ドル建て日経平均の上昇率はS&P500を上回る?~「相場」に目を奪われることで見失われたもの

当り前ですが、運用結果は「相場」に左右されるものです。しかし、運用を「相場」から考えてしまうと、「運用の本質」が見失われてしまうものです。これが運用の難しいところ。

そうした典型のような記事が29日付の日本経済新聞に掲載されました。

「日経平均が2万円に達しても海外勢の買いが途切れない。企業の変化や景気の好循環に期待し、下値ではすかさず買いが入る。円相場がやや円高に傾いても底堅いため、海外投資家が重視するドル建て日経平均の上昇率が高まっている。

 アベノミクス相場の始まりは野田佳彦首相(当時)が衆院解散を宣言した2012年11月14日。その日から28日までのドル建て日経平均の上昇率は54%に達した。同期間の米S&P500種株価指数の53%を上回ってきた。 実績の良さが投資資金を呼ぶ好循環にある」(29日付日本経済新聞 「スクランブル~長期マネー誘う増配」)

この記事では、ドル建て日経平均の上昇率が54%と、同期間のS&P500の上昇率53%を1%上回った「実績の良さが投資資金を呼ぶ好循環」を起こしている要因であると解説しています。

一見尤もそうな指摘ですが、この解説にはおかしなところが2か所あります。

まず、この比較は単純な株価指数の騰落率を比較したものでしかないということです。この記事の中では、「東証1部全体では平均1.6%弱と、2%を超える米独や3%以上の英仏に見劣りする」と、日本株の配当利回りが米国よりも低いと指摘しています。

株価指数は配当落ちによって下落しますから、配当利回りの高いS&P500の方が配当落ちの影響が大きいといえます。アベノミクス相場が始まってから2年半の期間、ドル建て日経平均がS&P500の上昇率の1%上回ったといっても、配当を含めた総合収益で考えた場合、ドル建て日経平均の方が収益が良かったといえるかは定かではありません。

実際MSCIのドル建て配当込指数で比較すると、MSCI USAの同期間の上昇率は54.4%で、MSCI Japanの51.3%を3.1%上回っています。

もう一つの問題点は、ドル建て日経平均とS&P500の上昇率の比較するにあたって、為替リスクを全く考慮していないことです。

仮に日本経済新聞が指摘する通りドル建て日経平均の上昇率がS&P500を1%上回っていたとしても、ドル円のリスク(Volatility)は10%近い水準ですから、ドルで運用する投資家から見ると、10%の為替リスクをとって日経平均に投資することで、S&P500よりも1%高い収益を得られたということになります。

ここでのポイントは、10%多くのリスクをとって1%の超過収益を得る行動が、リスク・リターンに見合った投資行動だといえるのかという点です。このような投資行動があり得ないわけではありませんが、「投資資金を呼ぶ好循環」を生むほど魅力的なものであるとはいえません。

日本の配当利回りがまだ低いことが問題であると指摘しておきながら配当の影響を加味しなかったり、リスクの重要性を主張しつつ為替リスクを無視して騰落率を単純に比較したりという矛盾した議論を招いてしまうのは、「相場」から運用を論じるようとするからです。

運用結果は「相場」の影響を受けますが、だからといって「相場」から運用を考えると矛盾した思考に陥りやすい。こうした落とし穴を戒めるためには絶好の記事でした。長期投資をするためには、「相場」に目を奪われるのではなく、「金融の本質」に目を向けることで、「投機」から「投資」へ昇華することが必要です。

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