2015/11/15
異次元の金融緩和のコスト ~続けても、止めても多大なコストがかかる
「日銀は14年度、1兆90億円の利益をあげ、7567億円を国庫に納付した。今回の制度変更によって、国庫に納める金額は数千億円規模で減る可能性がある」(14日付日本経済新聞 「日銀、緩和出口にらむ」国家財政が逼迫する中で、日銀の国庫納付金が数千億規模で減る可能性があることが報じられています。日銀の国庫納付金が減るということは、その分国の歳入が減少するということです。
異次元の金融緩和による効果は、円安とそれに伴う(期待を含めた)株高。それに対して、そのコストは財政面での数千億規模の歳入減少となっています。
異次元の金融緩和によって、円安・株高という金融現象を起こすことで「トリクルダウン」が起きると言われて来ましたが、実際には円安・株高に伴う恩恵は一部の企業に集約されるだけだったいう結論は既に出ている通りです。
そうした中、日銀による国庫納付金の減額による国の歳入減は、異次元の金融緩和による恩恵を受けなかった国民も含めて、全員が負担することになります。
専門家の中には、日銀のさらなる追加緩和が必要だという主張をされる方が多く存在しますが、異次元の金融緩和によって国民がコストを払っていることについて言及される方はほぼ皆無です。
異次元の金融緩和のために国民が払っているコストについて全く触れず、金現象面での効果ばかりを宣伝する今の風潮には疑問を感じずにはいられません。
「行政事業レビュー」などで、国家予算のコストパフォーマンスが検証されるなかで、異次元の金融緩和のコストパフォーマンスは全く議論されません。それは、異次元の金融緩和のコストは、実際に国家予算から出て行くものではなく、本来得られるべき歳入が失われるという逸失利益だからなのだと思われます。
異次元の金融緩和に関しては、2%の物価安定目標を達成できていないことや、輸入物価上昇を通して国民生活に負担を強いる
という副作用ばかりが論じられています。しかし、国民が財政的なコストを負担していることは全く議論されていません。
日銀の国庫納付金の減額は「異次元の金融緩和のコスト」として国民が広く負担しているという事実を明らかにしたうえで、円安・株高によって得られる恩恵が、数千億円規模の財政負担増というコストに見合ったものなのかという議論を進めるべき時期に来ているように思います。
そうしたコストを負担してでも異次元の金融緩和を進めるべきだという意見が多いのであれば、現在の金融政策は正当性を持った政策といえます。しかし、国民にはコスト負担が生じることを伏せて、数千億円規模の財政負担を負わせるやり方は、民主主義的なやり方だとはいえません。
恐ろしいことは、異次元の金融緩和に伴う数千億円規模のコストが、得られる利益に比較して高過ぎる無駄なものだという判断が下されても、この無駄を削減するのにも大きなコストが発生するというところです。
削減しようとすれば、円高・株安というコストを負う覚悟が必要だからです。
一方、このまま異次元の金融緩和を続ければ、国民の財政負担は増えることになります。
推し進めるにしても、縮小するにしても、異次元の金融緩和という、異次元のおバカな金融政策をとったことで、日本は多額のコストを支払うことになってしまっています。この責任は、誰がとるべきなのでしょうか。