「2年で2%の物価安定目標を達成する」という目標は何だったのか?

「大事なことは、2年で2%という目標達成の成否ではない。消費者物価の下振れは、原油価格の下落が主因だとはっきりしている。原油安は企業や家計の負担を減らし、交易条件を改善させる日本経済の追い風だ」(18日付日本経済新聞 社説 「日銀は経済全体を見据えて政策運営を」)

黒田日銀総裁が就任してからほぼ2年が過ぎ、就任時のコミットメント、「2%の物価安定目標を、2年程度を念頭に出来る限り早期に実現する」の達成がほぼ不可能になったことを受け、日本経済新聞は社説で「大事なことは、2年で2%という目標達成の成否ではない」と言い切り、黒田日銀総裁を擁護する立場を鮮明にしました。

その理由として挙げているのは「消費者物価の下振れは、原油価格の下落が主因だとはっきりしている」ことと、「原油安は企業や家計の負担を減らし、交易条件を改善させる日本経済の追い風だ」ということです。

確かに、半年強位前に、100ドル前後で推移していた原油価格が40ドル台前半まで下落することを想定していた人、少なくともそれを前提に政策運営や投資戦略を実行していた人は皆無に近いと思います。

また、日本はエネルギーのほとんどを輸入に頼っていますし、原油価格の下落が物価上昇圧力を削いでいるのは、日本に限らない世界的現象ですから、「消費者物価の下振れは、原油価格の下落が主因だ」という主張は尤もなものです。

釈然としないのは、「2%の物価安定目標未達」に対して、その原因が「企業や家計の負担を減らし、交易条件を改善させる日本経済の追い風」となる原油安によるものだとして容認していることです。

これまで黒田日銀は、追加緩和を行ってまで「交易条件悪化」を招く円安誘導を行い、輸入物価を上昇させることで「2%の物価安定目標」という無意味な数値目標を達成しようとして来ました。

しかし、この黒田日銀が行って来た円安誘導は、原油価格に比較すれば影響度は小さいものの、「交易条件」という観点からは「企業や家計の負担を増やし、交易条件を悪化させ、日本経済の逆風」となるものです。

それにも拘らず、日本のメディアはこぞって中央銀行が自らの意思を反映出来る為替を円安に誘導する、つまり「交易条件悪化」という犠牲を企業や家計に強いてまで「2%の物価安定目標の達成」を目指す日銀の姿勢を、これまでずっと擁護してきました。

「2%の物価安定目標の未達成」が確実になった今頃になって、「交易条件改善」を理由に「大事なことは、2年で2%という目標達成の成否ではない」と開き直ったような主張するのであれば、何故これまで「交易条件悪化」をもたらす通貨安政策で「2%の物価安定目標の達成」を目指す日銀の姿勢を擁護して来たのでしょうか。

「2年で2%という物価安定目標」がほぼ達成不能になったことが明らかにしたことは、もともと「2年で2%という物価安定目標」など殆ど意味がなかったということと、異次元の金融緩和では「交易条件改善」を伴う物価上昇を実現することは出来ないということに他なりません。

「大事なことは、2年で2%という目標達成の成否ではない」のであれば、何のためにこれまで企業や家計は「交易条件を悪化させる円安政策」で負担を強いられて来たのでしょうか。

原油高と円安という、「交易条件を悪化させる」条件が整わなければ達成できない「2年で2%という物価安定目標」が適切なものであったのか、検証が必要な時期に来ているように思います。そして、日銀が再び「交易条件」を犠牲に「2%の物価安定目標」の達成を目指すという、同じ間違えを冒さないことを願うばかりです。

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近藤駿介

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