量的緩和が生んだあだ花

予想されていたことではあるが、「有言実行内閣」は動かなかった。「82円が防衛ライン」と明言した政府は、何もしないまま81円台という為替水準を容認したようだ。それと共に、日本の為替介入に関して、G7では理解を得られなかったことを暗に認めた格好となった。日本は、何もしない「有言実行内閣」がもたらした「通貨安戦争の敗者」という看板を背負って、国際協調が難しい激動の経済を乗り越えて行かなくてはならなくなった。

直近の円高は、円が「ファイナンス通貨(調達通貨)」であったことに起因していたリーマンショック時の円高と、大分趣が異なって来ている。リーマンショック時の円高は、「円調達+海外リスク資産運用」という大規模な「円キャリートレード」ポジションが積み上げられた後、リスク資産の急落を受けて、「ファイナンス通貨」の返済によってもたらされたものである。
これに対して足下の円高は、米国を中心に先進国が揃って「量的緩和」に乗り出していることによる「金余り」が大きな原因となっている。大量に金融市場に送り込まれた余剰資金は、商品市場や新興国株式市場という小規模な市場だけでは吸収しきれず、この余った資金が、「通貨安戦争の敗者」である円に流れ込み、円高を演出している。ファンダメンタルズを必ずしも反映していないと言われる今回の円高は、「量的緩和が生んだあだ花」でもある。

ここに来て「金余り」は、円高だけでなく、他の市場でもファンダメンタルズから乖離した様な動きを生み出し始めている。昨日のNY株式市場は、バンクホリデーであったこともあり、小動きに終始した。その中、S&P500種の通信サービス株指数は0.3%高と、業種別10指数の値上がり率トップとなった。高い利回りを求める動きから、業績見通しが振るわないにもかかわらず、電話株は7年ぶりの大幅上昇となっている。
さらには原油価格も、米国経済の失速が叫ばれ、在庫が3億6000万バレルと83年以降の平均水準である3億2700万バレルを大きく上回っているにも関わらず、ここに来て80$台での推移となっている。

金融市場で散見され始めたファンダメンタルズから乖離した様な動き。こうした動きは、今回の「金余り」によってバブルが醸成され始めていることを感じさせるもの。バブルは時として価格上昇の「速度」を速めるものである。従って、今後は市場価格の「水準」だけでなく、「速度」にも注目する必要がある。そして、「金余り」によって演出されたバブルが終焉を迎える段階では、為替市場ではリーマンショック時とは異なり、介入なしに「円安」に振れることになりそうだ。

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

入会キャンペーン 実施中!

メルマガのお知らせ

著書

アラフォー独身崖っぷちOL投資について勉強する

Anotherstage LLC

金融に関する知見を通して皆様の新しいステージ作りを応援

FC2ブログランキング

クリックをお願いします。

FC2カウンター

近藤駿介 facebook

Recommend

お子様から大人まで
町田市成瀬駅徒歩6分のピアノ教室

全記事表示リンク

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR