限界に達した2つの政策~「異次元の金融緩和」と「GPIFによる買支え」

日経平均が16,000円付近まで下落、為替が106円台まで円高になって来た。この記事を書いている時点の海外市場では、日経平均先物は15,900円台前半、為替は105円70銭台となっている。

円高、株安が進むと懸念が高まるのは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用状況。

公表されている2015年末のGPIFの運用資産(139兆8249億円)と資産配分から単純計算すると、2日時点での推計運用資産は133.4兆円前後と、昨年末比で6.4兆円ほど減少している推察される。

実際には年度末に「年金特別会計」への納付金等が5兆円程度あったはずなので、足下の運用資産規模は128兆円程度になっていると推計される。

この水準は2014年6月末とほぼ同水準(127.3兆円)。

2014年6月末の日経平均株式は15,348円、国内債券(Nomura-BPI総合)は355.413、為替は101.38円であるから、軟調な現在でも当時より株高(+5.2%)、債券高(+9.1%)、円安(+4.9%)という状況にある。

それにも関らずGPIFの運用資産額が2014年6月末とほぼ同水準に留まっているのは、GPIFが「資金流出主体(年金の掛け金収入より給付額が多い)」だからだ。昨年度、GPIFは納付金等で「年金特別会計」にネットで4兆3658億円を支払っている。

仮に金融市場で株安、円高が進んだ場合、GPIFの運用資産額は「運用損失」+「年金給付のための資金流出」のダブルで減少していくことになる。運用資産を減らさないためには「年金給付のための資金流出額」と同等以上の「運用収益」を確保する必要があるということ。

忘れてならないことは、投資理論上、リスク資産投資によって期待収益を得られる確率は、同額の損失を被る確率と同じだということだ。

「リスクを取れば高いリターンが得られる可能性が高まる」ことは声高に叫ばれているが、「高い損失を被る確率も同じだけ存在する」ことはほとんど語られることはない。

さらに、GPIFが「世界最大の運用資産を持つ機関投資家」であるということは、GPIFは「評価益を実現益に変えることが世界一難しい機関投資家」だということでもある。

例えGPIFが「世界最大の機関投資家」だとしても、年金給付のためにその資産を取り崩さざるを得ない「資金流出主体」である限り、GPIFが「株式市場を買い支える主体」にはなり得ない。むしろ、株式市場にとって「下押し主体」である。この辺りは「投資戦略フェアEXPO2016:セミナー『”Bye-bye-Abenomics”でどうなる?株式相場』」でも話しをしているので興味のある方はご覧頂きたい。

黒田日銀が追加緩和を見送ったことをきっかけに金融市場が混乱を見せたことから明らかなように、限界がある政策は、推し進めようとしても、引き返そうとしても市場に失望を与える運命にあることになる。

「マイナス金利付量的・質的金融緩和」に限界が見えて来ているのと同時に、「GPIFによる株価下支え」も限界に達して来ている。

ここに来て世界の金融市場がリスクオンとなっても取り残され、リスクオフになったら道連れにされるのは、日本固有の政策が「進むも地獄、戻るも地獄」という状況に達したからだ。

「異次元の金融緩和」「GPIFによる株価下支え」という誤った政策を続けて来たツケを、これから払わなければならない局面を迎えている。

覚悟しなければならないことは、「代案はない」ということだ。

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近藤駿介

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Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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