「出口」なき金融政策~世界一割高なJ-REITを購入し続ける日銀

「金融緩和の一環として、Jリート(不動産投資信託)を購入している日本銀行は、今やバチカン市国の最大約3倍の広さの不動産を間接保有する大家となっている。マイナス金利政策に伴う資金流入も相まって、Jリートを世界一割高な水準に押し上げている」(16日付Bloomberg「日銀が大家に、面積バチカンの最大3倍-Jリートは世界1の割高」)

金融政策の一環で年間約900億円のREIT買い入れを実施している日銀。REITの買入を始めたのは2010年12月。それ以来5年間REITの買い入れ限度額を、発行済み投資口総数の「5%以内」としていたが、昨年12月の日銀金融政策決定会合で限度額を「10%以内」に引き上げている。

5月に日銀が関東財務局に提出した大量保有報告書によると、5月時点で日銀の保有比率が5%を上回ってきているのは、ジャパンリアルエステイト投資法人 など13銘柄となっている。

「日銀は10年から金融緩和策の一環として、国債以外にも購入対象を広げ、Jリートの買い入れを始めた。現在は年間900億円のペースで買っており、5月末時点の購入残高は3159億円。同行金融市場局によると主要国の中央銀行でリートを買っているのは日銀だけという」(同Bloomberg)

「グローバリゼーション」という言葉が好きな日本だが、日本の中央銀行は主要国の中央銀行がやっていないREIT購入という「ガラパゴス政策」をとっているというのは笑い話。

「国際的に見ても、S&Pグローバル・マーケッツ・インテリジェンスによればJリート価格の純資産価値(NAV)に対するかい離幅は8日時点でプラス62%と世界一高い」(同)

世界一割高J-REIT(Bloomberg)

中央銀行がREITを購入することの異常さもさることながら、その保有規模に加え「世界一割高な水準に押し上げている」ことは信じがたいこと。

「短期金利の低下余地が限界的となっている状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するため、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促すこととし、臨時措置として、多様な資産の買入れと固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを行うための基金をバランスシート上に創設する」(2010年10月28日日銀「当面の金融政策運営について」)

日銀は2010年10月にJ-REIT購入を決定した際、その目的を「各種リスク・プレミアムの縮小を促す」だと説明している。

「東証REIT指数は安倍政権が発足した2012年12月以降に上昇傾向を強め、昨年1月には2005と発足前に比べ8割上昇した」(同Bloomberg)

2013年4月から始まった異次元の金融緩和でJ-REITの購入枠が年間300億円まで拡大(現在は年間900億円まで再拡大)されてから、東証REIT指数が8割上昇し、「世界一割高」になったということは、少なくともJ-REITに関しては「リスク・プレミアムの縮小」という日銀の目標は十分に果たされたといえる。

そして「世界一割高」になっているということは、J-REITを購入する投資家は必要以上のリスクを押付けられていることでもある。「リスク・プレミアムの縮小」を目的にスタートした日銀によるJ-REIT購入は、今や投資家に必要以上のリスクを押付ける政策に成り下がっている。

しかし、こうした「ガラパゴス政策」の恐ろしいところは、止めることが出来ないところ。

日銀が「世界一割高」になったJ-REITを購入し続けるのは、REITは収益のほとんどを投資家に分配することで二重課税を回避しているため、内部留保を貯めることが出来ないからだ。内部留保を貯められないということは、収益を新たな投資に回せない(自己成長できない)ということ。

それゆえにREITは成長のために新たな投資を行う際には、増資や投資法人債という外部からの資金調達が必要となる。そして、増資で資金を調達する場合に重要なことは株価が上昇していること。株価が下落する中での増資は、既存株主の持ち分の希薄化を招くことになるからだ。

株価が下がることでREITが新たな物件に投資できなくなるということは、不動産投資自体を滞らせかねない。東京では新築ビルの建設や開発が続いているが、それを資金面で支えているのは不動産ファンドだからだ。

不動産ファンドの資金によって作られた大型ビルの多くが、最終的にJ-REITに流れて行くというのが一般的なルートである。したがって、J-REITが常に新規物件の購入資金調達が可能な状態を維持しなければ、不動産開発そのものが停滞しかねない仕組みになっているのだ。

マイナス金利での国債購入と同じで、J-REITも「世界一割高」になっても日銀は購入を止めることが難しい。「世界一割高なJ-REIT」や「マイナス金利での国債」を購入出来るのは中央銀行以外に存在しないので、購入を止めた途端好循環が止まってしまうからだ。

止めることのできない金融政策を続ける日銀の金融政策には「出口」はない。あるのは「出口」でなく「破壊」でしかないというのが現実である。国民に残された選択肢は、「破壊」を今起こすか、将来まで先送りするかだけだ。しかし、先送りすればするほど「破壊規模」は大きくなる宿命にある。



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