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テスラ投資判断誤り ~ 投資判断がアナリスト本来の役割なのか?

「米テスラに対する弱気姿勢を長く貫いてきたRBCキャピタル・マーケッツはこれまでの判断が誤りだったと認め、投資判断を引き上げた」(8日付Bloomberg 「テスラ弱気派が投資判断引き上げ-RBCアナリスト「完全に誤った」」

そもそも「投資判断」をすることがアナリストの仕事なのかという視点が重要。

80年代から運用業界に身を置いている人間として強く感じていることは、90年前後からアナリストが「投資判断」を始め、その精度で評価されることになったことで、アナリストレポートの大半が投資判断の正当化するための単なるバイアスのかかったセールス資料に成り下がってしまったことである(これはそれ以前のアナリストレポートの質が高かったこととは全く違う)。

「投資判断」を下すのはファンドマネージャーの仕事で、アナリストの仕事ではない。何故なら、運用資産の種類や目標リターン、期間などによって適正株価は変わってくるからだ。

運用目標も資金量も期間もバラバラの全ての投資家に共通した適正化価格、目標株価などは存在するはずはない。もしそうした株価が存在するのであれば、それよりも高く買う投資家も、それより安く売る投資家もいなくなるので、市場から株価、或いは株価変動が消えるはずである。

日本でも今やアナリストが「投資判断」をするのが当たり前となっており、その判断の正しさがアナリストの能力を計る基準になってしまっている。

企業を分析するはずのアナリストが「投資判断」の正確性を追求し、パフォーマンスを追求するはずのファンドマネージャーが「自己責任原則」「BM比較の相対パフォーマンス」という錦の御旗を掲げて損益責任を投資家に押し付ける現在の構図は異様なものである。

日本でアナリストが「投資判断」をするようになったのは90年代前半からである。当時野村アセットから野村総合研究所(NRI)に出向になっていた小生は、NRIが外資系証券会社に追随してアナリストによる「投資判断」を始めるかについて話し合う会議に呼ばれたことがある。運用会社から出向していた小生からみてアナリストによる「投資判断」がどのように映るのか意見を聞きたいという名目だった。

当然その席上で小生は反対意見を述べた。しかし、反対意見を述べると、会議に参加していた取締役の一人から「誰がお前の意見何かを聞くもんか」という罵声が飛んできた。意見を求められて発言しただけだったのに。それ以降もこの会議は数回開かれたようだったが、小生は二度と呼ばれなくなった。

そして間もなく日本でもアナリストによる「投資判断」提供が始まり、それが当たり前になって行った。

3年間の出向期間を終えてファンドマネージャーとして運用会社に戻った小生のもとには各社から多数のアナリストレポートが届けられ、机の上に山積みされていた。

当然全てのレポートに目を通す時間はないため、レポートの初めに「『強気』の投資判断継続を確認した」といった「投資判断」を前面に押し出すようなレポートは即ゴミ箱行きにした。その結果、95%のアナリストレポートはゴミ箱行きとなり、机に山積みにされていくのを防げることになった。

NRIを始めとした研究所のおかしなところは、アナリストによる企業収益の正確性を前提にした投資判断を売りにしておきながら、同時に市場全体の見通しにはディビジョンインデックス(アナリスト予想が上方修正された銘柄数の比率から下方修正された銘柄数の比率を差し引いて算出される指数)というアナリスト予想の不確実性も売りにしているところ。

正確性を売っているのか、不確実性を売っているのか全く分からない。確かにディビジョンインデックスというのは一般人の気持ちの揺れを計るにはいい指数だといえるが。

テスラに対する弱気判断が間違っていたわけではない。アナリストが投資判断をすることが根本的におかしなことなのだ。

アナリストが投資判断をすることで、運用業界は全員がボールを追いかけゴール前に殺到する幼稚園のサッカーチームのようになっている。点を取るのはフォワード(ファンドマネージャー)の仕事であり、アナリストの本題の仕事はボランチのようなものであるはずだ。全員が点を取りにゴール前に殺到して試合に勝てるわけはない。

アナリストはフォワードであるファンドマネージャーが得点する機会を増やすボランチ的な役割を果たすという本来の姿に早く戻ってもらいたいものだ。
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近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

著書

202X 金融資産消滅

著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

著書

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