短期金融市場の未発達により2兎追うことが難しい経済大国

タイミング的にやや意外感のあった中国利上げ後の金融市場は、上海株式市場が続落するなど、中国と香港株式市場に影響を及ぼしたものの、金融市場全体に対する影響は軽微なものに留まった。

世界経済の牽引役と目されている中国での利上げの影響が殆ど出なかったということは、金融市場が不安を抱きながらも米国を中心に先進国の景気に対する信頼感が以前より増して来ていることの証し。
一方、金融市場が先進国経済に対する不安を払拭出来ずにいることは金価格の上昇に現れている。ドル、ユーロ、円の基軸通貨がそれぞれに不安要因を抱えていることで為替市場では「目くそ鼻くそ相場」が繰り返されており、こうした基軸通貨に対する信頼感の絶対水準の低下が代替資産としての金の価格を押し上げている格好。

中国利上げが金融市場に大きな影響を及ぼさなかったもう一つの無視し得ない理由は、中国利上げが即流動性低下に繋がらないということ。経済大国中国経済の特徴は、企業や政府機関による返済期限が270日以内の短期のCPの発行が昨日ようやく解禁されたことにも表れている様に、短期金融市場の整備が遅れていること。短期金融市場が未発達であるが故に、利上げに引き寄せられたホットマネーはそのまま金融市場に滞留し、結果として利上げが流動性の低下に繋がり難くなっている。中国の利上げが金融市場全体としての流動性に大きな変化を及ぼさないことが、金融市場を支えている格好。

準備預金率の引き上げによる流動性吸収にも限界が見え始めた状況では、利上げが流動性低下に繋がるのは、預金金利の実質マイナス金利状態が解消されてからである。CPIが足下で5.1%、政府目標で4%であることを考えると、足下2.75%である1年物預金金利が4%程度にまで引き上げられないと、本格的な流動性吸収は難しい。ということは、中国政策当局に過剰流動性を解消する意思があるならば、少なくとも後1.25%程度は引き上げなければならない。現在導入されている金融機関の貸出利鞘を3%程度確保するという金融機関優遇政策を中国が維持する限り、あと1.25%程度の利上げが実施される可能性は高い。

介入資金の不胎化が難しいことを考えると、「適度に緩和的」から「穏健」に完全に舵を切った中国は、ホットマネー流入による元高をある程度容認せざるを得ない。実際に中国人民銀行は29日の中間値(基準値)を、前日比0.01%高の1ドル=6.6247元と小幅元高水準に設定。同日の上海外国為替市場では、人民元相場の終値が前日比0.05%高の1ドル=6.6212元と2日連続で2005年7月の元切り上げ以降の終値ベースでの最高値を更新した。
経済大国となった中国も、短期金融市場の整備が自らの経済成長に追い付いていないが為に、「インフレ抑制」と「元レートの維持」という2兎を追うことは出来なくなって来ている。「異様なほど不確か(unusually uncertain)」な経済環境の中で、「元高」が最も確からしいことになって来た。







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近藤駿介

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