2023/01/17
行き詰る YCC ~ 「誤った方針の転換には多額のコストを払う必要がある」という「運用の鉄則」
「日本銀行のイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の下で日本国債の流動性が一段と低下した場合、将来的に日本国債投資から手を引かざるを得ない可能性があるとの考えを示した」(17日付Bloomberg 「将来に日本国債除外も、流動性一段低下なら-米運用大手アライアンス」)運用する立場からはこうした動きが出てくることは当然のこと。日銀が10年国債の利回りを抑え込むことでイールドカーブが歪むということだけでなく、日銀の保有比率が50%を超えるという異常事態が日本国債の利回り全体を歪めているからだ。
1990年代の日本株式市場では金融機関を中心とした持合い構造が株価を歪めているという問題が指摘され、東証が2006年までに東証株価指数(TOPIX)を時価総額加重平均型株価指数から浮動株基準株価指数へ修正した歴史がある。
こうした歴史をみるまでもなく、国債市場でも国債運用のベンチマークとなるインデックスは日銀保有分を控除した流通時価総額で算出しようという意見が出てくるのは自然の流れ。
日銀保有分を控除した流通時価総額に基づいてインデックスを算出することになれば、インデックスの日本国債構成比率は半分以下になる。それは海外投資家の日本国債投資額が半減することを意味する。
そしてそれは日本国債の利回りを上昇要因になる。日銀が利回り上昇を防ぐために国債の買い入れ金額を増やせば流通時価総額を減らし、インデックスの日本国債構成比率をさらに引き下げる。それは海外投資家の日本国債売りを誘発し、さらなる金利上昇圧力となる。もうYCC継続など無理な話。
また、海外投資家による日本国債離れは財務省が長年進めて来た「保有者層の多様化」に逆行するもの。
日銀がYCCという下らない政策に固執すればするほど海外投資家の日本国債圧力を高め、財務省が長年取り組んできた「保有者層の多様化」政策を水泡に帰することになる。日銀のYCCを続けるのであれば財務省が「保有者層の多様化」を諦めなくてはならないし、財務省の「保有者層の多様化」を進めるためには日銀がYCCを諦めるしかない。日銀と財務省がともに Happy にはなれない状況にある。
総裁任期満了を契機に、まず意味のない異次元の金融緩和、YCC政策からの脱却を決断し、その退却方法を議論する段階に来ている。
「誤った方針の転換には多額のコストを払う必要がある」というのが「運用の鉄則」。だからこそ投資家は誤った投資判断をしないように細心の注意と客観的分析に労力を割いている。コストを払わずに方針転換できるのは金融市場を外から眺めている学者やエコノミストだということを肝に銘じた方がいい。
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