早くも露呈した「マイナス金利拡大」と「量的緩和拡大」のジレンマ

日銀がマイナス金利政策に踏み込んだ当初から、「マイナス金利拡大」と「量的緩和の拡大」とは同時に達成することが出来ない、ということを主張して来た。

このことは、3月12日に東京ドームシティプリズムホールで行われたゴゴジャン主催の 「” Bye-bye Abenomics ” でどうなる株式市場」 というセミナーをはじめ、拙講座やセミナー、有料メルマガで発信し続けて来ているので、一部の方は既にご存知のこと。

こうした事態が、マイナス金利政策導入約2ヶ月と予想以上に早く「日銀CP購入札割れ」という形で現実のものとなった。

一方、29日付日本経済新聞「経済教室」では、元イングランド銀行金融政策委員であり大手銀行グループのチーフエコノミストである経済学者の「現金の『貯蔵コスト』が預金金利の下限になる」という見解を紹介している。

「貯蔵コスト」「実質金利」「実質均衡金利」・・・。「経済教室」の中では難しい経済専門用語が並んでいる。しかし、これらの全ては「机上にしか存在しない考え方」で「桃源郷でのお話し」。

実際の金融は「机上にしか存在しない考え方」通りには動かない。現実の世界ではそれそれの投資家がそれぞれの制約条件を持っているからだ。それぞれが制約条件の下で、錯覚も含めて効率的であろう選択をしていくからだ。

その際の選択肢が、理論上あるいは結果的「最適」であるかは定かではない。多くの人が別の選択をした場合には理論上「最適」であっても、結果的に「最適」にならない可能性があるからだ。

したがって、それぞれの投資家は「自分にとっての最適」を目指す以外にない。

「貯蔵コスト」が預金金利の下限になるという「考え方」も、「桃源郷でのお話し」の一つ。

しかし、難しいのは、現実の社会では通用しないからといって「桃源郷でのお話し」が無用の長物ではないということだ。

「桃源郷でのお話し」は現実的ではないものの、その多くは基本的かつ有益な「考え方」を示してくれる。

今回の「経済教室」において大切なのは「保険をかけて現金を安全に保管するための『貯蔵コスト』が預金に適用しうるマイナス金利の限界となる」という部分。これは、「貯蔵コスト」と「マイナス金利」の間で「裁定が働く」ということを示したもの。

このどのようなものにも「裁定が働く」という考え方が金融においては極めて重要な考え方なのだ。この意識が欠如している人には金融を理解することは出来ない。

「今年中に日経平均が25,000円になるか」というような「相場」の事ばかりを考えている人が金融を理解出来ないのは、「裁定が働く」という意識が希薄だからだ。

このような人は知っている「裁定取引」という単語を連発するかもしれないが、「裁定取引」の本質的メカニズムを理解していないので、主張は「裁定解消売りに押された」という「脳停止の次元」に止まってしまう。

多くの投資家に求められるのは、制約がない「桃源郷の世界」では、どのように動くのか、どのような裁定が働くのかという論理を知ったうえで、現実社会に生きる人間がどのような制約を抱えていて、それによってどのような選択を迫られていくのかを考え加えることで、「桃源郷でのお話し」を「現実社会のお話し」に編集して行く能力だということ。

こうした編集能力は、「桃源郷の世界」に生きている学者や有識者ではなく、現実の社会に生きている投資家でなければ身に付けることはできないもの。

編曲とか編集というのは、オリジナルが無ければ成り立たないのと同じで、「現実社会のお話し」も「桃源郷でのお話し」なしには構築することは非常に難しい。

一般的に、日本でいう「勉強」は「桃源郷でのお話し」を「覚える」ことに留まっている。「勉強」は大切だが、ここで止まってしまっては何の価値もない。現実の社会にはそのまま当てはめることが出来ないし、覚えるだけならばパソコンにとって代わられるからだ。

日本では「勉強の大家=有識者」という間違った認識が定着してしまっている。さらには、「勉強の大家=有識者」達の多くは、現実の社会も「桃源郷でのお話し」通りに動くはずだという誤った思い込みを持ってしまっていて、現実の世界に生息している投資家に指導をする立場にあると勘違いしている。

一方、多くの投資家達は理解するのが難しい「桃源郷でのお話し」を現実的に役に立たない代物だと決めつけて、誰でも出来るチャート分析などに走り、目先の利益を追求しようとし過ぎている。

おそらくどちらも正しいとはいえない認識であるし、どちらの理屈も単独では役に立たないものである。

重要なのは、「桃源郷でのお話し」を「現実のお話し」にアレンジして行く知識と能力を身に付けていくことである。これは「勉強」ではなく「学び」の世界。

黒田総裁は「追加緩和には限界がない」と発言し、実質的に「マイナス金利に限界がない」という見方を示している。

しかし、「桃源郷の世界」では限界がなくても、様々な制約が存在する「現実の世界」では限界は存在する。

今回日銀によるCP購入札割れによって見えてきた「マイナス金利と量的緩和の両立のジレンマ」は。こうした「桃源郷の世界」と「現実の世界」との違いを考えるうえでとてもいい教材でもある。

こうした出来事を通して、「相場」ではなく「金融」に興味を感じてくれる人が少しでも増えることを期待したい。それによって「相場分析能力」は確実に向上するからだ。

念のために付け加えておくが、「相場分析能力」と「相場予知能力」とは全く別次元のもの。前者は誰でも身に付けることが可能だが、後者はほとんどの人が身に付けることの出来ないもの、という根本的な違いがある。

こうした違いを認識すれば、投資家がどちらを目指すかは自然と決まってくるはずだ。

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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