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「岸田ショック」じゃなかった ~「正しい結論」と「誤ったデータ分析」の協奏曲

「岸田ショック」じゃなかった(18日付日経電子版「「岸田ショック」じゃなかった 売っていたのは金融機関」

今頃気付いたのか、何故今頃気付いたのというのが素直な印象。

しかし、記事を読むとそれも仕方のないことだと理解できるし、この結論が客観的に導かれたものではないことが浮かび上がってくる。

「岸田ショック」ではないと結論付けた理由は「10月第1週(4~8日)の株安は、国内金融機関による季節的な売りが原因だった」(同日経電子版)という雑なものなのだから。

「国内金融機関は、新たな運用を始める4月前半や10月前半といったタイミングで、それまでの持ち高をいったん減らす傾向が強い」(同日経電子版

というが、「銀行」は7月第4週以降11週連続の売越を記録している。それどころか今年に入ってからの40週のうち、買越を記録したのは僅か5週しかない。さらに1月から9月まで全ての月で売越を記録しているし、少なくとも2016年以降一度も年間買越を記録したこともない。

つまり、「それまでの持ち高をいったん減らす傾向」などどこにも存在していない。こうした事実からどうやったら「4月前半や10月前半といったタイミングで、それまでの持ち高をいったん減らす傾向が強い」という結論を導き出したのだろうか。これは客観的なデータからの分析ではなく、データの読み手の先入観、固定観念でしかない。

「固定観念は悪、先入観は罪」と諭した野村克也監督が存命なら大きな雷を落とされたはずだ。

国内金融機関は季節的要因で売るのは当然で、岸田内閣が誕生した10月第1週にそれまで3週連続で売越を記録していた海外投資家が買越に転じたのだから「岸田ショックではない」というロジックは、海外投資家が5月以降5カ月連続で売越を記録していて「それまでの持ち高をいったん減らす」行動に出たとしても不思議ではない状況にあったことを考えると、「岸田ショックではない」という結論を正当化する材料に使うのは余りに短絡的過ぎる。

マーケットデータは全投資家に平等に開示されている。それ故に結果を分けるのはデータの読み取り方になって来る。

そして、投資家がデータ分析する際に決してやってはならないことは「結論を決めてデータを見る」ことだ。

「マーフィーの法則」で紹介されている「ハンマーを持つ人には、すべてが釘に見える」(バルックの考察)の如く、「岸田ショックではない」という結論を持って、それを裏付けるデータを探している人の目には、11週連続で売越を記録している「銀行」の売買動向も「岸田ショックではない」という結論を裏付けるデータに映ってしまうのだろう。

認識しておかなければならないことは、こうした「結論ありきのデータ分析」が許されるは、投資家でない人の特権だということである。投資家が「結論ありきのデータ分析」を繰り返せば、その先に多額の損失が待っているからだ。

特権を持った人はコストを掛けずに意見を変えることが出来る。しかし、投資家はコストを掛けずに意見を変えることは出来ない。それ故に投資家にとって「結論ありきのデータ分析」はご法度なのだ。
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近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

著書

202X 金融資産消滅

著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

著書

中学一年生の数学で分かるオプション取引講座(Kindle版)

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