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「投資家は将来の利益をベースにした妥当株価を算出して日々売買している」という非現実的妄想

「投資家は株価の妥当な水準を、企業が生み出す将来の利益をベースに計算し、日々売買しています」(29日付日経電子版 「読み解き株安 米IT銘柄の急落、引き金は『金利』」

こんな投資家がいるのであればお目に掛りたいものだ。

小生は兆円単位で株式の売買をしてきたが、投信や年金の運用においてはこうした基準で売買したことは一度もない。

「企業が生み出す将来の利益をベースに妥当な株価を計算」するという考え方は投資の基本だが、現実にこうした考え方で購入価格を決めるのは、ベンチャー投資やM&Aなどの場合であって、投信や年金の運用ではほとんどあり得ない。

それは、投信や年金のファンドマネージャーの仕事は、「企業が生み出す将来の利益をベースにした妥当な株価で株式を購入する」ことではなく、求められたリターンを生み出すことだからだ。

「企業が生み出す将来の利益をベースに計算した妥当な株価」が500円である企業の株が、市場で1000円で取引されていた場合、この銘柄を1000円という時価付近で購入するか、500円で購入できるまで待つかの判断は、投資資金の性質、ファンドマネージャーに求められているリターンによって大きく異なってくる。

世界最大の機関投資家と称されるGPIFは、6月末時点で41兆円強の日本株を保有しているが、その約90%はパッシブ運用である。つまり、GPIFは「企業が生み出す将来の利益をベースに計算した妥当な株価」で41兆円強の日本株を買っているのではなく、TOPIXを始めとしたベンチマークに含まれている銘柄を、その時の市場価格で買っているに過ぎない。

それは、世の中のほとんどの投資家が「企業が生み出す将来の利益をベースに計算した妥当な株価」で投資をしているわけではないことを意味している。

東証一部上場銘柄だけで2108銘柄もあるなか、全ての銘柄の「妥当な株価」を計算して日々売買をするなど非現実的かつ非効率的。

足元の市場価格の日々の動きは激しさを増している(ボラティリティが高い状況)。この記事の主張が正しいとすれば、毎日「日々妥当な株価水準が大きく変わっている」ことになる。それは説得力のある説明なのだろうか。

NYダウは10月3日の26,828$から先週末には24,688$まで2,140$、率にして約8%下落してきているが、同期間に米国の10年国債利回りは3.25%付近から、3.07%近辺まで低下している。

こうした事実に基づけば、理論上金利要因からすれば「企業が生み出す将来の利益をベースに計算した妥当な株価」は10月3日よりも直近の方が高くなっていて当然だ。

投資の基本はとても重要だ。しかし、それに基づいて「投資家が日々売買している」と思い込むのは宗教的幻想にすぎない。

基本を無視した暴走は避けなければならない。しかし、現実を無視した妄想にとりつかれた居眠り運転も危険極まりないものだ。

投資家は幻想ではなく、現実の中で生きていることを忘れてはならない。考え方、見方は柔軟でなければならない。投資家に求められるのは、原理主義的な考え方に縛られた行動ではなく、基本を知ったうえでのアジャストメント能力である。
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近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

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著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

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