日銀、自己資本増強 ~ 明らかになって来た「異次元の金融緩和」の多大なコストと過剰なリスク

◆ 年間2600億円超の財政コスト
「日銀は12日、2014年度決算で最終利益にあたる当期剰余金のうち25%相当を法定準備金として積み立てられるよう、麻生太郎財務相に認可を申請した。25%相当の積み立ては過去最大。日銀は14年10月から量的・質的金融緩和を拡充して上場投資信託(ETF)など価格変動リスクが大きい資産の購入を増やしている。自己資本を増強し、保有資産の価格変動リスクに備える」(12日付日本経済新聞「日銀が自己資本増強」)

黒田日銀が推し進める「異次元の金融緩和」には多大なコストが掛かっていることが明らかになって来ました。

日銀が日銀法で定められた積立義務を上回る積立を行うということは「日銀の自己資本は増えるが、剰余金のうち日銀が国庫に納付するお金はその分減る」(同日本経済新聞)ということです。

「剰余金の処分については、日本銀行法第53条第1項により当期剰余金の5%相当額(362億円)を法定準備金に積み立てることが義務付けられているが、財務の健全性確保の観点から、これを超える1,448億円(当期剰余金の20%相当額)を、同条第2項に基づく財務大臣の認可を受けたうえで、法定準備金に積み立てることとした」(2014年5月28日、日銀「第129回事業年度決算等について」)

日銀は昨年度(2014年度)も法で定められた金額(362億円)を1,086億円上回る準備金を積んでいます。仮に昨年度「25%相当を法定準備金として積み立て」たとすると、法定準備金は1,810億円になっていた計算になります。単純に言えば一般会計の歳入がその分減ることで財政を圧迫していたということです。

「異次元の金融緩和」のよる1,086億円という財政コストは、その景気浮揚効果と比べたらコストパフォーマンス的に問題ないという考え方もあります。しかし、準備金を積み増すのは、マネタリーベースを増加させるために「14年10月から量的・質的金融緩和を拡充して上場投資信託(ETF)など価格変動リスクが大きい資産の購入を増やしている」からです。

マネタリーベースを増やすために、必ずしも「価格変動リスクが大きい資産の購入を増やす」必要はありません。実際、2001年3月から2006年3月まで世界に先駆けて実施した「量的緩和」の際には、日銀はこうした準備金の積み増しは行っておりません。何故ならば、「量的緩和」は「価格変動リスクの小さい短期資産(3カ月CP)」が主対象だったからです。

マネタリーベースを増やすことは、円高圧力を緩和するために必要な措置だったといえます。しかし、それを「価格変動リスクの大きい資産の購入」によって行う必要はなかったわけですから、「異次元の金融緩和」に伴う年間1,000億円超のコストは「不必要なコスト」だといえます。

さらに、日銀はリーマンショック後の2008年10月以降、超過準備預金に0.1%の付利をしています(銀行に利息を払っている)。足もと超過準備預金残高は160兆円を超えて来ていますから、単純計算すると日銀は民間金融機関に対して年間1600億円程の利子を払うことになり、これも一般会計の歳入を減らす要因となります。

つまり、1,000億円超の準備金積立に加え、1,600億円程付利していますので、「異次元の金融緩和」は年間2,600億円以上の財政コストをかけた政策だといえるのです。

◆「純資産」の7倍にも及ぶリスク
「日銀は22日、金融システムの現状をまとめた金融システムリポートを公表した。国内の金利が全ての年限で1%上昇した場合、昨年12月末時点で国内銀行の保有する債券の時価損失が5兆5000億円発生すると試算した。同6月末時点(5兆4000億円)と比べて1000億円増えた」(4月22日付日経電子版「金利1%上昇で銀行損失5.5兆円 日銀リポート」)

日銀は4月に公表した金融システムリポートで、「国内の金利が全ての年限で1%上昇した場合」国内銀行が5兆5000億円の時価損失を被る可能性があるという試算を示しています。

日銀が公表している「営業毎旬報告」によると、5月10日時点で日銀が保有している国債は280兆6341億円です。そして、日銀は「異次元の金融緩和」によって買入れる国債の平均残存期間を「7年~10年程度に延長する」と明言していますから、日銀が保有する国債の平均修正デュレーションは、NOMURA-BPI国債の8.46とほぼ同程度だと考えて問題はないと思います。

そうだとしたら、「国内の金利が全ての年限で1%上昇した場合」、日銀は23.7兆円、国内銀行の時価損失の約4倍もの時価損失を被る可能性があるということです。

昨年9月末時点での日銀の「純資産の部合計」は3兆4742億円(うち資本金は1億円)ですから、「国内の金利が全ての年限で1%上昇した場合」、日銀は「純資産の部合計」の7倍近い時価損失を被るリスクを抱えているということになります。

1ドル120円近い円安になり、その副作用も叫ばれるようになったいま、日銀が、「国内の金利が全ての年限で1%上昇した場合純資産の部合計」の7倍近い時価損失を被る可能性がある政策」を、年間2,600億円超のコストをかけて推し進めていくというのは、常識的には考え難いことです。

株式市場には日銀の追加緩和に対する根強い期待があるようです。しかし、日銀が中央銀行として冷静な判断をする能力を維持しているとしたら、それは叶えられる可能性の低い期待かもしれません。

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