「噂」と「事実」、そして「本音」

Buy the rumor, sell the fact(噂で買い、事実で売る)。
この相場の格言に従えば、今月のECB理事会での利上げ観測を受けて上昇して来たユーロは、利上げ発表後に利食い売りに押されても不思議ではない筈だった。しかし、実際のユーロ相場の動きは、日本での強い余震発生の報道を受けて一時的に円買いが進んだものの、直ぐに反発し、対円では11カ月ぶりの123円台、対米ドルで1年3ヵ月ぶり高値となる1.4422ドル迄上昇した。
米国に先駆けてECB(欧州)の政策金利が引き上げられたのは40年ぶりという珍しいことの様だが、エコノミスト全員の予想が的中した今回のECBの利上げは、既に「噂」の域を超えていたということのようである。

世界では、連日要人からの興味深い発言が続いている。
米国クリーブランド連邦準備銀行のピアナルト総裁は、7日のローマでの講演の中で、米国の金融政策について「経済成長と物価の見通しから考えて、FRBの米長期国債購入(QE2)は6月に予定通り終了し、超低金利をしばらくの間維持するのが適当」と述べた。「中立派」と目されているピアナルト総裁による「QE2を期限通りに終了し、金利の引上げは当面見送る」という「タカ派」「ハト派」両方の主張を取り入れた今回の発言は、恐らく現時点でのFOMCメンバーの意見の最大公約数であり、FOMCの落とし所だと思われる。

一方欧州では、8日、トリシェECB総裁が欧州連合(EU)の財務相および中央銀行総裁会合での記者会見で「ドルが強い通貨であることは重要」と発言。「私は常に、米国の当局や幹部、中央銀行による強いドルは国益にかなうとの表明を非常に高く評価している」と述べた。40年ぶりに米国に先駆けて利上げに動き、金利差拡大に伴うユーロ高を演出したECBの総裁が、その翌日に「強いドル」を標榜するというのは、一見矛盾したもの。

こうした矛盾するかのような発言から想像されることは、ECBの本音が「強いユーロ」を望んでいるが、「弱いドル」は望んでいないということである。それは、多くの資源価格がドル表示になっているからだ。
原油は1バレル=110$を突破したが、これは原油にスポットを当てれば「原油高」であるが、ドルにスポットを当てれば「ドル安」とも言える。価格がドル表示である限り、例え原油の本質的価値(その存在は不明だが)が変わらなくても、ドルが安くなればその分ドル表示の原油価格が上がるのは当然のこと。ドルは円に対しては85円台と「ドル高円安」に転じて来ているが、為替市場でのドル安傾向は続いており、主要6通貨に対するドル指数は75ポイント程度と、昨年11月のQE2スタート時点を下回り、2009年12月以来の水準まで下落(ドル安)して来ている。円に対してドルが上昇しているのは、現在円が最弱通貨であるからだ。

「資金調達」の面では「ユーロ高」を演出する必要性はあるものの、EU内での経済格差の拡大による「ユーロ崩壊の危機」は絶対に防ぎたいECBにとって、過度な金融引き締めは出来れば避けたい政策の筈である。その為には、資源価格の上昇によるインフレ圧力は抑制しなくてはならない。その為にはドル安傾向に歯止めを掛ける必要がある。しかし、ECBにとって自らの通貨であるユーロはある程度コントロール可能だが、ユーロ高を保ちつつドル高を演出することは不可能である。
今回のトリシェECB総裁の矛盾した様な発言は、資源価格の上昇の要因にもなっているドル安に歯止めを掛けたいというECBの本音を示唆したものであろう。そして、前回の対円での協調介入における積極姿勢を併せて考えると、ECBが描く理想像は、「ユーロ>ドル>円」というものだと思われる。

金融政策だけでなく、政治面でも注目される発言があった。韓国の金滉植首相は7日の国会答弁で、福島第1原発から放射性物質を含む水が海に放出される際、日本政府から事前連絡がなかったのは「韓国の外交的な無能ぶりを示したもの」との批判に対し、「『韓国ではなく日本が無能だ』と言いたい」と答えた。これに対して日本の松本外相は記者会見で、金滉植首相の発言は、「日本政府や日本自体が無能という趣旨でコメントしたとは理解していないし、そうだと(韓国側に)確認している」と述べ、問題視しない考えを示した。

現状こうした発言を日本が外交問題にしない(出来ない)のは当然だが、政府は金首相の発言は国際社会の本音であると真摯に受け取るべきである。原発事故発生以来、菅首相は自分に都合の良い時以外は引き籠りを続けている、そして国民の関心が原発事故に向いているなか、自らの資金管理団体「草志会」が在日韓国人系金融機関の元男性理事から受けていた献金104万円を、男性が韓国籍であると確認した上で、原発事故発生直後の先月14日に全額返却するような姑息な行動をしている。首相として原発事故の対応に全知全能を傾けなくてはならない時期に、菅首相は保身作業に精を出していたのである。このような人物が首相を務めているのでは、海外から「日本が無能だ」と言われるのは当然のこと。

この金首相の発言からも明らかなように、菅首相の対応の拙さにより、日本は多大な国益を失ってしまっている。同時に、菅首相が無能なことは、既に国際社会では「噂」の域を超え、「事実」として認識されてしまっている。日本人として願うべきことは、「無能なのは首相であって、日本国民ではない」という事実を正確に世界に知って貰い、風評被害の拡散を止めることである。そして国益を守るための最終的な目標が、その原因となってるものを取り除くことにあることは言うまでもない。



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近藤駿介

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