世界同時株安 ~「ドル安、新興国通貨安」が物語るもの

「世界の株式相場が連鎖安に見舞われ、商品相場も下げ足を速めている。中国の失速懸念が世界経済に暗雲となり、国内外の投資資金はリスク回避に走っている」(23日付日本経済新聞 「世界市場 不安の連鎖」)

「投資資金はリスク回避に走っている」というところに「日本的発想」が滲み出ているようです。

「日本的発想」というのは、リスクを「資産サイドのリスク」でしか捉えていないところです。

「資産」を保有するためには、そのための「資金調達(負債)」が必要不可欠ですから、「資産」と「資金調達(負債)」はセットで考える必要があります。

したがって、リスク回避行動は「資産」サイドの理由だけでなく、「資金調達(負債)」の理由でも起き得ることです。そして、リーマン・ショックでもそうであったように、一般的に「資金調達(負債)」サイドに起因したリスク回避行動の方がリスク資産価格に大きな影響を及ぼすものです。

足下の世界的株安は、8月11日の人民元切り下げに端を発したものです。

人民元の「基準値」が突然切り下げられたことで、専門家の間からは「通貨切り下げ戦争が始まる」という懸念の声が上がりました。人民元切り下げを契機に「ドル高、新興国通貨安」が進むという懸念です。

人民元が切り下げられた11日以降、確かに為替市場では「ドル高、新興国通貨安」が進行しました。しかし、米ドル指数は人民元切り下げ以降、上昇するどころか、徐々に上値を切り下げる展開となり、為替市場全体としては「ドル安、新興国通貨安」が進む格好になりました。

「ドル安、新興国通貨安」という展開になったのは、ドルが対ユーロ、対円で下落したからです。人民元切り下げられる前日の10日を基準にすると、21日時点でのドル指数は▲2.43%の下落となっています。それは同期間、対ユーロで▲3.24%下落(ユーロ高)、対円で▲2.09%下落(円高)しているからです。

ドル安、新興国通貨安

人民元切り下げ後にユーロ高、円高が進んだのは、ユーロと円がキャリートレードにおける「調達通貨」だったからです。

キャリートレードにおいての「調達資金」の必要条件は、「金利が上がらない」「通貨高にならない」ということです。どちらも「資金調達(負債)」のコストと規模を高めてしまうものだからですから、キャリートレードを行う投資家にとっては好ましいものではありません。この両面において、FRBが利上げに向かう中で金融緩和を維持、強化する方向にあったユーロと円は「調達通貨」に相応しい通貨でした。

一方、「資産サイド」に着目すると、人民元を始めとした「新興国通貨安」は、新興国の資産を持つ投資家にとっては、資産価値の下落を招くものです。

したがって、「新興国通貨安、円高&ユーロ高」は、キャリートレードを行っている投資家にとって、「資産の下落」と「負債の増大」というダブルパンチとなるものです。そして、このダブルパンチから逃れるためには、「資産」を売却し、「負債」を返済する以外にありません。

詳細は「近藤駿介の実践資産運用サロン」に譲りますが、足下で起きている世界同時株安は、為替市場で起きているユーロ高、円高を合せて考えると、中国経済の失速懸念という、懸念に過ぎない「資産サイドのリスク」よりも、為替市場で現実に起きたユーロ高、円高による「負債拡大リスク」の解消に伴って起きていると考えるのが自然です。

株価の急落を受けて、メディアでは「市場関係者」「専門家」と称される人達が「下値のメド」を披露しています。

しかし、「負債拡大のリスク」を解消することによって起きている株価の下落は、「負債拡大のリスク」が解消されるまで終わることはありません。それは資産価格が割高・割安という基準で売られているわけではなく、「持っているから」という理由で売られているからです。

「負債拡大リスクの解消」という「負債サイドの理由」でリスク資産の価格が下落している局面では、「資産サイド」の理屈に基づいた「下値のメド」を基準に買い向かうというのは、「リスクを取る投資行動」ではなく「無謀な投資行動」だという認識を持つことが必要だと思います。

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