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SVB破綻 ~ FRBのインフレ見通しの誤りが招いた高いツケ

「新型コロナウイルスに対応した金融緩和下、米テック産業は資金調達を急増させた。その資金を預金として集め債券運用に充てたのがSVBだ。インフレ退治の金融引き締めでベンチャー企業はキャッシュが流出し、SVBも預金の減少と金利上昇による債券含み損を抱える逆回転となった」(13日付日経電子版 「テック・金融が負の共振 米、SVBなど2行の全預金保護」

コロナでリモートワークが増えるという追い風によって資金調達環境が好転したのをうけ、ハイテク企業が経済活動停止リスクに備えてサバイバル資金を確保に動いたというのは企業行動として理に適ったもの。

問題はこうした経済下で集まった資金を金融機関が長期国債やMBS投資に振り向けたこと。金融機関がコロナ経済を乗り切るための足の短い資金だと認識していたら流動性の高い短期資産に資金を振り分けるのがALM(Asset Liability Management)上のセオリー。

それにもかかわらずALM上のセオリーに反して長期国債やMBSに投資をしたのは、FRBの利上げを想定していなかったから。記事に添付されているチャートを見る限りFRBが「インフレは一時的」という見解を撤回する21年秋頃までSVBの預金は増え続けている。22年夏までは順イールドだったので、短期調達&長期運用というビジネスモデルで成り立っている銀行にとって集まった資金を長期債に投資をするのは資金運用上当然のこと。

このように考えるとFRBが「インフレ見通しを間違った」ことの罪深さがわかる。

こうした中2月1日に「ディスインフレのプロセスが始まった」と語ったパウエルFRB議長が先週の議会証言で「利上げペースを高める用意がある」と180度異なる方針を表明したことは大きな不安材料。

FRBのインフレ見通しの誤りの余震はまだ続く可能性があるからだ。一方、今回のSVBの件でFRBが再び利上げペースを落とすことになれば、FRBに対する信頼感が揺らぎ、市場はリスクを取り難くなる。どちらにしても中央銀行の判断ミスが金融経済に強い影響を及ぼす好例。

FRBに対する信頼が薄れるなか、黒田体制下で10年近く誤った金融政策を漫然と続けて来たという国内要因を持つ日本がどのくらいのツケを払わされることになるのだろうか。黒田日銀が積み上げて来たのツケは新総裁指名でチャラにはできないところが苦しいところ。植田新総裁は嵐の中での船出を余儀なくされることは必至。おそらくじっくり考えている時間はない。
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近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

著書

202X 金融資産消滅

著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

著書

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