市場の「常識」が崩れたのか、それとも市場の「常識」を持たないファンドマネージャーが増えたのか

「市場の『常識』が崩れつつある。日経平均株価は2万円台に駆け上がったのに、投資のプロであるファンドマネジャーは運用成績を伸ばせていない。7割の投資信託で運用成績が市場平均を下回るという異常事態だ。金利と食品、原油と銀行、そして為替と商品。グローバルに行き交う投資マネーは経験則にはなかった新たな関係を生み、投資家を翻弄している」(4日付日本経済新聞 「緩和マネー、経験則覆す」)

本当に「常識」が崩れつつあるのだろうか。

確かに「金利と食品、原油と銀行、そして為替と商品」などリスク資産間の関係は変化して来ているかもしれません。しかし、こうしたリスク資産間の相関は一定ではなく、時間の経過と共に変化するというのが運用の「常識」です。リスク資産間の相関が一定だという「常識」を持っていたとしたら、単に「ファンドマネジャーは投資のプロ」という認識が間違えていたというだけではないかと思います。

さらに、「7割の投資信託で運用成績が市場平均を下回る」というのが本当に「異常事態」なのでしょうか。

130兆円に及ぶ公的年金の運用を担い、世界最大の機関投資家と称される年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の「平成25年度 業務概要書」の中で、「各資産の超過収益率の状況(直近8年間及び4年間)」が公開されています。

このデータによれば、国内株式のアクティブ運用の超過収益率(年率)は直近8年間で▲0.36%、直近4年間でも▲0.25%とベンチマークを下回っているだけでなく、パッシブ運用の△0.02%(直近8年:年率)、▲0.08%(直近4年:年率)をも下回っています。

各年度の勝敗をみても、直近8年間では2勝6敗、直近4年間では1勝3敗になっています。

GPIFは過去の実績などを含む多角的な評価に基づいて運用委託先を選定しており、運用委託先は所謂名の通った大手運用会社が中心になっています。こうした日本を代表する運用会社の成績がこうした状況にあるという事実から言えることは「7割の投資信託で運用成績が市場平均を下回る」ということは「異常事態」ではなく、「日常的」なことだということです。

「『何を買えばよいのかさっぱり分からない』――。ある国内投信のファンドマネジャーはあきらめ顔だ。彼は企業業績と株価の水準を綿密に分析して銘柄を選ぶ。いわば投資の王道だが、今の市場は、この手法が通用しにくい。株価が割高とみて買わなかった銘柄が、あれよあれよという間に上昇していく」(同日本経済新聞)

「企業業績と株価の水準を綿密に分析して銘柄を選ぶ」ということを「投資の王道」と称していますが、「企業業績と株価の水準」が一次方程式の関係にあると考えているとしたら、それはとても「プロの投資家」といえるものではなく、「夢見る投資家」でしかありません。

「何を買えばよいのかさっぱり分からない」と嘆くような「プロの投資家」といえないファンドマネジャーは、最近の「株主還元」という潮流に従い、投資家に資金を返却するのが筋であるように思えてなりません。

「金利や原油価格などの変動に株式相場が大きく左右されるようになれば、株価が企業業績などの実態とかけ離れたものになる」(同日本経済新聞)

「実態を反映した株価」というのがどのようなものなのか、本当に存在するのかは知りませんが、一般的に言われている「理論株価」というのは「金利」の関数ですから、「プロの投資家」にとっては「金利の変動に株式相場が大きく左右される」ことは当然のことでしかありません。そうしたなか、なぜ「金利の変動」に左右される株価を「実態とかけ離れたもの」であるかのような表現をするのか、疑問を抱かずにはいられません。

「米国の利上げやギリシャ問題など市場の懸念材料は目白押しだ。緩和マネーが生んだ新たな連動は、万が一のショックが連鎖し大きくなるリスクもはらむ」(同日本経済新聞)

この記事は、このように「万が一のショックが連鎖し大きくなるリスクもはらむ」という指摘で締め括られています。こうした指摘は尤もなことですが、投資家はこうしたリスクは「緩和マネーが生んだ新たな連動」によって顕在化するのではなく、「投資のプロ」とはいえないファンドマネジャーに分不相応な多額な資金が流れ込んでしまうことによって顕在化するという認識を持つ必要があるように思います。

「緩和マネー、経験則覆す」という記事は、市場の「常識」が崩れつつあるのではなく、市場経験が少なく、「経験則」も市場の「常識」を持ち合わせていないファンドマネジャーが増えて来ているという不安を抱かせる内容でした。

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近藤駿介

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Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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