「一面トップ vs 38面ベタ記事」が示唆する「大企業の、大企業による、大企業のための報道」

「日本経済新聞社が21日まとめた『社長100人アンケート』で、国内景気は『緩やかながら拡大している』とした経営者が全体の74.5%を占めた。円安や米国経済の回復を受け、前回の2014年12月調査を34.4ポイント上回り、景況感が大幅に改善した。」(22日付日本経済新聞 「『景気拡大』 7割超」)

22日付日本経済新聞の一面トップを飾ったのは、「社長100人アンケート」によって「景況感が大幅に改善」していることが明らかになったという記事でした。

「景気の先行きも順調との見方が大勢を占めた。9カ月後の15年末に国内景気が現状より『よくなっている』は53.1%で半数を超えた。改善の主な要因(2つまで回答)は『個人消費の回復』が84.2%、『設備投資の回復』が47.5%だった」(同 日本経済新聞)

興味深いのは、年末に向けてさらに景気が回復して行くという見通しの「主な要因(2つまで回答)として『個人消費の回復』が84.2%」と、「個人消費の回復」が挙げられているところです。

「内閣府は21日、社会意識に関する世論調査の結果を発表した。日本の現状を複数回答で聞いたところ、悪い方向に向かっている分野で『景気』が昨年から11.3ポイント増えて30.3%に達した。・・・(中略)・・・良い方向に向かっている分野でも「景気」は昨年から11.6ポイント低下し、ほぼ半減の10.4%にとどまった」(22日付日本経済新聞 「景気『悪い方向』3割」)

「社長100人アンケート」によって7割の企業経営者が「景気拡大」を感じており、「悪化」していると回答した経営者がいなかったことがグラフ付で、一面トップで大きく報じられているのに対して、「景気」が昨年から悪い方向に向かっているとした回答が3割に達したのと同時に、良い方向に向かっているとの回答が昨年から11.6ポイント低下し、ほぼ半減の10.4%にとどまったことが示された1万人を対象として行った世論調査(有効回答数6,059人)結果は、38面のベタ記事扱いでした。

調査時期が「社長100人アンケート」が3月4日~20日であるのに対して内閣府の調査は1月19日~2月12日と1ヶ月半程度異なっており、春闘でベアを含めた高水準の回答が得られたことは反映されていませんから、時期的な問題から「社長100人アンケート」よりも悲観的な見方になることは致し方ないとも言えます。

しかし、今年の春闘の集中回答日(18日)直後の3月19日時点における「東大日次物価指数プロジェクト」の「日次物価指数」は前年比▲0.30%、「日次売上高指数」に至っては同▲10.97%と大幅マイナスとなっています。

「日次売上高指数」の大幅な下落は、物価が下落しても多くの消費者が支出を増やしていないことを示すものです。もちろん、まだ賃金引上げが決まっただけで、実際に受け取っているわけではありませんから、ベアが2%を超えた影響は今後現れるのかもしれません。

しかし、「景気」が良い方向に向かっていると考える人が10.4%しかいないといううえに、景気回復に伴い増加した手元資金を「賃上げなど従業員還元」に振り向けると回答した経営者も6人に1人(16.6%)しかいないにも関らず、7割の企業経営者達が「個人消費の回復」を理由に「景気拡大」という見通しを持っているという姿には違和感を覚えずにはいられません。

「社長100人アンケート」と「社会意識に関する世論調査」の結果を同じ日の紙面で掲載しながら、日本経済新聞の編集者達はこうした疑問を抱かなかったのが不思議でなりません。紙面によって編集者が違うという事情はあると思いますが、それを理由に矛盾したような報道が罷り通るのであれば、それは消費者目線の不足だと思われても仕方がないように思います。

国民の10.4%としか「景気」がよくなっていないと回答した内閣府の世論調査を38面のベタ記事にし、7割の経営者が景気拡大を感じている「社長100人アンケート」結果を一面トップに持ってきた日本経済新聞。

こうした紙面構成から感じられることは、「大企業の、大企業による、大企業のための記事」ばかりが大きく報じられ、そうでない記事はほとんど人目に付くようには報道されないということです。

消費者が客観的情報を得られるよう、せめて二つの記事を並べて掲載する程度の配慮はして欲しかったと思います。一般国民は、こした現実をよく踏まえて上で新聞を読まなければ洗脳されてしまう危険があることを認識すると同時に、マスコミには消費者が客観的な情報を得ることが出来るような紙面作りに努めて貰いたいものです。

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近藤駿介

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