政府の対応の拙さを隠蔽するための「寝ぼけた工程表」

一体何の意味があったのだろうか。東京電力は、菅首相から指示された福島第1原子力発電所の事故収束に向けた復旧作業の「工程表」を、清水社長が出席しない会見で発表した。その内容は、6~9カ月で原子炉を安全な「冷温停止状態」とし、原子炉建屋をカバーなどで遮蔽することを当面の目標と位置付ける、というもの。

菅首相は東京電力が「工程表」を出したことについて、「少し前進できた感じがする」と評価するコメントをした様だが、既に東京電力に計画を提示している東芝が、「今後、数カ月間で原子炉を安定化させ、5年後をめどに原子炉と貯蔵プールから燃料を取り出す」という見通しを示している中で、今更6~9カ月で原子炉を安全な「冷温停止状態」とするという、寝ぼけた内容の「工程表」発表に何の価値があるのだろうか。

国民が知りたいのは、中長期的で曖昧な東京電力の努力目標よりも、政府を含めて目の前にある障害をどの様に克服するつもりなのか、それにどの位の時間が掛かることが見込まれるのか、ということや、米国やフランス、ロシアといった技術協力を申し出てくれている国からどの様な協力を得ようとしているのか、ということなどではないか。

寝ぼけた「工程表」を発表したのと同じ日、東京電力は福島第1原子力発電所3号機の原子炉建屋内に米アイロボット社製の車両型無人ロボットを投入すると発表した。さらに、政府は東京電力と協力して、ロシア国営の原子力企業ロスアトムの関連会社と仏原子力企業のアレバから、年間約2000トンの処理能力を持つ高濃度汚染水専用の浄化装置を調達する方向で調整に入ったことが報じられている。

原発事故が明らかになった段階で、米国やフランスは技術協力を申し出ていた。もし政府が最悪の事態を想定して高濃度汚染水専用の浄化装置を迅速に手配していれば、「低レベル」とはいえ、汚染水を海に流さずに済んだ可能性があったということなのだろうか。政府は、東京電力に寝ぼけた「工程表」を提出されるより先に、原発事故から1カ月以上が経過し、深刻度が「レベル7」になるまで、海外からの技術協力を得て来なかったことに対する説明をすべきである。戦後最大の国難を克服する責任は、東京電力ではなく、政府にあることを菅首相は肝に銘じるべきである。

今回の東京電力の会見は、政府の対応の拙さを隠蔽し、東京電力が「一義的な責任」だけではなく、「全責任」を負っていることを内外に示すセレモニーのようであった。



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近藤駿介

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