2023/02/14
的外れな「仕組債販売自主ルール」
「今後の販売には投資経験や保有資産全体の余裕度合いなど条件を満たすよう求める」(13日付日経電子版「仕組み債販売、知識・資産額を条件に トラブル続出で」)投資家の知識と経験、保有資産にスポットをあてた自主ルールに意味があるだろうか。免許を持っていないタクシー運転手に乗客は富裕層に限定せよと言っているようなもの。
目を向けなければならないのは仕組債の販売会社に仕組債を理解している人間がほとんどいない現実。販売会社の人間が知っているのは仕組債のセールストークだけといっても過言ではない。こうした自主ルールを作るということは、協会の人間のほとんどが仕組債を理解していないことの露呈するものでもある。
筆者は自分で投資するための仕組債を外資系投資銀行と一緒に何本も組成したが、交渉相手は営業マンではなく商品組成部隊。何故なら営業マンのほとんどは仕組債を組成するほどの金融知識を持っていないから。営業マンはセールスが本職で商品組成は専門外だからそれが悪いわけではない。筆者の担当営業マンは十分そのことを理解していたので組成部隊を連れて来て直接交渉の場を設けていた。営業マンの主な仕事は仕組債組成に伴って生じる収益に関する営業部門と商品部門の分配比率の調整。
プロ同士の交渉になると仕組債を組成・販売する投資銀行の抜き代は限られたものになる。個人投資家向け商品の数分の1程度。投資家がプロになれば販売会社が勧める商品をそのまま素直に購入することはなくなるので、自主ルールの基準を投資家サイドに求めても余り意味はない。買うのは素人に限定されるのだから。
商品組成の難しいところは、投資銀行サイドに収益機会を与えないと投資家サイドも投資したい商品を組成できなくなり狙った収益を得る機会を得られなくなるところ。どちらか一方が自分の利益、自分のリスクを主張し過ぎると、両者ともに収益機会を失う結果になる。
数年前のことだが、小生の知らない間に独り暮らしをしている義母に日経リンク債を買わせた証券会社があった。幸い株価上昇によって繰り上げ償還されたので損失は出なかった。
それを機に義母とは金融商品のセールスを受けたら「婿を説得出来たら購入する」という自主ルールを設定。それ以降今までのところ一人のチャレンジャーも現れない。
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