「エネルギー価格の上昇を背景としたインフレ」によって風向きが変わりつつある金融市場

少しずつ風向きが変わりつつあるのかもしれない。この1週間は、政策当局者からこれまでとは若干異なった発言が相次いだ。

バーナンキFRB議長は13日、失業率を望ましい水準へ低下させるには不十分との見解を示したものの、デフレリスクがここ数カ月間で後退したとの認識を示し、「労働市場の一部改善を目にしている。デフレリスクがこれまでに大きく後退したことから、われわれは正しい方向に向かっていると言える」と述べた。
バーナンキ議長はまた「2011年の成長率が3─4%となることは理にかなっているようにみえる」と述べ、FRBの昨年11月時点の米経済成長率予測3─3.6%を、やや上方修正したことを示唆した。
その後米労働省が発表した12月の消費者物価指数(CPI)統計によると、前年同月比では総合指数は1.5%、コア指数は0.8%上昇と、ともに統計が開始された1958年以降で最も低い伸びとなったものの、ガソリン価格の急上昇もあり前月比では総合指数は0.5%上昇と、市場予想の0.4%上昇を上回り、1年半ぶりの高い伸びとなった。これはバーナンキFRB議長の「デフレリスクがこれまでに大きく後退した」という発言を裏付けるもの。

一方、欧州中央銀行(ECB)は13日、主要政策金利を過去最低の1.00%に据え置いた。同時にトリシェ総裁は、物価動向に関する中期的な見通しへのリスクは依然としておおむね均衡しているとした上で「上向きに動く可能性がある」と指摘、注視していく考えを明らかにした。
12月のEU(欧州連合)基準消費者物価指数(CPI)速報値は前年比で2.2%上昇し、2年ぶりにECBが目標とする2%弱を上回ったことを受けての発言。

こうした欧米の政策当局者の発言に、中国が20日から準備預金率を0.5%引き上げることを発表したことも考え併せると、世界の政策当局の優先課題は、「先進国のデフレ、新興国のインフレ」という構図から、「先進国、新興国共にインフレ」へと変化して来たようである。
これは、世界的に「過剰流動性」の副作用である「エネルギー価格の上昇を背景としたインフレ」を無視し得なくなって来たことを示唆するもの。欧米共に雇用回復を伴わないインフレは、国民生活に悪影響を及ぼすことになる。そしてこれは、政治的な不安定と長期金利の上昇(イールドカーブのスティープ化)を通して、各国の財政再建にも影響を及ぼしかねない。
「回復までに4‐5年かかる」という雇用情勢を優先して「過剰流動性」を維持するのか、「エネルギー価格の上昇を背景としたインフレ」懸念に歯止めを掛けるべく「出口戦略」を探るのか、足下の経済はその分岐点に差し掛かって来たようだ。

QE2が6月で期限を迎えること、FOMCで投票権を持つ理事の入替でQE2に懐疑的なメンバーが増えることなど、金融市場は「出口戦略」の行方に神経質にならざるを得ない状況にある。こうした状況下での、元来インフレファイターである欧州のトリシェ総裁の発言は、欧州が米国に先んじて「出口戦略」を探る可能性があることを感じさせるもので、金融市場はこれまで以上に「出口電略」の行方に神経質になるだろう。欧米の金融政策にズレが生じた際の再度のドル安などの影響を考えると、FRBは単純にQE2の延長には踏み切れない可能性は低くない。

こうしたことに配慮したのか、ガイトナー米財務長官は14日、「人民元相場は(中国当局が人民元相場の柔軟性を高める政策を表明した)昨年6月から対米ドルで約3%上昇している。年率にすると約6%、もしくは7横8%になる」と述べ、中国人民元相場はすでに実質的に大幅に上昇しているとの認識を示し、中国の胡錦濤国家主席の来週の訪米を前に、米政府が人民元相場の急速な上昇を中国に対し強く迫る意向を持っていないことを示唆した。こうしたこれまでとは異なる発言は、米国が再度のドル安に懸念を抱いていることを感じさせるものである。その背景に「エネルギー価格の上昇を背景としたインフレ」があることは間違いない。

世界の政策当局は、「エネルギー価格の上昇を背景としたインフレ」に対応を迫られて来ている。株価上昇による「資産効果」を消すことなく、エネルギー価格の上昇だけに歯止めを掛けることが出来るのか。欧米の政策当局は今まで以上に慎重な金融政策を求められることになりそうだ。もし彼らが市場との対話を上手く進められないとしたら、自国で何の主体的政策対応も出来ない国の通貨は、「最も安全な通貨」として再度注目されることになるかもしれない。
 



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