「経済の好循環」が幻だったことを突き付けた4-6月期GDP速報

市場予想ほどは悪くなかったが、内容は思った以上に悪かったといえるものでした。

内閣府が17日発表した4~6月期の実質国内総生産(GDP)速報値(季調済)は前期比▲0.4%減、年率換算で▲1.6%減となり、昨年7~9月期以来3四半期ぶりのマイナス成長となりました。

民間予想の平均は▲2%前後のマイナスでしたし、▲3%を超えるマイナスを予想する調査機関もあったことから▲1.6%のマイナスという結果を「市場予想を上回った」とポジティブに捉えられる向きもあります。しかし、毎回参考にならない予想値を出し続けている調査機関の予想と比較して良かった、悪かったという議論はほとんど意味がありません。

4-6月期GDP速報値から浮き上がらせたことは、政府が14日に発表した2015年度の「経済財政報告 ~ 四半世紀ぶりの成果と再生する日本経済」で改めて強調した、企業収益の改善が雇用や賃金上昇につながり、消費や設備投資を促すかたちで「経済の好循環が着実に回り始めている」という主張には、統計上全く裏付けがないということです。

民間需要でプラスを記録したのは、GDPの構成比で約2.5%の「民間住宅」一項目のみという状況でした。

確かに4-6月期の上場企業収益は日本経済新聞社の集計で前年同期比24%増となりましたが、回復基調にあると繰り返されて来た「民間設備投資」は前期比▲0.1%の減少となり、少なくとも4-6月期の統計では設備投資回復を裏付けすることは出来ませんでした。

また、「家計最終消費支出」は前期比▲0.8%の減少と、金額ベースで2兆3200億円の大幅な落ち込みとなり、安倍政権が成果として強調する雇用状況の改善や賃金上昇によって消費が増加するという見立てが完全に夢物語であったことを示しています。

企業収益の改善は明らかですが、それが消費や設備投資に結び付いていないことが今回の統計で裏付けられ、「経済の好循環が着実に回り始めている」という政府の主張の根拠に疑問を投掛ける結果だったといえます。一時流行った「トリクルダウン(富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちるという経済理論)」も、それが幻想に過ぎないことが明らかになるにつれて早くも死語と化して来てしまいました。

甘利経財相・再生相は「(マイナス成長は)一時的な要素がかなり大きい。7月以降のプレミアム付き商品券の発行や真夏日が続いているのを考えれば回復の見込みは高い」との見解を表明されました。

しかし、プレミアム付き商品券は2014年度補正予算に盛り込まれた「地域消費喚起・生活支援型」の交付金(2500億円)を活用した財政支出による事業ですから、これによって個人消費が回復したとしてもそれは政府の主張する「経済の好循環」が起きていることにはなりません。プレミアム商品券に期待しなければならないという発言が出てくることこそが「経済の好循環」が行き詰っていることを示唆したものといえます。

個人消費とともに懸念されるのは「輸出の落ち込み」です。

注目をされている中国人観光客による「爆買い」は、GDP統計上は「輸出」に分類されています。その「爆買い」に関しては「訪日外国人観光客による消費は6.1%増えたが、GDPへの寄与度は0.03%分の押し上げにとどまった」(日経電子版)と報じられています。

訪日観光客の数は1-3月期の約413万人から、4-6月期には約501万人へと約21%増加しています。こうした中で「爆買い」のGDPへの寄与度が0.03%程度にとどまり、「輸出」が前期比▲4.4%の減少となったのはやや意外な結果でした。

2014年の訪日観光客1341万3600人が日本で使ったお金は総額2兆305億円(日本政府観光局)でした。2015年上期の訪日観光客は914万人ですから、1人あたりの消費額が2104年と同じだと仮定すれば2015年の訪日観光客の年間消費総額は単純計算で2兆7670億円となり、これは高知県、島根県のGDPを上回り、佐賀県(2兆8668億円)に匹敵する規模です。

年率換算して佐賀県1県が増えるほど訪日観光客がお金を落してくれているなかで「輸出」が年率換算で▲16.5%、4兆1802億円も落ち込んでいるというのは、本来の「財貨・サービスの輸出」が大幅に落ち込んでいる可能性を感じさせるものです。そしてそれは、中国経済の実際の落ち込みが、我々の想像以上に深刻かもしれないということです。

今回発表されたGDP速報値は、企業収益の改善が雇用や賃金上昇につながり、消費や設備投資を促すという政府が掲げる「経済の好循環」が絵に描いた餅に過ぎないことを示すと同時に、円安による企業収益の回復にも疑問符を投げかける内容でした。

市場予想よりは落ち込みが少なかったとポジティブに捉えるには、GDP速報値は悲観的過ぎる内容だったように思えてなりません。

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