日本経済新聞 「長期金利、一時0.555%」)
「雇用22年ぶり高水準 ~ 5月有効求人倍率1.09倍」「失業率3.5%に改善」「消費者物価3.4%上昇 32年ぶり」…。 景気回復、デフレからの脱却を印象付けるニュースで紙面が飾られる中で、長期金利は「じりじりと低下基調」をたどり、1年2か月ぶりの低水準まで低下して来ました。
長期金利が「じりじりと低下基調をたどって来た」のは、「年初に金利上昇を見込んでいた市場参加者の多くは当てが外れた格好」(同 日本経済新聞)になったことで、「幅広い年限の国債にも買いが広がり、利回り低下が進んだ」からだと報じられています。
つい一週間ほど前には、日本を代表する経済紙は「債券市場で日銀が国債買い入れを増やすことで、逆に民間投資家の取引は減っている。…(中略)… 市場での売買が細ると金利が乱高下するリスクが生まれる。昨年4~5月には買い注文が細って金利が急上昇したことがある」(19日日経電子版 「国債保有、日銀が主役に」)と、日銀が国債買い入れを増やすことで市場の売買が細り、金利が乱高下するリスクを尤もらしく報じていました。
日銀が国債買入れを継続する中、「当てが外れた」市場参加者が慌てて国債の買いに回っても、金利は乱高下するどころか、「じりじりと低下基調」を辿っています。
市場参加者の「当てが外れた」のも、日本を代表する経済紙の見込みが外れたのも、「異次元の金融緩和」を「相場の材料」として捉え、「金融」面でどのような現象が起きているのかに目を向けて来なかったからです。
4月に衆議院議員有志に対して行ったセミナーでも触れましたが、「金融緩和=円安・株高・債券安」という「相場の材料」と認識してしまうことで、「金融」的にどのようなものなのかという本質に目が向けられなくなっています。米国でも、FRBがテーパリング(金融緩和規模縮小)をする中で、長期金利の低下と株高が起きており、市場の一部からは不思議な現象だという指摘も上がって来ています。
しかし、黒田日銀総裁が「異次元の金融緩和」を行う理由として挙げている「ポートフォリオ・リバランス効果」がどのようなものなのか、そしてその進捗状況はどうなのかに目を向ければ、経済指標が穏やかな回復基調を見せる中で長期金利が低下することは、それほど不思議なことではありません。
政府と日銀、そして日本を代表する経済紙と御用エコノミスト達は、「嘘も百回言えば真実になる」とばかりに、雇用に結び付かない求人増に基づいて「雇用回復」を叫び、エネルギーや公共料金値上げによる物価上昇を「デフレ脱却」だとデタラメな見解を声高に叫び続け、国民を洗脳しようとしています。。
日本を代表する経済紙も、長期金利が「じりじりと低下基調をたどっている」原因は、日銀が国債買入れを行っているからではなく、「当てが外れた」投資家が国債を慌てて買っているからだと報じています。
要するに、「日銀が国債買入れを行っているから長期金利が低い水準に保たれている」のではなく、実体経済では「ポートフォリオ・リバランス」が進んでいない、言い換えれば「経済の好循環」は起きていないから、長期金利は「じりじりと低下基調をたどっている」のです。
「異次元の金融緩和」を「相場の材料」と捉えるのではなく、「金融」としてどのようなことなのかという本質に目を向ける人が増えれば、「異次元の金融緩和」がほとんど意味のない、代償の大きい、コストパフォーマンスの悪い政策であることに気付く方も「じりじりと増加基調をたどっていく」はずです。
政治の分野では「嘘も百回言えば真実になる」こともあるのかもしれませんが、金融、経済の分野においては「嘘を百回言っても嘘は嘘のまま」だということを、政府も日銀も、日本を代表する経済紙や御用エコノミスト達も認識するべき時期に来ています。
