2020/06/19
ユニクロ、時価総額ZARA接近 ~ 「東京モデル」への評価か、「異様な国策」が演出する喜劇か
「新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ファーストリテイリングの株式時価総額がアパレル世界最大手に近づいている。「ZARA」を運営するインディテックス(スペイン)との差は2017年夏の約4倍から、足元で約1.4倍まで縮まる。欧米市場の需要が急減する中、ファストリが主力のアジアは落ち込みが緩やかだ」(19日付日経電子版 「ファストリ、世界首位を意識」)ZARAの売上は約3.40兆円とユニクロの約1.4倍であるから、時価総額の差が約1.4倍まで詰まったとしても不思議なことではない。むしろ当然のように見える。
気になることは、ファストリ社の株主構成が上位10位のうち柳井社長を含めた親族とその資産管理会社が7人/社、信託銀行が3社と偏っているうえ、親族とその資産管理会社の持ち株比率合計は48.25%を占めていること。
さらに日本では日銀の大量のETF(上場投資信託)買いが問題になっている。その額約32.4兆円。ファストリ社の構成比率はTOPIXベースで約0.33%、日経平均株価では実に10.05%に達している。ここから推測される日銀のファストリ社株の間接保有額は約1.7兆円強、時価総額の約18%だ。
これらの状況から指摘できることは、所謂「浮動株」が極めて少ない状況がファストリ社の株価を割高に押し上げている可能性があるということ。こうした影響を反映してか、ファストリ社のPER(株価収益率)は約63倍と、ZARAの倍以上の水準で、「持合い」が問題となった時代を彷彿させるPER水準となっている。
エアリズムマスクの発売など、タイムリーに魅力的な商品を市場に提供してきたファストリ社に対して市場が高い期待を抱くことは、それはそれで当然である。
しかし、上場企業としては極めて少ない「浮動株」、国策として中央銀行が上場株を大量に買い込んでいるという異常な状況にあるなかで、「時価総額」というもので企業の価値を測ることが適正なのかという疑念は拭えない。
こうした異常な状況の中で、縮まってきたとはいえファストリ社とZARAの時価総額格差がほぼ両社の売上格差と同じであるということは、実際は世界の投資家がファストリ社の価値をディスカウントしてみているといえないことはない。もしその原因が「異様な国策」にあるのだとしたら由々しきことでもある。