国際商品、12年ぶり安値 ~ 引くことは出来ても、押すことのできない金融政策

「原油や金といった国際商品価格が下がっている。商品市場の動きを表す代表的な指数は3日、12年ぶりの低水準になった。原油の増産や米ドル高基調、中国需要の落ち込みで投資資金の流出が続く。日本にとって原油安はガソリンや電力料金の下げにつながりメリットは大きい。半面、価格下落の要因となっている新興国需要の減少は企業業績の重荷となり、商品から流れ出た投資マネーを株式市場に向かいにくくしている」(4日付日本経済新聞 「国際商品、12年ンぶり安値」)

世界的金融緩和に伴う「カネ余り」により主要国の株価が堅調に推移する中、国際商品価格が12年ぶりの水準まで下落して来ました。その要因として指摘されているのが「中国需要の落ち込み」を始めとした「新興国需要の減少」です。

この指摘が正しいとしたら、一連の世界的金融緩和は金融市場には好影響を及ぼしているものの、世界経済の「需要の落ち込み」に対する効果は限定的だといえます。

実際に先進国24か国 で構成される株価指数MSCI World Indexは2006年1月を基準にすると直近約34%上昇し、リーマン・ショック前の高値を抜いて来ています。これに対して、原油など19商品の先物相場で構成されるCRB指数は同期間に42.4%下落し、リーマン・ショック直後の安値を下回って来ており、完全に明暗が分かれた格好になっています。

MSCI World IndexをCRB指数で割ったレシオ(Ratio=MSCI World Index/CRB指数)は、2012年までは3倍~5倍強のレンジで推移して来ていました。しかし、FRBがQE3を始めた2012年秋以降レシオは上昇(株価上昇>商品価格)基調に転じて来ています。さらに、日銀が追加緩和に、そしてECBが金融緩和に踏み切った2014年秋以降、その傾向に拍車が掛かり、直近でレシオは8.76まで拡大して来ています。

商品市場と株価(2006=100)

一般的に金融政策は紐のように、「引くことは出来るが押すことは出来ない」と言われています。この格言に準えていえば、金融緩和は「株価を引き上げることは出来たが、需要を押し上げることは出来ないでいる」ということになります。

「物価は経済の体温計」といわれます。その体温の基になるなっている商品市況が低迷するなかで株価が上昇しているということは、株価の上昇は必ずしも実体経済を反映したものではなく、金融現象によって嵩上げされている部分が大きいということでもあります。

気にかかることは、商品市場が低迷するなか株価が上昇し、株価(MSCI World Index)がCRB指数の8倍を超えて来た最近の状況は、2000年のITバブル崩壊の前夜の状況に似ているということです。

ITバブルが崩壊する前の1999年には、商品市場が低迷するなかこのRatioは一時9.61倍まで上昇し、その後1年に渡って8倍を超える状況が続きました。ITバブルの背景にあったのも、ベンチャーブームの中でIT企業を中心とした企業に多額の投資資金が集まったという金融現象でした。

商品市場と株価(1996=100)

「原油安は日本経済にとって全体としてはプラスだ。『日本企業にとって製造コストの削減につながり、業績の上振れが期待できる』との声も聞かれる」(同日本経済新聞)

この記事の中では、このような専門家の見方が紹介されています。ただ、「製造コストの削減が業績の上振れに繋がる」ための必要条件は、需要が存在することだということを忘れてはなりません。

株価が上昇するなかでの商品市場が低迷色を強めて来ているということは、株価上昇による需要拡大効果が限界に達したことを示唆したものだとも言えます。

商品市場が12年ぶりの水準まで下落したことだけでなく、先進国の株価が世界の商品価格に対して、2000年のITバブル以来の割高な水準まで買われて来ていることにも目を向ける必要があるのかもしれません。

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