菅内閣の示した「ビジョンなき決定」と、リーディングカンパニーが示した「ビジョンを伴った決定」

「思考過程がブラックボックス」と批判されても、菅首相にとっては「勝てば菅軍」といったところだろう。中部電力は9日に開いた臨時取締役会で、「津波対策など安全強化策を実施し、原子力安全・保安院の評価を得たときは運転再開できること」など5項目の条件を海江田経済産業相に確認した上で、政府による浜岡原子力発電所の停止要請を受諾することを決めた。

「原発政策の基本は変わっていない」と、浜岡原発運転停止が「ビジョンなき決定」であることを明言している菅首相にとっては、自らの「安心・安全を守るため」に「浜岡原発運転停止」という果実さえ確保出来れば、運転再開を含めた5項目の条件などは検討する必要もないもので、首相就任以来最も簡単な決断だったに違いない。
さらに、思考過程の透明性への批判も、「原発運転停止」という国民受けする果実の前では、菅首相には負け犬の遠吠えにしか聞こえなかったはずだ。実際、GW明けにも始まると見られていた「菅降し」の動きは、自らの「安心・安全を守る」ことに長けた首相の「ビジョンなき奇策」によって、一足先に「運転停止」になってしまった。

調子に乗った菅首相は、本格的な東日本大震災の復興策を盛り込む第2次補正予算案の今国会での処理を見送り、次期臨時国会に先送りする方針を示し、「菅降しの完全封鎖」に打って出る始末。
悲しむべきことは、国民が「原発運転停止=安全」だと勘違いさせられてしまっていることに加え、候補者不足もありビジョンも指導力も説明力も乏しい「消去法首相」の暴走を国民が阻止出来ないことである。

日本で首相の思考過程が「ブラックボックス」と批判を浴びる中、欧州ではルクセンブルクでユーロ圏主要国財務相会議という「ブラックボックス」会合が開かれた。ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ギリシャの財務相のほか、欧州委員会のレーン委員、ECBのトリシェ総裁が参加したこの会議は、参加国以外の多くのユーロ圏諸国には会合開催が知らされなかった「秘密会議」だった。

ロイターは、「秘密裏に開かれたことは、ギリシャが債務危機に対処するには新たな経済計画が必要だということを示す明確なメッセージだ」と報じている。さらに、「政府関係筋やアナリストによると、その計画には、ギリシャの財政目標の達成先送り、欧州連合(EU)・国際通貨基金(IMF)による総額1,100億ユーロの支援の条件緩和、追加支援、民間が保有するギリシャソブリン債の比較的緩やかな形での再編が含まれる可能性がある」と伝えている。

こうした報道を見る限り、やはりユーロ圏諸国はギリシャの「債務再編」に向けて水面下で動き出したようだ。「債務再編」はドイツを始めとした欧州の金融機関に損失を与えるものになるが、ドイツ等債務国への追加支援に国民の支持を得難い国にとっては、債務国に対する直接支援よりも、「債務再編」に伴う金融不安回避の為の自国金融機関への公的資金注入の方が、政治的なハードルが低く合意が得やすい政策と言える。ギリシャ問題に伴うユーロ安によって最も恩恵を受ける国は輸出大国であるドイツであり、その面からも金融機関に対する公的資金注入は受け入れられ易い政策のはずである。さらには、ユーロを離脱してしまえば国際金融市場からの資金調達が殆ど不可能となるギリシャにとっても、「債務再編」は唯一に近い現実的選択肢である。

政治以外の分野での注目は、「トヨタ、プリウスを家庭充電型に 14年から全面切り替え」という記事。
自動車業界は、現在のハイブリッド車の次に家庭用電源で充電出来るプラグインハイブリッド車(PHV)の時代を挿むのか、PHV時代を挟まずに日産や三菱自動車が力を入れている電気自動車(EV)の時代に突入するのか、判断しかねていた。それ故、HVを中心に自動車販売が好調だったにもかかわらず、業界全体としては設備投資が控えられて来た。PHVとEVでは部品点数などが全く異なる(EVの方が少ない)ためだ。

こうした中、今回トヨタは、HV、PHVのほかEV、燃料電池車などの開発も進めるものの、充電インフラなどの普及を考慮し、当面はPHVを次世代エコカーの最有力候補とする方針を決定した。充電インフラの問題に加え、東日本大震災に伴う計画停電や節電などの電力事情を考えると、トヨタの決定は現実的なものと思われる。

このタイミングでトヨタがPHVを次世代エコカーの最有力候補に決定したのは、東日本大震災によって崩壊したサプライチェーンの再構築を意識したものだと推察される。サプライチェーンの再構築が急がれる中、次世代エコカーがPHVになるのか、EVになるのかの不確実性が、サプライチェーンの再構築の大きな足枷となりかねなかったからだ。今回の日本のリーディングカンパニーであるトヨタの「ビジョンを伴った方針決定」は、日本のサプライチェーン再構築を後押しすることで、日本復興のアシストになる筈である。



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