「官民シフト」が進む米国、「官民共倒れ」に向かう日本

29日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日続伸して12,810ドルと、2008年5月20日以来約2年11カ月ぶりの高値を記録した。前日の28日に発表された第1四半期の実質GDPが前期比年率1.8%増と、前期の3.1%増から大幅に減速したものの、企業の良好な決算が上回った格好。

実質GDPは市場の事前予想2%増を下回ったものの、その主な原因はGDP構成比で約17%と個人消費に次ぐウエイトを占める政府支出。政府支出は5.2%減と1983年以来で最大の落ち込みを示した。それに対してGDPの約7割を占める個人消費は前四半期の4%増から減速したものの、2.7%増と堅調だった。
3月の米雇用統計でも民間部門の雇用者が23万人増加したのに対して、政府機関の雇用者数は1万4000人減少しており、米国経済は力強さには欠けるものの、「官から民へ」という形での景気回復が進んで来ている。こうした「官から民へ」という経済の動きに加え、低金利政策が「今後も長期間」継続される可能性が高いことが、GDPが予想を下回る中での株価上昇の原動力となっている。

「官から民へ」というシフトが曲がりなりにも進んでいる米国に対して、日本では東日本大震災の影響もあり民間需要の柱である個人消費と設備投資がいずれも前期と比べて減少することが確実視されている。さらに生産の減少に伴って輸出も低迷、1~3月期のGDP実質成長率はマイナス2.3%、4~6月期の実質成長率もマイナス3.2%と3四半期連続のマイナス成長が予想されている。日本の経済状況は、政府の財政出動なしでは「官民共倒れ」が確実な情勢。

4兆153億円規模の第1次補正予算案は先日衆議院を通過し5月2日にも成立することになったが、第2次補正予算を編成する時期については「(6月末までにまとめる)社会保障と税の一体改革の成案を踏まえた対応」となり、成立が7月以降になることが確実。成立時期が遅いことに加え、「財政再建原理主義」が日本経済の大きな足枷となっている。

今日の参議院予算委員会でも政府の「財政再建原理主義」が色濃く出ていた。身内である民主党の森ゆう子議員の「増税をして景気回復を果たし、財政が好転したことがあるのか」という質問に対して、野田財務大臣は「確定的なことは申し上げられない」と回りくどい回答。官僚の理論はともかく、日本だけでなく、欧州においても増税を始めとしたデフレ政策で財政を立て直すことは出来ないという現実的結論は既に出ている。

さらに、与謝野経済財政政策担当大臣は「カネを印刷するということは、一般国民の財産を薄めることになる。野放図は財政運営をやってはいけないというのが当たり前の原則だ」と述べ、復興債を財源とすることに否定的な見解を示した。戦後の「インフレが財産を毀損した」という古い記憶を持つ高齢の経済財政政策担当大臣は、「デフレによって一般国民の財産が毀損させられている」という最新の経済常識になかなか馴染めないようである。日本の財政を立て直すためには、名目GDPをプラスにする以外にないという、誰でも分かることを何故財務大臣や経済財政政策担当大臣は受け入れられないのだろうか。デフレによって悪化した国家財政をデフレ政策で建て直すことが出来たら、間違いなくノーベル経済学賞ものである。彼らがノーベル経済学賞を狙うのは勝手だが、それに付き合わされる国民にとっては大きな迷惑でしかない。

曲がりなりにも「官から民へ」と経済主役シフトが進んでいる米国に対して、「財政再建原理主義」に取りつかれ「官民共倒れ」へ向かいかねない日本。「国民からの信任を失っている政府」が、「国債増発によるマーケットの信認」を気にする構図は笑い話でしかない。国民からの信任を失った菅内閣が「財政再建原理主義」から脱却出来ないのだとしたら、1日でも早くリーダーを替えて再出発しなくてはならない。



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