市場追認型格付け

ギリシャのゼネストは遂に死者3人を出す悲惨な事態を引き起こした。こうした混乱を受けGW明けの日経平均株価は361円安と今年最大の下落幅を記録、上海株式市場は4%強下落し8カ月ぶりの安値を更新した。また為替市場でもユーロは急落、対円では一時1年3カ月ぶりに118円台まで上昇した。

先月27日にS&Pがギリシャの長期国債は「トリプルBプラス」から「ダブルBプラス」に、ポルトガル国債は「シングルAプラス」から「シングルAマイナス」に、それぞれ変更したのに続き、米格付け会社ムーディーズは5日、財政悪化を理由に現在「Aa2」(ダブルAに相当)のポルトガルの格付けを引き下げる方向で見直しに入ったと発表。さらに3カ月以内に1~2段階の格下げを実施する可能性があると指摘している。ユーロ圏諸国の財政への不安は収まるどころか拡大する気配だ。

当然のこととは言え、毎度のことながら、格付け機関の格付けのあり方は微妙だ。以前から指摘されていた通り、世界第2位の経済大国であり(正確には「であった」)、基軸通貨の一つである日本の国債と、経済的には小国でありローカルカレンシーであるポルトガルが同等格付けとあるのも常識では理解し難い話しである。
格付け手法についての議論はさておき、問題なのは格付け見直しが市場追認型になってしまっていることだ。ギリシャやポルトガルといった各国が財政懸念を抱えていることはこの1ヶ月に明らかになった問題ではなく、市場では既知の事実である。金融市場が警鐘を鳴らした後に慌てて格下げをするやり方は、アリバイ作りに奔走するどこかの国の首相の言動とほぼ同じである。
(2008年にサブプライムローン問題が生じた時、証券化商品の中には12ノッチ(段階)格下げが行われたこともあった。もとより何故これがAAAの格付けを得られるのか全く理解不能の商品が存在していたことも事実であるから、格付けバブルが禿げただけと言えばそれまでなのだが。)

格付けの市場追認型が問題なのは、金融機関の投資対象が格付けに強くリンクしてしまっているからだ。金融機関の投資可能債券は基本BBB以上の格付けを有するもの(投資適格)に限定されている。であるから、今回のギリシャの様にBB+(投機的水準)まで格下げされてしまうと、ギリシャ国債への新規投資はもとより、保有し続けること自体が難しくなってしまう。つまり、金融機関が格付けに縛られる中、格付けが市場追認型でなされると、金融市場で売りが売りを呼び、格付け自体が金融市場の動揺を加速させてしまう皮肉な構図になっている。リーマン・ショック以降、主要国は財政を膨らませて膨大な財政赤字を抱えている。今のままの各付け至上主義を続けて行くと、世の中から投資適格債が消滅し、市場から資金を調達出来ない国家が次々に破綻し、資本主義の根底が揺らぐことになりかねない。格付けのあるべき姿、格付けの利用の仕方を見直す時期に来ている。
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近藤駿介

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