FRBのジレンマ ~ 前門の「トランプ」、後門の「資産バブル」

FRBはジレンマに陥ったかもしれない。

大統領選で、共和党の指名獲得を確実にしたトランプ氏が、最新の世論調査の平均値で、民主党のクリントン前国務長官を初めて上回り、「トランプ大統領誕生」があり得る話になってきた。

「トランプ大統領誕生」の現実性が高まってきたことによって、FRBは「利上げは経済指標次第」という従来の方針の変更し始めている可能性が高い。

FRBは政治的独立を保っているものの、トランプ氏が、大統領就任時にイエレンFRB議長交代の可能性に言及し、既に政治的圧力を加えていることを考えると、政治情勢を無視し得ない状況になっている。

現在世界で最も好調である米国経済の唯一の弱点は、ドル高、原油安を背景とした企業業績の鈍化。

ドル高と原油安という二つの足枷の内、原油安には歯止めが掛かって来ており、FRBも4月のFOMCでそれを認めている。

残されたリスクはドル高である。そしてこのことが、トランプ氏の「ドル高で米国の雇用が奪われている」という主張に説得力を持たせる一つの要因になっている。

イエレン議長が就任した2014年2月には、ほぼ80前後で推移していたドル指数は、2014年後半から上昇し、2015年1月には100を超える水準まで上昇した後、足下で95付近での推移となっている。

こうした中で「利上げは経済指標次第」という従来の方針を貫いて利上げに踏み切り、ドル高を招いた場合、トランプ候補に攻撃材料を与えることに繋がりかねない。

3月のFOMCからイエレンFRBが予想以上にハト派に転じ、4月11日に2014年11月以来1年半ぶりにオバマ大統領との非公式会談を行い、その直後の4月15日に米国のルー財務長官が「円相場は秩序的」と発言し、それ以降「競争的な通貨切り下げの回避」を繰り返しているのも、政治的にドル高を阻止しようとする力が高まって来ていることがあると思われる。

トランプ氏がヒラリー・クリントン氏の強力なライバルになって来たなかで、ドル高圧力を高めるFRBの利上げは、民主党にとって「敵に塩を送る」行為となりかねない。

そうだとすると、「利上げは経済指標次第」というのは、大統領選まで一時棚上げになった可能性が高いと考えた方が賢明かもしれない。

難しいのは、だからといって、FRBはそのことを明言するわけにはいかないところ。FRBに法定準備預金の約15倍にも達する資金が積まれている中で利上げ封印姿勢を明確にすれば、既に2007年末の水準まで回復している不動産価格をさらに押し上げてしまい、資産バブルを生じさせかねないからだ。

それゆえに、FRBは実際に利上げに踏み切る意思があるかないかに関らず、資産バブルを生じさせないためにタカ派的な発言をして利上げの可能性を市場に匂わし続ける必要がある。

しかし、こうしたタカ派的発言で利上げを意識させるということは、実際に利上げするか否かに関らずドル高圧力を強めるもの。

「資産バブル」を抑え込むためには「経済指標次第で利上げ」をしなければならないが、大統領選挙への影響を考えると、「経済指標次第で利上げ」には踏み込み難い。

「資産バブル」か「トランプ」か…。FRBはジレンマに陥っている。

イエレンFRB議長は、11月大統領選挙まで「資産バブル」が発生しないことを祈っているのかもしれない。

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