異次元の金融緩和の化けの皮を剥ぐ「日経・東大日次物価指数」

「スーパーの日々の物価動向を示す『日経・東大日次物価指数』が上昇している。前年同日比の上昇率は17日時点で2011年10月以来、約4年ぶりに1%を超えた。円安で製造コストが高まる中、食料品を中心に値上げの動きが広がっている」(22日付日本経済新聞 「スーパー物価1%超の上昇」)

消費者物価指数(CPI)の上昇率が、前年同月比で0.1%の上昇(生鮮食品を除く総合)に留まるなか、「総務省が算出する消費者物価指数(CPI)と長い目で見ると連動する傾向がある」(同日本経済新聞)と言われている「日経・東大日次物価指数」の上昇率が約4年ぶりに1%を超えて来ました。

「日経・東大日次物価指数」が上昇して来たことは、「雇用の改善や賃金の上昇を背景に物価は上昇基調を続けている」(同日本経済新聞)という日銀の見通しを正当化するものだと好意的に捉える向きもあります。しかし、「日経・東大日次物価指数」を詳しく見てみると、ちょっと異なった結論に辿りつくように思います。

物価上昇には、賃金や原材料の値上げなどによる生産コストの上昇による「コストプッシュ・インフレ」と、景気拡大に伴う総需要増大による「ディマンドプル・インフレ」の2つがありますが、日銀が目指しているのは資金供給量を増やすことによる「ディマンドプル・インフレ」です。

足下の物価上昇がどちらのタイプなのかを判定するのに重要なのは、「日経・東大日次物価指数」と同時に「東大日次物価指数プロジェクト」が公表している「日次売上高指数」です。

「売上高」というのは、「価格×数量」というように分解されます。また、スーパーで売られている日常品のほとんどは、価格が上昇すれば販売数量が増え、下落すれば販売数量が減るという特性を持っています。

こうしたことから言えることは、仮に顧客の購買力が高まっているとしたら、「価格」が上昇しても「販売数量」は変わらず、結果的に「売上高」が「価格」上昇分だけ増え、仮に顧客の購買力が弱まっているとしたら、顧客は出費を抑えるために「価格」上昇に対応して「販売数量」を減らし、結果的に「売上高」は増えないということです。

「日次売上高指数」は曜日の関係もあり、「日次物価指数」と比較してとても振れの大きなものなので、同時に発表されている月次指数を民主党政権時代の2012年を100として水準を計算してみると、6月時点での「物価」水準は99.42、「売上高」水準は98.76となり、ともに2012年の水準にも届いていない状況です。

「物価」が上昇して来ているにもかかわらず、「売上高」が伸びていないということは、「販売数量」が増えていない、要するに顧客の購買力が高まっていないことを示唆するものです。

換言すれば、アベノミクスは景気回復に伴う物価上昇という効果を生んでいないということです。

記事の中では、東大日次物価指数プロジェクトを指揮する渡辺努・東大教授の「値上げしても販売が大きく落ち込まないと判断するメーカーや小売店が増えているようだ」というコメントが紹介されていますが、発表された指数は、実際には「販売数量」は増えていないことを物語っています。

しかも、この「日経・東大日次物価指数」では、内容量を減らすといった「隠れ値上げ」は反映されていません。消費増税を期に「隠れ値上げ」が続いたことを考えると、顧客の実質的な「購入数量」はかなり減っている可能性が高いといえる状況にあります。

「値上げしても販売が大きく落ち込まない」としたら、それは顧客が既に生活をしていくうえで最低限必要な水準まで「購入数量」を落して来ており、「価格」に関らず今の「購入数量」を維持せざるを得ない状況に陥っていることを表しているのかもしれません。

「日経・東大日次物価指数」を分析する限り、足下の物価上昇は「ディマンドプル型」とはいえないものです。また、先日実質賃金指数(=名目賃金÷CPI)が2013年4月以来25カ月ぶりにマイナスを脱したことが報じられましたが、CPIに先行して「日経・東大日次物価指数」が上昇して来ているということは、実質賃金は依然としてマイナス圏に沈んでいるということを示すものでしかありません。

「日経・東大日次物価指数」の上昇は、安倍総理が推し進めてきたアベノミクスと異次元の金融緩和の効果の化けの皮を剥ぎ取り、今後安倍総理の支持率をさらに低下させる原動力になるかもしれません。


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