安全保障関連法案閣議決定 ~ 祖父の功績を盾に、祖父が拒否した道を進む安倍政権

政府は14日の臨時閣議で安全保障関連法案を閣議決定。それを受けて安倍総理は記者会見を行い、「子供たちに平和な日本を引き継ぐため、自信を持って前に進もうではありませんか」と国民に訴えるとともに、「日本と世界の平和のために、私はその先頭に立って、国民の皆様と共に新たな時代を切り拓いていく覚悟であります」という強い決意を表明しました。

安倍総理の安全保障政策に関する並々ならぬ決意は伝わる記者会見でしたが、勇ましい言葉とは裏腹に、内容的には矛盾がある空虚なものであったような印象は拭えませんでした。

§集団的自衛権の行使をドラえもんに例えると・・・
「行動を起こせば批判が伴います。安保条約を改定したときにも、また、PKO協力法を制定したときにも、必ずと言っていいほど、戦争に巻き込まれるといった批判が噴出しました。 しかし、そうした批判が全く的外れなものであったことは、これまでの歴史が証明しています」((首相官邸HP 平成27年5月14日 「安倍内閣総理大臣記者会見」)

安倍総理はこのように述べ「戦争法案などといった無責任なレッテル貼りは全くの誤り」だと強調しました。

集団的自衛権の憲法解釈変更の際にも安倍総理は同じような説明をしています。

「1960年には日米安全保障条約を改定しました。当時、戦争に巻き込まれるという批判が随分ありました。正に批判の中心はその論点であったと言ってもいいでしょう。強化された日米同盟は抑止力として長年にわたって日本とこの地域の平和に大きく貢献してきました」(首相官邸HP平成26年7月1日「安倍内閣総理大臣記者会見」)

確かに1960年の日米安保条約の改定は、「日本とこの地域の平和に大きく貢献」するものとなりました。しかし、60年の日米安保条約改定と、今回の安保政策変更を同列視する「これまでの歴史が証明しています」という安倍総理の主張には違和感を覚えます。

「我が国の施政の下にある領域内にある米軍に対する攻撃を含め、我が国の施政の下にある領域に対する武力攻撃が発生した場合には、両国が共同して日本防衛に当たる旨規定している」(外務省HP 「日米安全保障条約(主要規定の解説)、第5条」より)

日米安保条約が「日米同盟は抑止力として長年にわたって日本とこの地域の平和に大きく貢献」して来たのは、ドラえもんに例えると、「ジャイアン(米国)」が「のび太(日本)を攻撃する奴が出てきたら俺も一緒に守る」と宣言したからだといえます。

しかし、今回安倍総理が行おうとしている安全保障政策の変更は、「のび太(日本)」が、「ジャイアン(米国)を攻撃する奴が出てきたら僕(のび太)も容赦しないぞ」という内容だといえます。

「ジャイアン」が「のび太」に加勢すると公言することが「のび太」の抑止力を向上させることは理解出来ますが、「のび太」が「ジャイアン」に加勢することを公言することで「のび太」の抑止力は高まるのでしょうか。こうした安倍総理の論理には疑問を覚えずにはいられません。

§祖父の功績を利用し、祖父が拒否した提案で平和に貢献する?
安倍総理が安全保障政策の変更に関して、1960年の日米安保条約改正が「抑止力として長年にわたって日本とこの地域の平和に大きく貢献してきた」ことを繰り返し強調するのは、日米安保条約改正を行ったのが祖父である岸信介元総理大臣だったこともあるように思います。個人的にはこうした事実を利用し、自らも「日本とこの地域の平和に大きく貢献する政治家」であるというイメージを与えるための小道具のように思えてなりません。

安倍総理の祖父である岸信介元総理は、世論が二分するなか日米安保条約改正に踏み切りました。しかし、岸元総理は国内世論や集団的自衛権の行使に該当する恐れがあるという理由で、条約区域を「太平洋における双方の領土、施政権下にある地域」へ拡大するという米国の提案を拒否し、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方」に止めさせました。

「歴史が証明している」ことは、岸元総理のこの決断によって、日米安保条約改正が「長年にわたって日本とこの地域の平和に大きく貢献」することが出来たということに思えてなりません。

今回安倍総理は、祖父である岸元総理が懸念した集団的自衛権の行使の憲法解釈を拡大し、条約範囲を全世界にまで広げる決断をしました。つまり、条約範囲を限定することで「長年にわたって日本とこの地域の平和に大きく貢献」して来た1960年の安保条約改定による成果を、条約範囲の拡大の根拠に利用しているということです。安倍総理のこうした論理構成には無理があるように思えます。

§国民の皆様にはっきり申し上げた?
「3回の選挙戦で私たちはお約束をしてきて、そして昨年の7月1日の閣議決定を受けて、そして総選挙において速やかに法整備を行うと言いました。そして、12月24日総選挙の結果を受けて発足した第3次安倍内閣の組閣に当たっての記者会見において、皆様も覚えておられると思いますが、平和安全法制は通常国会において成立を図る旨、はっきりと申し上げております。国民の皆様にはっきりと申し上げたはずであります」(首相官邸HP 平成27年5月14日 「安倍内閣総理大臣記者会見」)

記者会見の質疑応答の中で、安倍総理はこのように述べ、今回の安全保障政策の変更は「国民の皆様にはっきりと申し上げて来たことだ」という見解を示しました。

確かに「12月24日総選挙の結果を受けて発足した第3次安倍内閣の組閣に当たっての記者会見」では冒頭発言のなかで安全保障政策について述べています。

しかし、衆議院解散を表明した11月21日の記者会見の冒頭発言の中では、全く安全保障政策については述べていません(質疑応答の中では発言)。それどころか、冒頭発言の最初に

「本日、衆議院を解散いたしました。この解散は、『アベノミクス解散』であります。アベノミクスを前に進めるのか、それとも止めてしまうのか。それを問う選挙であります」(官邸HP 平成26年11月21日 「安倍内閣総理大臣記者会見」)

と述べており、12月24日の総選挙で問うのは「アベノミクス」、つまり経済政策であると明言しています。

もし、安倍総理が本当に安全保障法制を解散の争点として、国民に信を問うつもりがあったのであれば、冒頭発言できちんとそのことを示す必要があったはずですから、争点ぼかしの総選挙であったという批判を受けてもしかたないように思います。

筆者は、憲法を時代に合ったものに改正して行くこと自体は自然の事であるとは思っています。そして、憲法改正を実施するのは、政治の強い意思が必要だということも理解しています。

しかし、出来るならば憲法改正は冷静に客観的な判断が出来る内閣の手で行ってもらいたいと思っています。安倍総理の今回の記者会見は、安倍政権がそのような期待に応えられる内閣ではないことを明らかにするものであったように思います。

スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

入会キャンペーン 実施中!

著書

アラフォー独身崖っぷちOL投資について勉強する

Anotherstage LLC

金融に関する知見を通して皆様の新しいステージ作りを応援

FC2ブログランキング

クリックをお願いします。

FC2カウンター

近藤駿介 facebook

Recommend

お子様から大人まで
町田市成瀬駅徒歩6分のピアノ教室

全記事表示リンク

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR