「金融緩和モード」再び~都合の良い米雇用統計と「先進国型経済政策」に転じた中国

「CMEグループがフェデラルファンド(FF)金利先物動向から算出した数値によると、連邦公開市場委員会(FOMC)が12月に利上げを実施する確率は54%。雇用統計発表前は62%だった」(9日付Bloomberg)

8日に発表された4月の米雇用統計では、3月の非農業部門雇用者数が速報値の12万6000人増から8万5000人増へ下方修正され、2012年6月以来の低水準となりました。この結果を受けてFRBが年内利上げに動くとの見方はさらに後退することになりました。

その一方で、4月の非農業部門雇用者数自体は前月比22万3000人増加となったうえ、失業率は5.4%と2008年5月来の最低水準まで低下となりました。

結果的に、「金利引上げ観測が消滅しないほど景気は強く、直ぐに利上げに踏み切れるほど景気は強くない」という、株式市場にとってもっとも都合の良い「金利上昇なき穏やかな景気回復」という状況が暫く続く可能性が高くなりました。それを反映して株価は3月以降で最大の上昇を記録。「Sell in May」も「(株価は)とても割高だ」というイエレンFRB議長の発言も吹き飛ばす格好になりました。

FRBの利上げ観測後退に呼応するかのようなタイミングで、10日には中国人民銀行が政策金利の0.25%引き下げを決定しました。中国の利下げは3月1日以来約2ヶ月ぶり今年2回目ですが、準備預金率も2月4日、4月19日と引き下げており、実質4カ月連続での金融緩和ということになりました。

中国が実質4カ月連続で金融緩和に踏み切ったということは、それだけ中国景気が思わしくないということです。国家統計局が9日に発表した4月のCPI(消費者物価指数)は前年同月比1.5%上昇と、政府の15年の目標である3.0%上昇を大きく下回りました。また、PPI(生産者物価指数)は前年同月比▲6.4%と38カ月連続の下落となっており、中国は過去最長の物価下落局面を迎えているといえます。

リーマンショック後に4兆元(約56兆円)規模の財政支出で世界に先駆けて景気回復を成し遂げ、世界経済を救った中国の経済政策は、一転金融政策に頼る「先進国型経済政策」に転じて来ています。このことは、財政政策による景気回復を計れる国がほぼなくなったことを意味するものでもあります。

今回の金利引き下げで中国の預金基準金利(1年物)は2.25%となりましたが、主要先進国がゼロ金利であることと比べるとまだ利下げ余地があるといえます。また、4月に中国の預金準備率は18.5%まで1%引き下げられましたが、日本の約0.8%と比較して極めて高い水準にあり、こちらもまだまだ引き下げ余地があるといえる状況にあります。

米国で利上げ観測が後退したことに加え、中国が金融政策偏重の「先進国型経済政策」を取り始めて来たことで、金融市場は再び「金融緩和モード」に逆戻りしたようです。

「金融緩和モード」は全体的には株式市場にはプラスに作用することになるはずですが、日銀にとっては相対的な緩和度の低下、緩和ステージの違いなどがおもしになる可能性は否定出来ません。

また、金融市場が再び「金融緩和モード」に転じたことで、最大のリスクは景気の好転になりますから、今後は米国の経済指標だけでなく、ユーロ圏や中国のインフレ指標動向などには、これまで以上に注意を払う必要がありそうです。

中国は実質4カ月連続での金融緩和に踏み切りました。注目されるのは、そのうち3回は週末に発表されていることです。中国人民銀行は日銀と同様、政府の支配下にありますから、金融政策の変更によって金融市場を動かすことでその権威を誇示しようとする傾向が強いことが影響しているのかもしれません。

主要先進国と比較して金融緩和余地の大きい中国が「先進国型経済政策」に転じる姿勢を鮮明にした今、世界の投資家は週末のポジション調整にもこれまで以上に気を遣わなければならなくなったのかもしれません。

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近藤駿介

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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