ホンマでっか?~ プット買いが「日経平均VI」を上昇させた?

「市場が予想する日経平均株価の変動率である『日経平均ボラティリティー・インデックス(日経平均VI)』は2日、終値が前週末比3.52ポイント高の31.07となり、3月9日以来、約2カ月ぶりの水準に上昇した。日銀が前週末に金融政策の現状維持を決めたことで急速に円高、株安が進行し、投資家の不安心理が高まった。
 2日は日経平均が一時700円近く下げ、1万6000円を取引時間中として約3週間ぶりに割り込む場面があった。一段の株価下落に備え、オプション市場でプット(売る権利)を買う動きが広がった。」(3日付日本経済新聞「日経平均VI 2ヶ月ぶり高さ」)

2日に日経平均株価が大幅に下落したことから、「プットオプションを買う動きが広がり」、「日経平均ボラティリティー・インデックス」が上昇したことが報じられている。

日経平均が大幅下落したことから、こうした報道は違和感なく受け止められるはずである。

しかし、公表されているデータを見ると、この報道は必ずしも正確だとはいえない。

日本経済新聞が公表している「日経平均オプション 総売買高」を見ると、2日のコールの総売買高は131,014枚、プットの総売買高は130,896枚と、僅か118枚の差ではあるが、コールがプットを上回っている。

確かに、「総建玉」は、コール1,057,044枚に対してプット1,172,710枚と、プットの方が115,666枚多い。しかし、プットの建玉残がコールの建玉残を上回る状態は、2014年11月から1年半も継続していること。さらに、前営業日と比較してみると、コールの残高は19,020枚増加しているのに対して、プットの残高は14,904枚の増加と、コールの方が4,116枚多くなっている。

記事では「プットオプションを買う動き」が広がったと報じられているが、公表されているデータを見る限り、それは必ずしも正確だとはいえない。

むしろ、一時的とはいえ16,000円割れを達成したこともあり、プットの買い手(実質的な売手)の方が慎重になって来ていることが見て取れる。

「相場」でオプション取引を行っている投資家は、3連休を前に、オプションの買い手は「時間的価値(Time Value)」の減価も考慮しなくてはならないので、5月限の決済日が迫る中で、方向性にある程度自信を持っていなければオプションを買い持ちして連休を迎えることはし難い。

プットの建玉残高増加数がコールのそれを下回ったのは、連休中のリバウンドに対するプット保有者側の警戒感が、コール保有者の期待感を上回ったからだとも言える。

また、2営業日連続で日経平均株価が大幅下落し、一時的に16,000円という節目を下回ったことで、プット投資家の利食いの機会の方が、コール投資家の利食いの機会が多かったことも、コール総建玉残高の増加数がプットのそれを上回る要因の一つだったとも言える。

このように考えると、総建玉残高の占める「意図せざる在庫」は、コールの方がプットより多いとも言える。

「恐怖指数」と正確とは言えない訳が付けられた「日経平均VI」が上昇したことで、市場では下値警戒感が強まっていると報じられている。

しかし、株式市場が2日で1,000円以上下落したことを考えると、「恐怖指数」が上昇するのは当たり前。問題は、どれだけ市場が下値リスクに対応しているのかというところ。

「『日経平均ボラティリティー・インデックス(日経平均VI)』は2日、終値が前週末比3.52ポイント高の31.07となり、3月9日以来、約2カ月ぶりの水準に上昇した」

注目するべきは「日経VI」が上昇したことではなく、「終値が前週末比3.52ポイント高の31.07」にとどまったことだ。

日本経済新聞が発表している「日経平均株価のヒストリカル・ボラティリティー(HV)」は32.4、小生が見ている25営業日ベースのHVは34.7%だ。

「日経平均HV」と「日経平均IV」の算出方法を比較すると、「日経平均IV」の方がビビットに反応するはずである。しかし、日経平均株価が5日連続安を記録し、2営業日で1,000円を上回る下落を記録した中で「日経平均HV>日経平均IV」に留まっていることは今後の市場を考える上で重要なポイントになる。

「時間的価値減少」というリスクを抱えながら「意図せざる在庫」として積み上がったコール残高と、日経平均が2営業日連続で大幅下落する中で余り積み上がらなかったプット残高。

こうした状況は、「上値を重く、下値を軽く」する方向に作用するものだといえる。

「オプション取引を理解すれば相場が分かる」という意見もあるが、経験上「オプション取引を知っている」だけではほとんど何の役にも立たない。重要なことは、「先物やオプション取引が現物市場とどのように繋がっているのかを理解する」ことだ。

これは、「鎌倉幕府スタート1192年」「関ヶ原の戦い1600年」という年号を覚えることが、歴史を学ぶことにはならないのと同じ理屈。

しかし、オプション取引や先物取引の本質を理解すれば、先物やオプション取引に関る統計などから、デリバティブ取引が現物株式市場にどのような影響を及ぼす可能性があるかを推察することが出来る。これは投資収益の最大化をもたらすものではないが、投資収益の安定化には大きく寄与するもの。

先物やオプション取引を理解するのは、複雑な理論や難しい数学を理解しなければならないという誤解が多い。しかし、これは完全な誤解。

先物やオプション取引を理解出来ない大きな理由の一つは、「相場」や「損益線」から考えようとしているからだ。こうしたアプローチを試みる限り、先物やオプション取引の本質を理解することは出来ない。もちろん「売買/取引」は出来るが。

先物やオプション取引を理解するのに必要な数学的知識は中学一年生までのものなので、興味のある方は是非アプローチ方法を変えてトライして貰いたい。そうすれば、先物、オプション取引を実際にやるかどうかとは関係なく、現物株式市場を多角的に見ることが出来るようになるはずだ。

そしてそれは、結果的に「収益の安定化」に貢献するものになる。

先物やオプション取引が現物株市場に及ぼす影響を分析するために必要な本質としての知識と、実際に筆者がプロのファンドマネージャーとしてどのような分析をしていたのかをお伝えする「元プロファンドマネージャーの多次元株式市場分析法講座」を、今月も5月21日(土)、28日(土)に2回開催します。

投資収益の安定化を目指す投資家、先物・オプションといったデリバティブ取引を理解したい投資家の方は、どちらか都合の良い方にご参加ください。詳細と申し込みはこちらから。

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