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パウエル議長が言及した「日本から得た教訓」

「米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は11日、米上院銀行委員会での議会証言で「2%の物価上昇率を大きく下回りたくない。後手に回らないようにするのが、日本から得た教訓だ」と述べた。米経済の物価停滞を懸念して、早期の利下げに改めて意欲をみせた発言だ」(12日付日経電子版~FRB議長「日本を教訓、後手に回らぬ」 利下げ意欲

パウエルFRB議長の発した「日本から得た教訓だ」という表現を金融市場は金融緩和が遅れるリスク(Behind the curve)を避けようとしていると受け取り、NYダウは史上最高値を更新した。

「日本から得た教訓」という表現は、現在の金融市場では「Behind the curveのリスクを避けるための金融緩和」という意味で使われている。

日銀は2001年3月に世界に先駆けてゼロ金利と非伝統的金融政策である量的緩和を取り入れた。その後2006年3月に一旦ゼロ金利政策と量的緩和をやめたが、リーマンショック後の2008年11月からもう10年以上もゼロ金利政策と量的緩和政策を続けてきている。さらに2013年4月からは「異次元の金融緩和」、2016年1月からは「マイナス金利政策」を採用している。

こうした事実からすると、日銀の政策が「Behind the curve」であったとは言い切れない。つまり、「日本から得た教訓」という表現を「Behind the curveのリスクを避けるための金融緩和」という意味で使うことには若干の違和感がある。「Behind the curve」によってデフレが進んだのではなく、デフレに対して金融緩和が何の効果も発揮しなかった可能性があるからだ。

忘れてならないのは、もう一つ日銀が世界に与えた「教訓」の存在である。

それは、1980年代末に金融緩和を続け過ぎてしまったことで、過大なバブルを生み、その崩壊によって「失われた20年(25年)」を招いてしまったこと。

(1989年に向けてバブルを生み、翌年破裂させたのが金融政策であったか疑わしいことに関しては、拙著「1989年、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実」を参照されたし)

こちらの教訓は、グリーンスパン元FRB議長が金融緩和を必要以上に長く続けたことでリーマンショックを招いたという「FRBの教訓」と共通のもの。

FRBによる金融緩和期待を背景に米国株式市場は史上最高値を更新してきている。その一方、米国のインフレ率はFRBの目標である2%を依然として下回っている。

この30年、日銀は「デフレの危機」と「バブル発生がもたらす危機」の両方で世界経済に「教訓」を与えてきた。

勿論パウエルFRB議長が今回「日本から得られた教訓」という言葉を使ったのは「Behind the curveのリスクを避けるための金融緩和」という意味であることはほぼ間違いない。

足元の金融市場が内包する最大のリスクは、「日本から得た教訓」という言葉から「バブルを発生もたらす危機」を連想する人がほとんどいなくなってきていることかもしれない。

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近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

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著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

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