2021/08/10
ワクチン不妊「誤情報」は「悪魔の証明」の最上級~ 国民の支持を失った政府が発する「正確な情報」
「新型コロナウイルスワクチンを否定する投稿がSNS(交流サイト)で広がっている。日本経済新聞の調べでは、ワクチンが不妊につながるというツイッター上への投稿が1月から7カ月間で約11万件あった。その半数の5万件超がわずか29アカウントの投稿が発端だった。誤情報の拡散は感染防止に向けたワクチン接種の足かせになりかねない」(9日付日経電子版 「ワクチン不妊「誤情報」拡散 29のSNS投稿が5万件転載」)こうした「誤情報」が拡散するのは、荒唐無稽のものを除いて「誤情報」と断定できないからだ。
存在しないことを証明するのは「悪魔の証明」と呼ばれるように現実に不可能なこと。したがってワクチン接種で不妊に繋がることはないということは誰も証明できないこと。しかも証明しなければいけないのは「現時点」だけでなく「将来にわたって」という時間軸を伴ったものであるため、「悪魔の証明」の中でも最上級に属するもの。
したがって、政府やメディアがこうした情報を「誤情報」だと断定することには無理があるし、無責任な情報操作という危険性も孕んでいる。
本来ならばこうした「悪魔の証明」が必要となるような相反する意見の対立、国民の不安が出て来た場合には、政府やそれに準じる権威が「正確な情報」を出すことで終焉すさせる役割を担うべきである。
こうしたなか問題なのは、今回は政府やそれに準じる権威がいくら「正確な情報」と称して情報発信してもSNS上で広がる「誤情報」を駆逐できないことだ。
それは、政府やそれに準じる権威が繰り返して発している「正確な情報」が信用されていないからだ。
「Go to は感染拡大とは関係ない」「安心安全のオリンピック」「バブル方式で国民の安全は守られる」…、これまで政府は数多くの「結果誤情報」を垂れ流してきた。ワクチン接種に関する「誤情報」を政府やそれに準じる権威が駆逐できないでいるのはそのツケだともいえる。
残念ながら、こうした状況はこの先改善するより加速する可能性の方が高い状況にある。
東京オリンピックが閉幕したことで、情報番組で脇役に回されていたコロナ問題が再び主役の座に返り咲く可能性が高まっているからだ。しかも9月末に自民党総裁任期切れが迫る中で支持率が28%(朝日新聞世論調査)と危険水域まで下落したという政府にとって「不都合な事実」を添えられて。
政府に対する国民からの支持が失われるにつれて、政府やそれに準じる権威が発する「正確な情報」に対する信頼感も低下していく運命にある。
国民が抱く政府やそれに準じる権威に対する信頼感が「誤情報」を流すサイトと同程度まで低下してしまったいま、彼らが幾ら「正確な情報」と力説して情報発信しても、彼らが「誤情報」と断定する情報を駆逐することは難しいと言わざるを得ない。政府やそれに準じる権威にとっては自業自得だといえるが、国民にとっては不幸なことである。
国民からの信頼を失いつつある政府やそれに準じる権威が国民の間に広がる「誤情報」を「誤情報」だと断定するには「悪魔の証明」をする以外になくなって来ている。