大きく変化した世界経済の構図

ポルトガル政府がEU(欧州連合)に金融支援を要請した翌日、ECBは予想通り0.25%の利上げに踏み切った。ECBの利上げは2008年7月以来。トリシェECB総裁は、政策決定後の記者会見で「我々はこれが一連の利上げの第1回だと決めたわけではない」とした上で、「今後も物価安定のために適正な行動を続ける」と表明。改めて「インフレ抑制」に対する強い意思を示すと共に、継続的な利上げに関しては含みを残した。

ユーロ圏内の小国ポルトガル(2009年名目GDP世界第35位:スペイン第9位、ギリシャ27位、アイルランド38位)が、財政赤字と経常赤字と言う「双子の赤字」に苦しみ、金融支援を要請する中でのECBの利上げは、一見矛盾した行動に見える。しかし、EUにとっての最大の課題は「資金調達」である、と考えると、ECBの利上げは必ずしも矛盾した行動とは言えない。
「双子の赤字」を抱える国の大きな問題は「通貨安」である。「通貨安」は「資金調達」を難しくする上、外貨の調達が出来たとしても、返済額の増加を通して将来の財政再建の大きな足枷になる。

ポルトガルにとって幸いなことは、「双子の赤字」と「調達通貨」が切り離されていることである。「双子の赤字」を抱える国の通貨を切り上げることは難しくても、地域全体としては景気回復基調にあるEUの通貨ユーロなら、金融政策によって「通貨高」を演出可能だからだ。
EUがポルトガルの金融支援に応じざるを得ないと考えているのであれば、そのコストを少しでも安くする方策を打つのは当然のこと。将来に渡ってユーロ高を演出出来るかは「神のみぞ知る」という世界になるが、利上げによってユーロ高を演出出来れば、必要な「資金調達」に支障を来すリスクを軽減することになる。「インフレ抑制」を前面に押し出したECBの利上げの陰には、「資金調達」という欧州の事情も透けて見える。

その背景は別として、ECBの利上げは、昨年後半から続いて来た「利上げを続ける新興国と金融緩和を続ける先進国」という世界経済の構図を変える大きな出来事である。今回利上げを見送ったが、英国やスイス等潜在的な利上げ国がある上、米国のQE2は予定通り今年の6月を以て終了となると目されている。
欧米が利上げ、或いは過剰な金融緩和からの出口を模索する一方、日本では白川日銀総裁が国内景気について「(東日本大震災の影響で)下押し圧力が強い」との認識を示すと同時に、当面金融緩和を続ける姿勢を明確にした。これにより、暫くの間世界経済の構図は「新興国も先進国も金融引締めexcept Japan」という色彩を強めて行くことが明白になった。

これまでは、「異様な程不確か」と言える経済状況の中で「確からしいこと」といえば、「中国の元が切り上がる」こと位であった。しかし、今回「日本の金融政策は当面緩和的である」という一項目が「確からしいこと」に追加された格好になった。このことは、キャリートレードを行う投資家(投機家)にとって、円が再び(利上げの確率が極めて低い)「最も安全な通貨」としての魅力を高めたことを意味する。

2010年は、世界の主要国が「自国通貨安による景気回復」を目指した年であった。しかし、その副作用として原油を筆頭とした一次産品の値上がりによるインフレ懸念が顕在化したことで、直近では多くの国が「自国通貨高によるインフレ抑制」を目指すようになって来ている。
投資家に必要なことは、主要国が「自国通貨安による景気回復」を目指した昨年の残像を取り払うことである。




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近藤駿介

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