英国国民投票 ~ 「イベント」と「その後」を混同するなかれ

「ここ24時間で5つの世論調査が離脱派優勢 を示した」(Bloomberg)

英国で23日に実施されるEU離脱の是非を問う国民投票で、離脱派優勢が伝えられたこともあり、金融市場ではリスクオフの動きが強まって来ている。為替市場で対ドルで105円台半ばまで円高が進んだこともあり、日経平均株価も4日続落し、2か月ぶりに16,000円を割り込んだ。

「英国が欧州連合(EU)から離脱した場合、日本の国内総生産(GDP)を0.1~0.8%程度押し下げるとの試算をまとめた。英国の離脱が固まれば金融市場で円高・株安が進み、実体経済にも波及するという」(15日付日本経済新聞「GDP 0.1~0.8%下押し」)

国内大手シンクタンクは、「英国の離脱が固まれば金融市場で円高・株安が進む」という理由で日本経済にも大きな影響が及ぶとの試算を公表したと報じられている。

尤もらしい指摘ではあるが、こうしたことが直近の金融市場での「円高・株安」の原因であるわけでない。

重要なのは、足元の金融市場の動きは、「23日に英国で実施される国民投票」というイベントに備えたものであり、その先の経済状況の変化は織り込んでいるわけではないことだ。

何しろ国民投票でEU離脱が多数を占めたとしても、即離脱になるわけではなく、その先最低2年はかかるといわれている離脱交渉が始まるということで、イベント後を織り込むのは不可能に近い。

国民投票という政治的イベントと、英国がEU離脱に向かう際の経済への影響は、現時点では分けて考える必要がある。

国民投票というイベントに対しては、主要国の政策当局も、BOEとECBが資金供給を決めるなど市場の混乱に備え始めている。

注目されることは、離脱派が多数を占めポンドが売られた場合、介入が行われるかという点。

介入に関するキーワードは「秩序的」であるが、EU離脱という民意が示されることでポンドが急落するとしたら、それはEUという秩序が崩れることであるから、「秩序的でない」ということになるはずだ。

これまで米国は、「秩序的だ」という理由で日本の為替介入に釘を刺してきたが、言い換えれば「秩序的でなければ介入を認める」ということ。

5月から為替市場の動きが「秩序的」であるか否かで日米間で不協和音が生じていたが、英国のEU離脱に伴うポンド安という「秩序的でない」状況が起きることによって、日本は大手を振って「円売り介入」を実施する機会を得ることになる。こうした意味では日本にとって悪いことではない。

円高への対抗策として介入という選択肢があることを誇示したい日本にとって、英国のEU離脱を問う国民投票が、その機会を与えてくれる可能性があることは念頭に置いておいた方がよさそうだ。

昨日発表された10日時点での「裁定取引に伴う現物株買い残高」は9億5763万株と、数年ぶりに10億株を割込み、裁定買い残は枯渇水域に入ったといえる状況にある。裁定解消売りが相場の波乱要因になりにくくなっていることも念頭に置いておくべきだろう。

気を付けなければならないことは、今日と明日の二日間開かれる日銀金融政策決定会合で黒田日銀がフライングをしないことだ。

金融市場は英国の国民投票というイベントに向けて動いていること、万が一の場合に備えて政策当局は資金供給をすると同時に介入を含めた手段をとる可能性があること、裁定解消売りが相場の波乱要因になりにくい状況になってきていることなどを念頭に置いて、23日に向けての備えをする必要がありそうだ。


今日15日(水)19:15から新橋ビジネスフォーラムで開催する「【第2回】マーケットエコノミー研究会」では、日米の金融政策が「金融メカニズム」にどのような影響を及ぼしているかについてお話します。

ご興味のある方はイベントページをご覧の上、申込フォームからお申し込みください。

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